水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

分析ユーモア短編集  <73> その後(あと)

2019年02月11日 00時00分00秒 | #小説

 人がコトを始めれば当然ながら、いつかは終了する時が来る。このことは、人が生まれれば孰(いず)れ死に至る過程とよく似ている。問題はその後(あと)の処し方が問題となる。この、その後という概念(がいねん)を分析してみるのも面白い。その後のことなんか考えず、兎(と)に角(かく)やるだけさっ! が正解なのだろうが、まあ、時間もあることだし、分析してみることにしたい。^^
 とある普通のサラリーマン家庭の日曜の一場面である。夫がかねてより思い描いていた日曜大工を朝からやり始めた。やり始めたのはいいが、小一時間ばかり経過したものの、まったく要領を得ない。時間は刻々と過ぎていくが、作業が進まない以上、どうしようもない。とうとう音(ね)を上げた夫は、作業を止(や)め、氷のように腕組みすると立ち竦(すく)んだ。問題はその後をどうするかである。すでに庭は、出した道具や材料で派手に散らかっている。ここまで散らかしては、何か得るものがないと…と夫は考えた。そこへ妻が洗濯物を干そうと家の中から現れた。物干(ものほ)しの前も当然、材料や道具で散らかり、足の踏み場もない。
「あ~~あっ! ほんとにもうっ! トモちゃんより酷(ひど)いじゃないのっ!」
 トモちゃんとは、今年で三歳になるこの家の一人息子である。妻が言いたいのは、トモちゃんが散らかす遊び道具より散らかってるっ! ・・と、まあこういうことだ。
「はい、はい! 俺が干しとくよっ!」
 夫は仕方なく物干し台の下を片づけ始めた。
「お願いねっ!!」
 妻は料理中なのか、ソソクサとキッチンへ走った。
 分析の結果、やる以上はよく考えてやらないと、得るものは無く、その後に予想外の内容が生じやすいようだ。^^

                                 


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