水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

分析ユーモア短編集  <80> 確率

2019年02月18日 00時00分00秒 | #小説

 どれくらいの精度で物事がその通りになるかという割合を表(あらわ)したもの・・それが確率である。%[パーセント]や割(わり)などといった単位が使用され、「合格率は70%だっ! まあ大丈夫さっ!」とか言われ、思わずニタリ! としたり、「ははは…合格率30%じゃ、君、ダメだよっ! 他の志望校にしなさいっ!」などとダメ出しされ、落ち込んだりする。それならアンタ、50%ならどうなのよっ! と訊(たず)ねたいぐらいのものだが、^^ これらはすべて、確率として数値化されているのである。この確率そのものを分析すれば、いろいろな分野で使用されていることが分かって面白い。その一例のお話を示そう。
 とある競馬場である。
「3枠(わく)のドライカレー? …いやっ! それはない、それはないっ!!」
「だって、あのパドック見ただろっ?! 馬が走りますよ、走りますよっ! って、尻尾(しっぽ)振ってたじゃないかっ!」
「お前は馬が尻尾、振りゃ、勝つと思ってんのかっ!?」
「だって…俺の確率、高いんだぜっ!」
「いやいやいや、ドライカレーは絶対、来ないっ! 来るのはこれっ! 1枠、ヤキニクバサミっ!!」
「えぇ~~っ? ヤキニクバサミぃ~? ヤキニクバサミは煙(けむ)いぜっ!」
「ああ、煙いが、必ず来るっ! 確率100%だっ!」
 レースの着順結果はっ!? ^^ 2枠のエースハンバーグが1着、ドライカレーは、かろうじて面目(めんもく)を保(たも)って2着、ヤキニクバサミは撃沈の最下位着だった。
 分析の結果、確率は飽(あ)くまでも目安(めやす)で、そうなる場合もあり、そうならない場合もある訳だ。^^

                                  


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分析ユーモア短編集  <79> 対応

2019年02月17日 00時00分00秒 | #小説

 さて、どうしたものか? と、考え倦(あぐ)ねた末(すえ)、人は最(もっと)もいい結果を出そうと動く。これが対応・・と呼ばれる行為である。この対応について分析してみることにしたい。別に分析しなくてもいいのだが、今のような寒い時期には甘酒か熱燗(あつかん)をチビリチビリとやりながら暖(あたた)まり、美味(おい)しい肴(さかな)かなにかを摘(つま)む・・というのが、風邪(かぜ)を近づけない最良の対応では? と思える訳だ。^^
 とあるアパート前である。どこから見ても胡散臭(うさんくさ)い一人の刑事が、ジィ~~っとアパートの様子を物陰(ものかげ)に隠れ、見張っている。偶然(ぐうぜん)そこを通りかかったアパートの住人の婆さんが声をかけた。
「あんれっ、まあ~~!! こげな寒いところで、いかがされましたかいのぉ~!!?」
 刑事としては、『大きな声でっ!! 張り込み中だから静かにっ!!』とは思うが、言えば身分がばれる。『黙っていてくれるならいいが、どうもこの婆さん、黙っていそうもない…』と刑事は瞬間、思った。となれば、対応として最良の方法は、ばあさんのご機嫌をとって、早々に引き上げてもらう他(ほか)はない。
「ははは…寒いですなぁ~。いやぁ~ちょっと人を待ってましてね。それが、いっこう現れんのですわっ! どうしたんだろうなっ! ははははは…」
 刑事は方便を遣(つか)い、笑って誤魔化(ごまか)した。
「そうでごぜぇ~ましたかいのぉ~。そいじゃ、風邪など引かれましぇんようにのぉ~。あとで、管理人の息子に甘酒でも届けさせましょうほどに…」
「いえっ! そ、そこまでしていただかなくても…」
 刑事は対応を誤(あやま)ったか…と後悔(こうかい)しながら、その後の対応を考えざるを得なくなった。
 分析の結果、対応は適切でないと、拗(こじ)れてふたたび対応しなければならなくなるから、注意が必要となる。^^

                                  


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分析ユーモア短編集  <78> ネチネチ

2019年02月16日 00時00分00秒 | #小説

 どこか得体(えたい)が知れず粘(ねば)っこい状態を示すネチネチという言葉がある。この言葉を分析すれば、その特性を利用していろいろな使い道があることが分かる。例(たと)えば、ネチネチ攻める・・だと、相手の嫌がるところを少しずつ、とめどなく攻め続ける・・という意味になる。ネチネチを連想させるものとして粘っこい搗(つ)きたての餅(もち)があるが、この場合は下(お)ろし大根に醤油を垂(た)らして食するのがネチネチとして美味(おい)しいからモチモチかも知れない。^^ まあ、どうでもいい話ではある。
 買い物帰りの二人の中年女性が、歩道でネチネチと話し合っている。
「あのタコ、どうするの? 湯がくんでしょ?」
「馬鹿言いなさいよっ! 湯がいてパックしてるんでしょ?」
「まあね…」
「だったら、そのままスライスすりゃいいじゃないのっ!」
「だってさ! 誰が触(さわ)ってるか分かんないわよっ!」
「…それもそうねっ! やっぱり、もう一度、湯がくっ?」
「それがいいわよっ、ぜったいっ!」
「そうしましょ!」
「ええ!」
 ネチネチした話は、ようやく終息を見た。買い物袋のタコパックのタコが言った。
『ネチネチと二度も湯がかれちゃ、堪(たま)ったもんじゃねえやっ!』
 孰(いず)れ、タコは酢醤油(すじょうゆ)か何かでネチネチと美味しく食されることだろう。^^
 分析の結果、生活はネチネチが成功する秘訣(ひけつ)なのかも知れない。^^

                                 


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分析ユーモア短編集  <77> 人と人

2019年02月15日 00時00分00秒 | #小説

 人と人・・この繋(つな)がりが社会生活を始める第一歩となる。人と人は有史以来、言葉を交わすことで意思の疎通(そつう)を重ね、その輪を広げてきた。人と人の繋がりを分析すれば、「やあ、おはよう!」などと声をかけ合う軽いものから、「こ度(たび)襲名をば致しましてござりまするぅ~~。幾久(いくひさ)しく、お引き立て賜(たまわ)りまするよう、隅(すみ)から隅まで、ずずずい~~~ぃとぉ~! {チョンチョン!!}[拍子木(ひょうしぎ)の音] 御(おん)願い奉(たてまつ)りまするぅ~~! {チョンチョンチョンチョンチョンチョン…!!}[拍子木の音]」などと客に挨拶する歌舞伎の口上(こうじょう)のような重いものまで、多岐(たき)に及ぶことが分かる。最も軽い人と人の繋がりは、相手が見えない簡便な電話である。孰れ(いず)の場合でも、人と人が繋がる出発点であることは疑う余地がない。
 とある町にあるテニスの練習場である。数人の部員が懸命(けんめい)に早朝練習をしている。
「やあ、おはよう!!」
「あっ、監督っ! おはようございますっ!!」
 口々(くちぐち)に部員達が返す。ほぼ同じ言葉の返しだったが、一人だけ、妙な仕草で返す部員がいた。
「ははぁ~~っ!!」
 その場に土下座(どげざ)してひれ伏す姿は、現代の人と人というより、目下(めした)の武士が時代劇でよく見せる殿様と家臣の会話に似通(にかよ)っていた。
「ははははは…お前は相変わらずだなっ!」
 監督は笑ってその部員に返した。
「ははぁ~~っ!!」
 部員は、ふたたび土下座した。
 聞くところによれば、この挨拶をしないと、本来の力を出せないそうだ。縁起(えんぎ)を担(かつ)ぐ、いわばジンクスのようなものらしい。
 分析の結果、人と人の繋がりにも、いろいろある・・という訳だ。^^

                                 


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分析ユーモア短編集  <76> 正解

2019年02月14日 00時00分00秒 | #小説

 1+1を足せば2となることは、3次元世界に生きる人々なら、お馬鹿でない限り、ほぼ誰にでも分かるだろう。それが、正解だっ! と言われれば、そうなんだ…と小学校の1年生なら肝(きも)に銘(めい)じることになる。^^ ところが、よくよく考えれば、この正解という定義は実に曖昧(あいまい)なのである。いったい誰がそう決めたんだっ! と開き直られれば、…? と、誰しも口篭(くちごも)ることだろう。そこで、この正解という定義を分析してみることにしたい。別にどうでもいいだろう…と思われる方は、適当に餅(もち)を喉(のど)に詰めないように食べながら寛(くつろ)いでいただくというのが、モチモチした、いつものパターンとなる。^^
 さて、正解を分析すれば、当然ながら不正解との比較となる。そんな一例のお話だ。
 とある衣料販売の店の中である。一人の客が困り顔で販売用に展示された一着の服を見つめている。
「お客さま、どうされました?」
 客の様子を遠目(とおめ)に見ていた店員が客に近づいて訊(たず)ねた。
「この服いいから、これにしようと思うんだが…」
「ええ、よくお似合いでございますよっ!」
「そうかい?」
「はいっ!」
「じゃあ、これに・・と、言いたいんだけどね。生憎(あいにく)、この前、来たときの値札(ねふだ)の額(がく)しか持ち合わせが無(な)いんだ。この額だと、昼抜きになるからなぁ~。普通は値下げするんだろっ?」
「はいっ! 通常は値下げをさせていただいております…」
「じゃあ、この服は?」
「この品は、当店の本店からの指示がございまして…」
「同じ服が、店の指示で値段が変わるというのは、どうなんだろうねぇ~」
「はあ…」
「この前の値段が正解だと思うけど、違うかな? 一度はあの値で売り出したんだからさぁ~」
「確かに…。いいでしょう! この前、展示させていただいた額で結構でございます」
「そうかい? 悪いなっ! それなら買うよ」
 客は以前に出されていた値札の額を支払い、服を買って去った。
 さて、ここでこの服の正解の価値は? ということになる。実(じつ)のところ、正解の価値は以前と同じなのだ。世の中の都合で1+1=1.8にも2.2にもなる・・というのが私達が住むこの3次元世界の姿で、実際の正解ではない訳だ。^^

                                 


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分析ユーモア短編集  <75> 手順

2019年02月13日 00時00分00秒 | #小説

 ああして、こうして…と人は考える。普通の場合、こうして、ああして…でもいい訳で、取り分けて結果に差が出るということもない。正確には、ほとんどない・・と言った方がいいのだろうが、まあ、そういうことだ。ああして、こうして…や、こうして、ああして…という先々の行動の組み立てを、人は手順と言う。この手順という行為の組み立てを分析してみることにしよう。そんなことを考えてないで、早く病院へいつもの投薬(とうやく)や診察に行った方がいいっ! と言われる方もおられるだろうが、それもそうだ…と思えるから、そうすることにしたい。^^
 さて、手順の違いで結果にどういう違いが生じるのか? という具体例を示してみよう。
 とある会社の一場面である。一人の若い社員が書類のコピーを取っていたが、俄(にわ)かに便意を催(もよお)した。コピーの残り枚数は、あと数枚である。社員は、はて、どうしたものか…と瞬間、動きを止めた。急ぐ重要書類のコピーということで、課長が今か今かと待っていたからである。手順として、[1]我慢してコピーを終え、それからトイレへ駆け込む、[2]先にトイレで用を足し、その後、落ちついてコピーを済ませる、といった二つの手順が考えられた。[1]の場合だと、課長にお小言(こごと)を食らう心配はない。心配はないが、粗相(そそう)をする危険性はある。[2]の場合だと、粗相する心配はないが、恐らく課長のお小言は避けられないだろう…と社員は思った。さて、読者の皆さんは、この社員がどちらの手順を選んだのか? お分かりだろうか?^^ 答えは、どちらでもない。というのも、実は社員が困っていたとき、同僚の社員が偶然、通りかかったのである。
「おっ! いいところへ…」
「何が、いいところだ?」
「このコピー、すまんが、あと頼んだっ!!」
「? ああ…」
 そう小忙(こぜわ)しく言うと、社員は同僚の社員を一瞥(いちべつ)もせずトイレへと奔走(ほんそう)したのである。
 分析の結果、手順は良くも悪くも突然、変化する可能性があり、臨機応変(りんきおうへん)の対応が必要みたいだ。^^

                                 


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分析ユーモア短編集  <74> 作業

2019年02月12日 00時00分00秒 | #小説

 作業・・ひと言(こと)で言える言葉だが、分析すれば、なかなか意味のある内容が秘められていることが分かる。そんなことはどうでもいいっ! 昼までにちゃんと、やってもらえれば、それでいいんだっ! と言われる方もおありだと思うので、先に済ませておいた。^^
 さて、その作業だが、始めるにはまず、材料、道具を準備することから始まる。これが、なかなか出来ない人が多い。出したのはいいが、どこへ置いた? と、作業を終えたとき探す人には困り果てる。消耗品ならまだしも、道具の置き場まで忘れて探す人がいるが、これはまったく感心できない。道具や材料をすべて元へ戻し、やっと作業は終了を見るのである。この点は作業をするにあたり、肝(きも)に命じてもらいたいものである。そういう私も、朝から探し回っていた。^^
 とある高校の校庭である。一人の生徒が懸命に何やら探している。放課後、陸上部の部活が終わった部員らしい。
「おいっ! 何を探しとるっ?」
 陸上部の監督が訝(いぶか)しげに生徒に近づいた。
「いやぁ~、コンタクトを…」
「コンタクト? …目の中へ入れるガラスかっ!?」
「監督、ガラスじゃないんですが…」
「… そんなことは、どうでもいいっ! いったい、どの辺で落としたんだっ!」
「ははは…それが分かれば苦労しませんよ」
「偉(えら)い余裕だなぁ~、お前。もう、そろそろ暗くなるぞっ! どれ、俺も探してやろう」
「ありがとうございますっ!」
 二人はグラウンドの地面上を探し始めた。
「だいたい、作業の心構えが出来とらんっ!」
「…作業?」
「ああ、作業だっ! 練習は作業なんだ。それを始めるには、まず準備が大事だ。お前の場合、まず落としそうなレンズを外してするところから始める必要があるっ! あるいはメガネを一つ、誂(あつら)えておいて、それに変えて始めるとか。まあ、見えれば裸眼(らがん)でやればいい訳だが…。そうすりれば、こういう無様(ぶざま)なことにはならん・・という訳だ」
 二人とも地面を探しながらの会話である。そのとき、一人の生徒が部室から走り出てきた。
「監督~~っ!! これ、落ちてましたっ!」
「馬鹿野郎!! それを早く言わんかっ!!」
 飛び出してきた生徒は、起こられた原因が分からず、キョトンとした。飛び出すときから手渡すまでの作業の準備不足である。正解は、こうなる。
「何か探してるんですかっ?」
「いや、こいつがコンタクトを落としたと言うんでなっ!」
「そうですか…。僕も探します」
「おおっ、悪いなっ!」「ありがとっ!」
 出てきた生徒は、手に持っていたコンタクト・レンズを地面から拾った仕草をする。
「あっ! これじゃ、ないですかっ!!」
「おお、そうだ…。よかったなっ!」「ありがとう!」
 これが、手渡す作業の正解である。^^
 分析の結果、作業は始めから最後まで気が抜けず、用意周到(よういしゅうとう)が大事・・ということに他(ほか)ならない。^^

                                 


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分析ユーモア短編集  <73> その後(あと)

2019年02月11日 00時00分00秒 | #小説

 人がコトを始めれば当然ながら、いつかは終了する時が来る。このことは、人が生まれれば孰(いず)れ死に至る過程とよく似ている。問題はその後(あと)の処し方が問題となる。この、その後という概念(がいねん)を分析してみるのも面白い。その後のことなんか考えず、兎(と)に角(かく)やるだけさっ! が正解なのだろうが、まあ、時間もあることだし、分析してみることにしたい。^^
 とある普通のサラリーマン家庭の日曜の一場面である。夫がかねてより思い描いていた日曜大工を朝からやり始めた。やり始めたのはいいが、小一時間ばかり経過したものの、まったく要領を得ない。時間は刻々と過ぎていくが、作業が進まない以上、どうしようもない。とうとう音(ね)を上げた夫は、作業を止(や)め、氷のように腕組みすると立ち竦(すく)んだ。問題はその後をどうするかである。すでに庭は、出した道具や材料で派手に散らかっている。ここまで散らかしては、何か得るものがないと…と夫は考えた。そこへ妻が洗濯物を干そうと家の中から現れた。物干(ものほ)しの前も当然、材料や道具で散らかり、足の踏み場もない。
「あ~~あっ! ほんとにもうっ! トモちゃんより酷(ひど)いじゃないのっ!」
 トモちゃんとは、今年で三歳になるこの家の一人息子である。妻が言いたいのは、トモちゃんが散らかす遊び道具より散らかってるっ! ・・と、まあこういうことだ。
「はい、はい! 俺が干しとくよっ!」
 夫は仕方なく物干し台の下を片づけ始めた。
「お願いねっ!!」
 妻は料理中なのか、ソソクサとキッチンへ走った。
 分析の結果、やる以上はよく考えてやらないと、得るものは無く、その後に予想外の内容が生じやすいようだ。^^

                                 


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分析ユーモア短編集  <72> 努力(どりょく)

2019年02月10日 00時00分00秒 | #小説

 よく言われる努力(どりょく)という言葉がある。「努力が足りんぞっ!」と発破をかけられれば、思わず、『頑張らないと…』という反省(はんせい)気分になってしまうものだ。もちろん、『言うな言うなっ! 努力してるわっ!』と反発される方もおられるだろうが、孰(いず)れにしろ、努力が大事だということには変わりがない。この努力という言葉を分析すれば、味わい深い言葉だということが分かってくる。努力は今まで以上の頑張りを意味する。努力をしなければ、その後に好結果を得られないのが常だ。出来ない技(わざ)を日々、励(はげ)んで習得する・・これが努力の一例である。
 静まり返った深夜のとある体育館である。一人の高校生が懸命にバレーボールのサーブ練習をしている。完成間近の新(あら)たな技、稲妻サーブの完成を目指す努力の練習だ。
「おお、やっとるなっ! どうだっ!」
「あっ、監督っ! もう少しなんですが…」
「そうか…努力は、しとるんだがなぁ~」
「はい! これだけは…」
「だな…。ほれ、差し入れだっ、食えっ!」
 監督は、コンビニで買ってきたチン! して温かい弁当と温かい缶茶が入った袋を手渡した。
「ありがとうございますっ!」
「じゃあな…。無理するなよっ!」
「は、はいっ!」
 監督が帰ったあと、どういう訳か新技(しんわざ)、稲妻サーブは完成を見たのだった。
 分析の結果、何かの楽しみがあると、努力は一層(いっそう)、効果が高まるようだ。^^

                                 


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分析ユーモア短編集  <71> 独自性(どくじせい)

2019年02月09日 00時00分00秒 | #小説

 最近、人々が個々に持っている独自性(どくじせい)という人間的な個性が無くなりつつあるという。そういう時代なんだ…といえばそれまでだが、少し寂しい気持もする。この独自性というものの本質を分析すれば、いろいろなことが分かってくる。独自性・・英語でアイデンティティ~とか言うそうだが、人々の各個に備わった特徴的な個性を意味する言葉である。囲碁や将棋が上手(うま)いからプロとして有名だというのも、その人の独自性である。普通の者では、そうはいかないからだが、独自性があるからといって、その人が偉(えら)いのか? と問えば、少しもそうではない。将棋も囲碁も知らない人々にすれば、?…でお終(しま)いの話なのである。^^
 とある飛行場で偶然、知り合いになった二人の旅行客が言い争っている。
「いやっ、私の考えは違いますっ! 私は小さい鞄(かばん)で最小限の荷物で出かける派ですねっ! 特に、この時期はっ!」
「ほう! と、言われますと?」
「大きな鞄ですと当然、重くなりますわなっ!」
「はあ、まあ…。しかし、鞄に車がついとるでしょ?」
「それはそうですが、なにせ引き摺(ず)らねばならない! そうすると、汗を掻くことになる。汗ビッショリは嫌(いや)ですからなっ! ははは…つまりは、そういう理由です」
「なるほどっ! 少し変わってらっしゃいますが、独自性ですかな、ははは…」
「まっ、そんないいものではないですがな、ははは…」
 笑いあった二人だったが、二人とも他の旅行客とは異質の光り輝く頭で、見事に禿げ散らかしていた。ある種(しゅ)の独自性である。^^
 独自性を分析すれば、小さなものから大きなものまで、ものすごく多いということだ。^^

                                 


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