ボサノバの名曲、アントニオ・カルロスジョビンの「WAVE-波-」を連想させるような装丁と、まさしくタイトルがズバリそのもののこの本は...
2004年12月26日の朝、スリランカを襲った大津波で両親と夫、そして二人の息子を...要するに自身と最も近い近親者全てを失った一人の経済学者の回想録である...
昨日、図書館の新刊コーナーで1月30日に出版されたばかりのこの本を手にした私は、自宅で3分の1に近い60ページを一気に読んだ。
まだ導入部分だけど、その衝撃があまりに大きかったので、今日はその辺をシェアしたいと思います。
まずもって、この本は作り話ではなく、全て実話だ。
著者は実際に大津波に巻き込まれる。その時のリアルな感覚が読む者に伝わってくる...
いや、あまりに突然のコトで、ナニが起きたのか?理解出来ないのだ、実際は❗
発生がクリスマスの翌日、というのがあまりに悲しすぎる。
悲劇のフィクションならば、よく出来た想定だが、コレは嘘偽りの無い、"事実"なのだ。
そう、明日は自分にも起こるかもしれない"現実"...
あまりの衝撃とショックで著者はしばらく事実を受け入れるコトが出来ない。
担当したセラピストの助言により、当時の記憶を辿るようにして自身の感情を書き表していくコトで、少しずつ、その過酷すぎる現実を現実として受け入れられるようになっていく...
そうして書きためたモノが、出版物として刊行されるコトになった。
それが"この本"である。
2019年の始めに、なぜ今、15年前のスリランカで起きた大津波の話なのか?
というのは、15年近い歳月を経なければならないくらい深くて大きな哀しみ、そして心の傷だった...というコトを表している。
ここ最近、毎年のように日本では各地で災害が発生しているので、私は著者の体験を他人事として読むコトは出来なかった。
時は2004年のクリスマスの翌朝...
著者は愛する家族(夫、二人の息子、そして両親)とスリランカ南東部の海岸の国立公園内にあるホテルに居た。
クリスマス休暇を利用して、仕事と生活基盤を置くロンドンから故郷のスリランカへ、約2週間の休暇...
その日の朝、息子たちはホテルの一室のベランダで昨日、両親からもらったクリスマスプレゼントで遊び、夫はシャワーを浴び、彼女は部屋の前で女友達と立ち話をしていた。
最初に"異変"に気づいたのは女友達だった。
「大変、海が入ってくる...」
今でこそ、津波は"TUNAMI"として表記され、世界共通語になったが、著者は津浪という存在を知らなかった。
着の身着のまま、家族と一緒にホテルの部屋から外に飛び出した彼女達を通りがかりのジープがピックアップする。
けれど、ジープの行く手にはすでに海が迫り、ジープのタイヤはもはや地面を蹴ってはいない...やがて彼女は乗ってたジープの横倒しになったまま、大津波に巻き込まれていく...
胸に強烈な痛みを感じながら、カラダは引きずられ、前へ後ろへと振られる。
自分が今、何処に居るのか?それすらわからない。水のような感覚は無いけど、おそらく水の中?
カラダは木の枝や藪に突っ込まれ、耐えず肘や膝に何か硬いものが当たる。
すごいスピードで流されていく中、先ほどまでの女友達との会話が頭をよぎる...
その彼女は言ったのだ。
「あなたが持ってるものは夢のようよ」
著者はスリランカに生まれ、高校卒業と同時にイギリスに渡り、ケンブリッジ大学で経済学を学び、オックスフォード大学で博士号を取得、同じ経済学者の夫との間には二人の子供が居て、ロンドンに仕事を持っている...
エリートコースを歩み、何一つ不自由の無い、愛と経済的にも恵まれた、誰もが羨む"夢のような"暮らし。
それが一つの大津波によって、人生の全てが失われてしまった...
彼女が失ったモノは、自宅や銀行の預金、といった"モノ"や"お金"ではない。
いや、彼女の自宅はロンドンにあり、実家はスリランカの首都・コロンボにある。銀行の預金だって無傷だ。
なのに、彼女の失ったモノは、最愛のもの、全てだった...
人間の精神は"お金"や"物"であがなうコトは出来ない、というコトをこの現実はまさしく証明している。
自分の愛するもの全てを失う、というのは自身の手足をもぎ取られるに等しい。
なぜ、自分だけ生きているのか?
著者は何度も自身を傷つけ、自殺を試みる。
彼女を取り巻く友人知人にも葛藤は及ぶ...
こんな時、慰めのコトバは何の役にもたたない。
むしろ、コトバは毒だ。
ただ、じっと見守るしかない。長い長い年月をかけて...
まだ3分の1しか読んでいないけど...
もし、同じようなコトが自身に起きたら、あるいは私の友人知人が、このような出来事に巻き込まれたら、どうするか?と考えた。
私は...それでも生きてゆくだろう。
失うモノが大きければ大きいほど、ダメージは大きい。
だったら最初から多くを持たない方がいいのだろうか?
もし、私の友人知人にこのようなコトが起きたら...
私は駆けつけて、何もコトバは発すまい。ただ、抱き締めるだけ...
彼女は、2011年3月11日に日本で起きた津波にていても語っている。
彼女は、この映像を通して初めて、自身に起きたコト、愛する家族を奪ったモノの正体を知ることになる。
そう、7年目にしてようやく、ブラウン管を通じて送られてくる映像で、当時の自身の体験を現実のモノ、として捉えるコトができるようになっていく...
あまりに重々しい事実のあとは...
同じく、この日借りてきた椎名誠の「孫物語」を読む🎵
コチラも実話、だが、アメリカで暮らす孫3人の愛すべき、心あたたまる物語である。
恐ろしい現実のあとは、ほっこりする現実で...
わが精神の"中和"を図る(^_^)
#welovegoo
#ソナーリ・デラニヤガラ「波」
#椎名誠「孫物語」