昨夜は、コバケンこと小林研一郎氏率いる九州交響楽団の演奏会に行ってきた。ひさしぶりのクラシック。短大時代は、毎月、コンサートホールに足を運んでいた私だが、ここんとこ、多趣味?が影響して、年2回が精いっぱい・・・だからって、こんなに前じゃなくてもいいでしょ。ってくらい、前のお席だったんです。写真は、席に座って撮ったものです。思わず、管楽器の外国人の方と目が合ったり、とにかく、団員の脚しか見えない。
靴や靴下が視界に入り、気が散ってしまうので、ピアノのフタに目をやると、中の構造がフタに写って、昨年、本屋大賞を受賞した「羊と鋼の森」の世界を彷彿とさせた。
昨年も、九州交響楽団の演奏を聴きに来た。その時は、ピアニストの横山幸雄氏との共演で、ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番のクライマックスで音のタイミングが思いっきりズレていた。これは、横山氏の暴走によるものだが、それを止められなかった指揮者の責任は大きい・・・
今回の指揮者は、マエストロ小林・・・
彼の前に譜面台は無い。全て頭の中に入っているのだ。実際の彼は、写真で見るより、かなり痩せて浅黒かった。その細身の体躯からほとばしる情熱・・・かといって、身振り手振りが大袈裟なのではない。むしろ、その逆かもしれない。ほとんど、手を動かさない。顔でコンタクトしている、真後ろから見ていて、そんな気がした。
プログラムの最初は、ショパンのピアノ協奏曲第2番・・・ソリストはカナダ人の若手ピアニスト。写真で見る彼は、まるでショパンを思わせるような色白の美青年なのだが・・・実際は、やや太めで欧米人にしては足が短かった?演奏が終わって渡された深紅のバラの花束が、彼の白過ぎる顔に映えていたのが印象的だった。
休憩をはさんで(グラスワインを1杯いただく)、チャイコフスキーのバイオリン協奏曲ニ長調・・・実は、ニ長調というのがバイオリンの音色が最も美しく聴こえる音階なのだそうだ。そういえば、ショパンのピアノ曲は嬰ハ短調が多い。彼の曲は圧倒的に黒鍵の使用率が高い。
休憩の間に片付けられたピアノのおかげで、視界が一気に広がった。さらに団員と目が合う。思わず照れる(笑)
こうして見ると、女性の楽団員が増えている。明らかに男女比が半々なのだ。そのうち、女性だけのアマゾネス楽団ができるかも・・・
ソリストの坪井夏美氏は、芸大音楽院生で、コンクールにおいてコバケンにその才能を見出された。
演奏直前の彼女の不安と緊張がじかに伝わってきた。が、いざ、演奏が始まると・・・何たる集中力!
マエストロは、オーケストラに的確な指示を与えつつ、左横の彼女に励ましのエールを送り続けていた。
バイオリンの音色を最大限に聴かせるチャイコフスキーの壮大なコンチェルトを引き終えた彼女の表情に、ホッとした安堵と、そして感動の涙がうっすらと目元ににじんでいた。
アンコールは、モンティのチャルダッシュ。兆速なこの曲を彼女はマエストロのピアノの伴奏でのびのびと思う存分、奏でていた。まるで、すべての競技を終え、エキシビジョンを楽しむフィギュアスケーターのように。
藍より出でた青が・・・一瞬、藍を越えた気がした。
まだまだ本格的な演奏活動を行っていない彼女だが、一日も早く彼女の演奏を聴きに行きたい、素直にそう思った。
最後は、おなじみのラベルのボレロ。以前、佐渡裕氏の指揮で聴いたことがあるが、大柄な彼は汗っかきで、周囲に汗を飛び散らせていた。今回の席だったら、まぎれもなく、汗のしぶきの洗礼を受けていたところである。
ボレロは、実は単調な曲だ。最初から最後まで、ほとんどリズムと旋律が変わらない。いつもはバイオリンの陰に隠れて脇役のドラムや管楽器が冒頭から主役を買って出る。反対に、いつもは主役のバイオリンが、指で弦をはじかれるがままになっている・・・主客転倒なのも、この曲の魅力かもしれない。
そして、なまめかしい旋律を奏でるファゴット、オーボエ、クラリネットの管楽器類・・・思わず、バレエダンサーのルドルフ・ヌレエフの半裸ではねる姿が脳裏に浮かんできた。
最後は、コバケンのごり押しで終わったような気がした。
渡された大きな花束をコバケンは団員一人一人に配って、最後に自分に残ったのは、ガワタンだけだった・・・(笑)
音楽はテクニック以上に「人柄」だ・・・というコトをひしひしと感じさせられた夜だった・・・