(遠方銀河団の熱いガスと冷たいガス)

① ""遠方銀河団""の熱いガスと冷たいガス
天体写真・2017年8月29日
アルマ望遠鏡とNASAのチャンドラX線宇宙望遠鏡 ※ 、欧州南天天文台のVISTA望遠鏡が捉えた、112億光年かなたにある銀河団CL J1001+0220です。この銀河団は、X線が検出された銀河団としては観測史上最遠の天体です。今回の観測から、銀河団がこれまで考えられていたよりも7億年ほど昔から存在していたことが明らかになりました。これまで見ることのできなかった誕生直後の銀河団として、今後も注目を浴びそうです。
② 異なる波長の電磁波で見る銀河団
数多くの銀河の集合体を、銀河団と呼びます。銀河団には高温のプラズマガスが満ちていて、強いX線を放ちます。一方で銀河団を構成する銀河の中には、星とその材料になる冷たい分子ガスが大量に含まれています。
この画像では、チャンドラが捉えたX線が紫色で示されており、銀河団を包むプラズマガスの分布がわかります。銀河団の中には、銀河が点々と写し出されています。アルマ望遠鏡は、銀河の低温ガスに含まれる一酸化炭素分子が放つ電波を観測しました。
銀河団の中で白っぽく見える4つの点が、アルマ望遠鏡で検出した銀河です。プラズマガスでおおわれた銀河団の外にも銀河がいくつも写っていますが、大きく見える銀河は銀河団よりもずっと手前に位置しています。銀河に含まれる星からの光や分子ガスが出す電波を詳しく調べると、個々の銀河までの距離を測ることができ、この画像に奥行きがあることがわかります。
文:平松正顕(チリ観測所)
③ チャンドラX線宇宙望遠鏡 (wikipedia)
チャンドラX線観測衛星(チャンドラエックスせんかんそくえいせい、英語: Chandra X-ray Observatory)は、1999年7月23日にNASAによって打ち上げられた人工衛星である。スペースシャトルコロンビアによって放出された。
(チャンドラX線宇宙望遠鏡)

④ 概要[編集]
「チャンドラ」の名称は、白色矮星が中性子星になるための質量限界を割り出したインド系アメリカ人物理学者スブラマニアン・チャンドラセカールからとったものである。また「チャンドラ」とはサンスクリット語で月という意味でもある。
チャンドラはNASAの4つあるグレートオブザバトリー計画のうち3番目の観測衛星である。その最初の観測衛星は1990年に打ち上げられたハッブル宇宙望遠鏡、2番目は1991年のコンプトンガンマ線観測衛星、そして最後が2003年打ち上げのスピッツァー宇宙望遠鏡である。
打ち上げ前には、AXAF (Advanced X‐ray Astrophysics Facility) として知られていた。AXAFはカリフォルニア州のTRWによって組み立て、検査された。
地球大気がX線の大部分を吸収するため地上に望遠鏡を設置することはできず、宇宙ベースの望遠鏡を作ることが必要であった。
この衛星は地球と月の3分の1のところを回っている。[1]
② 発見[編集]
チャンドラにより得られた情報はX線天文学の分野で大きな進展をもたらした。
1.弾丸銀河団の観測はダークマターの自己相互作用断面積を限定した[2]。
最初の画像(カシオペヤ座にある超新星残骸カシオペヤ座A)によって、天文学者は初めて残骸の中心に存在するコンパクト天体(中性子星かまたはブラックホールか?)を垣間見ることができた[3]。
2.別の超新星残骸であるかに星雲中央のパルサー周辺にリングとジェットを発見した[4]。以前の望遠鏡ではジェットの一部しか見えていなかった。
(かに星雲)

3.最初のX線放射観測は天の川銀河中心いて座Aにある大質量ブラックホールいて座A*からのものであった[5]。
(天の川銀河系)

4.アンドロメダ銀河の中心部へ渦巻状に落ちていくガスの温度が予想よりもはるかに低温であることが発見された。
(アンドロメダ銀河)

5.銀河団が衝突、合体しているAbell 2142で、初めて圧力フロント(pressure fronts)の詳細が観測された。
6.超新星からの衝撃波のX線による最初の画像がSN 1987Aから得られた。
7.ペルセウス座にあるPerseus Aの画像で、大きな銀河に飲み込まれようとしている小さな銀河の影を初めて映し出した。
8.恒星起源ブラックホールと超大質量ブラックホールの間でミッシングリンクとされていた新しいタイプのブラックホール、中質量ブラックホールをM82銀河の中に発見した[6]。
9.ガンマ線バーストGRB 991216において、X線輝線との関連を初めて示した[7]。
10.チャンドラのデータを使い、高校生が超新星残骸IC 443中に中性子星(CXOU J061705.3+222127)を発見した[要出典]。
➡ どんな高校生だろう?天才だと思います。
11.チャンドラとBeppoSAXによる観測によって、ガンマ線バーストが星形成領域で起こることが示唆された。
チャンドラのデータによって、以前はパルサーだと思われていたRX J1856.5-3754と3C58が、クォーク星のようなより高密度な天体であることが示唆された。これは現在も議論されている。
12.褐色矮星TWA 5Bが太陽に似た恒星との連星系軌道をとっていることを発見した。
13.主系列星のほとんどすべてがX線を放射していることを発見した(Schmitt & Liefke, 2004)。
14.超大質量ブラックホール周辺の激しい活動による音波がペルセウス座銀河団で観測された。
15.タイタンのX線での影が、かに星雲を通過したことが観測された。
物質からのX線放射が原始惑星系円盤から恒星へ落ちることが観測された。[8]
16.スニヤエフ・ゼルドビッチ効果を使ってハッブル定数が76.9km/s/Mpcであることが測定された。
17.2006年、超銀河団衝突の観測によりダークマターが存在する強い証拠が発見された。
18.2006年、M87銀河の超大質量ブラックホール周辺で発見されたループ状・リング状・フィラメント状のX線放射領域によって、圧力波・衝撃波・音波の存在が示唆され、M87銀河が劇的な進化をしたのではないかと推測されている[9]。
(M87)

※ 正直に言ってこの業績の多様さと大きさには驚きました。興奮ものです!
やはりNASAの実力は恐るべしです。