2020年6月17日 / 13:09 / 9時間前更新
◎◎ ゛アングル:ポスト安倍にらむ動き、国会閉会で加速か 与党内で主導権争い゛
竹本能文
[東京 17日 ロイター] -
第201通常国会が17日閉会する。この間、新型コロナウイルスの感染拡大を背景に内閣支持率は大きく低下。来年9月の自民党総裁任期、同10月の衆院議員任期を踏まえ、ポスト安倍をめぐる動きが活発化している。与党内では、首相が後継者と目す岸田文雄政調会長に対抗する動きがみられる一方、首相が距離を置く石破茂元幹事長に二階俊博幹事長が接近。ポスト安倍の主導権をめぐり、党内政局が活発化するとの見方もある。
<6月に2つの動き、二階・石破接近と岸田離れ>
2021年9月に自民党総裁の任期を迎える安倍首相の後継者をめぐり、6月に入って2つの大きな動きがあった。二階幹事長と石破氏の接近と、首相のおひざ元である細田派内での岸田氏離れだ。
石破氏が8日、二階幹事長室を訪れ、9月に予定されている石破派パーティーでのスピーチを要請したところ、二階氏は快諾。その後の記者会見で二階氏は「高みを目指してほしい期待の星の一人だ」と石破氏を持ち上げた。二階・石破両氏の接近は両派閥の間で準備されたが、菅義偉官房長官も仲介役の一人を務めたとある与党関係者は話す。
二階氏は安倍首相の3選を早期に支持するなど、これまで党内で流れを作ってきたが、一時は首相4選を支持する姿勢を表明しながら、1日の会見で4選に関し「私から、総理いかがですか、とお伺いを立てにいくものではない」と話し、積極的な4選支持を事実上撤回、様々な思惑を呼んている。
安倍首相が後継者と期待する岸田氏は4日、ポストコロナ時代の政策立案を目指す勉強会、「新国際秩序創造戦略本部」を立ち上げた。これとは別に同日、安倍首相のおひざ元である細田派の下村博文選対委員長と稲田朋美幹事長代行が中心となり、「新たな国家ビジョンを考える議員連盟」が設立された。下村氏や稲田氏はポスト安倍として総裁選出馬への意欲を隠しておらず、党内では岸田氏に対するけん制と受け止められている。
報道各社の世論調査で、ポスト安倍としてもっとも評価が高いのは石破氏。次いで小泉進次郎氏、安倍首相といった順になっており、岸田氏の評価は高まっていない。与党内でも昨年末の経済対策策定から今回の補正予算策定まで「(岸田氏は)十分指導力を発揮できていない」(自民党幹部)との見方が多い。
もっとも「安倍首相が岸田さんといえば細田派はまとまる」(閣僚経験者)と指摘する声もある。
<五輪延期でシナリオ異変、くすぶる年内解散説>
ポスト安倍をめぐる動きが表面化し始めたのは「安倍後を見据えた党内の主導権争い」(閣僚周辺)だという。 昨年秋の自民党役員人事で、安倍首相は一時、幹事長に岸田氏を検討していたが、二階氏と菅官房長官の強い反対で断念したとされる。
新型コロナ対策の2020年度第1次補正予算の策定では、閣議決定した困窮者向け30万円現金給付を、公明党の強い要望で一律10万円給付に差し替えたが、「二階氏が公明党側に就き、菅官房長官も沈黙を貫いた」(自民党関係者)という。
東京五輪の延期により、今後の政治日程が不透明になりつつあることも、政局流動化要因だ。安倍首相は任期満了に伴う総裁選では地方議員の人気が高い石破氏が選ばれる可能性があるとして、今年の東京五輪の開催直後に任期途中で辞任するシナリオも選択肢としていたとの見方がある。任期途中で首相が辞任する場合は、国会議員のみで総裁選を行うことが可能で、首相が希望する岸田氏が選ばれる可能性が高い。
しかし新型コロナウイルスの感染拡大で東京五輪は延期。新型コロナの感染拡大が世界各国で継続するなら「来年夏の東京五輪開催は難しい」との見方も与党内で一定の広がりを見せており、「今秋には開催是非の判断を首相が迫られる」(政府・与党関係者)との見方も出ている。
衆院解散については、新型コロナの影響で「年内は厳しい」(閣僚周辺)との見方が主流だ。ただ、年内解散の見方も完全には消えていない。「来年、世界経済がさらに厳しくなる前、可能ならば今秋に(解散を)実施すべき。その前に総裁選で勝てる顔を選ぶのが自然」(自民党関係者)との声も少数ながら聞かれる。
持続化給付金の遅れや、給付金の業務委託問題、河井克行前法相夫妻の公職選挙法違反問題など支持率低下につながりやすい材料は多い。ある自民党関係者は「国会閉会と同時に政局話が増えそうだ」とみている。
編集:石田仁志
私たちの行動規範:トムソン・ロイター「信頼の原則」