私は大学卒業後、父が設立した会社の社長を務めていました。しかし、社長とはいえ個人経営だったため、組織について学んでみたいという気持ちが次第に強くなってきました。結局、5年後に社長を辞め、興味のあった通信サービス会社に就職しました。
そのときの私は、「5年間社長として仕事をしてきたのだからすぐ慣れるだろう。素晴らしい成果を出してみせるぞ」と意気込んでいました。
ところが、会社に入ると、たちまち上司との関係で悩みに陥ったのです。
それまで、すべて自分の判断で動いていた私にとって、上司の判断で行動が制限されてしまうことは、とてもやりにくく感じました。
やることなすことすべて裏目に
業界の展示会に行った時のことです。私は、「自社に生かせる点はないか」と思い立って、他社の展示の様子を見に行きました。
ところが、会社に戻ると直属の上司から怒鳴られました。
「勝手なことをするんじゃない!」
またある時は、予定していた取引先の訪問を終えて時間が余ったので、普段お世話になっている取引先に挨拶に行きました。すると、それが上司の耳に入り、また怒られました。
「どういうつもりだ!勝手なことをするなと言っているだろう!」
会社のためにと思ってやっているのに、頭ごなしに怒られ、抑えつけられることは、納得いきません。私は次第に上司への不満を強めていきました。
そして、入社して3カ月後――。上司に役立たずの烙印を押された私は、「お前は、本当に役に立たないな!もう明日から来なくていい!」と吐き捨てられ、別の部署に異動させられたのです。
上司がなにを助けてほしいと思っているのか
新しい部署では、企業を飛び込みで訪問し、営業することになりました。
ふとした折に、前の部署での上司の怒鳴り声が思い出されます。
「一生懸命頑張ったのに、すべて裏目に出てしまったのはなぜだろう」
私は答えを求めて、大学卒業後から学んでいた、幸福の科学の書籍を開きました。
「自分の上司がなにを助けてほしいと思っているのか、これを相手の立場に立って常々考えておくことです」
『成功の法』に説かれていた内容に、目を見開きました。
上司が求めているものを考える――。それは、私になかった視点でした。
上司に対して何ができるかということよりも、自分がやりたいことを上司に認めてもらおうと思っていたのです。
勝手な行動を繰り返していたのも、社長としてやってきたプライドから、上司の言うことを素直に聞けなかったためです。これでは、上司との関係がうまくいかないのも当然でした。
私は、次の部署では同じ失敗を繰り返すまいと、新しい上司の言うことを素直に聞き、求められる成果を出そうと努力しました。
「何やってるんだ!どんな方法でもいいからとにかく売ってこい!」
上司の厳しい言葉にも一切文句を言わずにひたすら耐えて、足を棒のようにして営業に回りました。
そんな私が次第に成果を出すようになり、上司は「お前は他の社員より情熱があるな」と評価してくれるようになりました。
努力が実り、1年後には全社でトップの成績を収めることができました。
誰ともうまくいかない取引先を担当
その後私は、個人向けの営業でも成果を出すことができました。その結果、やがて、30数名のスタッフをまとめるチームリーダーに抜擢されました。
ある時、どのチームが担当してもうまくいかない取引先の話が舞い込んできました。
前任者によれば、その取引先でチーフをしている人が、自分のミスも全部こちら側のせいにしてくるので、うちのチームのみんながやる気をなくしているとのこと。
その話を聞き、私は逆に燃えました。
「だったら、私が担当します」
実際に担当したところ、その人は聞いていた以上に大変な人でした。
挨拶をしてもぶっきらぼうな態度。誰かに注意されると「あの人のせいです」と言いつけることは日常茶飯事。「お前らのせいで迷惑してるんだ」と、直接苛立ちをぶつけてくることもあります。
関わる人皆が「ふざけるな」と怒り心頭で、私自身も「もういい加減にしてほしい」とうんざりすることもありました。
相手の苛立ちには必ず原因がある
この人との関係をどうしていくべきか――。私は真剣に考えました。
すると、「なにを助けてほしいと思っているのか、相手の立場に立って考える」という、かつて上司との葛藤を通じて学んだ教えを思い出しました。
「相手が苛立っているのは、必ず原因がある。その部分を私がフォローできれば、必ず関係がよくなるはずだ」
私は、もう一度仕事の流れを見直してみました。すると、発送作業や、クレーム対応がその人の責任になっていることが分かりました。
こうした細かい仕事を押し付けられていることが苛立ちの原因ではないか、と気づいた私は、その仕事を当社で引き受けられるように計らいました。発送作業は、当社のスタッフが、契約から発送まで責任を持つように仕組みを変えました。そして、お客様からのクレームは私が対応することにしたのです。
すると、いつも苛立っていたチーフの態度がガラリと変わりました。「何か困ったことがあれば言ってください」と笑顔で声をかけてくれるまでになったのです。
理不尽な叱責をされなくなった当社のスタッフも伸び伸び働き始め、企画や改善の提案も積極的にするようになりました。
別人のように協力的になったチーフを見て、「人はこんなに変わるんだ」と、本当に驚きました。
上司や取引先との関係を通じて、私は「相手のために何ができるか」を考えて仕事をすることの大切さを知りました。
人間関係改善のヒントを示していただいた、幸福の科学の教えに感謝しています。
http://voicee.jp/2015080111344