毎日新聞 7月22日(金)10時53分配信
政府は22日早朝、米軍北部訓練場(沖縄県東村、国頭村)の約半分の返還に伴うヘリコプター離着陸帯(ヘリパッド)の移設工事を再開した。着工に当たって沖縄県警などは、反対派が東村高江周辺の工事現場の出入り口付近の県道に車両を置くなどして築いていたバリケードの撤去作業を始めた。現場は座り込むなどして抗議する反対派と、それを排除しようとする全国から動員された機動隊員が激しいもみ合いとなり、大混乱となっている。
防衛省沖縄防衛局は、午前6時ごろに反対派の多くが座り込む県道沿いの出入り口とは別の出入り口にフェンスを設置し、移設工事を再開した、と発表した。
反対派は22日未明から南北約100メートルにわたって県道に車を駐車させ、座り込んで一帯を封鎖した。午前5時半ごろ、機動隊が出動して次々と排除を始めたため、反対派は強く抵抗。一部の車両がレッカー車で移動させられたが、反対派と機動隊とのもみ合いが続いている。現場には警視庁など全国から機動隊員が数百人規模で動員されている。
沖縄本島北部に広がる北部訓練場は、面積約7800ヘクタールの沖縄最大の米軍施設。大半が森林で、米海兵隊がゲリラ訓練やヘリコプター演習に使用している。日米両政府は1996年に約4000ヘクタールの返還に合意。その際、7カ所(後に6カ所に変更)のヘリパッドを返還後も残る訓練場内に移設することを条件とした。
しかし、新たなヘリパッドは東村高江の集落を取り囲むように計画されていることから、住民らは騒音などを訴えて反対運動を展開。移設工事は2007年に着工し、6カ所のうち2カ所が完成したが、4カ所は着工できていない。危険性が指摘される米軍輸送機オスプレイが運用されることからも、住民らはヘリパッドの移設に反対している。
工事現場の出入り口に車両を置くなどする反対派の抵抗に対し、政府は撤去を指導するよう県に要請し、県が6月に車両などを移動させるよう反対派に文書で指導した。一方、沖縄防衛局は今月11日から北部訓練場への資機材の搬入を開始し、再開に向けた準備を進めていた。
政府は北部訓練場の約半分の返還が実現すれば、大幅な基地負担軽減につながると強調。政府が進める米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古への県内移設に沖縄県の翁長雄志(おながたけし)知事が反対する中、別の基地問題で翁長知事を揺さぶる狙いもあるとみられる。
これに対し、翁長知事はヘリパッド建設の是非について態度を明確にしていないが、沖縄防衛局が参院選翌日から再開準備を始めたことなどを踏まえ、「(反基地の民意が示された)参院選直後に強硬に進めようとする政府の姿勢は県や県民との信頼関係を大きく損ねる」と強く反発。配備に反対するオスプレイがヘリパッドを利用することなどを理由に、工事再開は容認できないとの姿勢を示している。【佐藤敬一、川上珠実】