もう何度か通ったスケッチポイント、芦屋町の柏原漁港。日没が近づいてきた頃、静かな入り江の一角に投げ捨てられたいくつかの魚の切り身に、たくさんの魚が集まり、きれいな波紋が出来ているのを眺めていた。そのうちカモメが寄ってきて右左に飛び交いながら、ときどき波紋の上をすれすれに飛んで行く。カモメが魚を捕まえる瞬間を目の前わずか5mのところで見られるかもしれない。サスペンスを感じながら凝視していると、少し離れたところから船のエンジン音が聞こえ始めた。入り江の中は小さな音だったのが、入り江の出入り口にさしかかると大きな音に変わって舳先が掻き分けてできる浪が夕日に映えて美しく見えた。今から出かけるのはイカつり船か。カメラを取り出しその瞬間を撮っておこうとレンズを船の方に向けたその時、カモメが目の前に着水してすぐさま飛び立っていった。あれだけハラハラしながら魚を捕獲する瞬間を待ち構えていたのに見逃してしまったのだ。
太陽は帯状に拡がる雲をそして海をも赤く染め始めた。よくある夕日の風景だ。そうは思いながらも美しい時間の魅力に誘われて防波堤に近づいていくと、一人の男性が三脚に望遠レンズのついたカメラを据えて夕日の沈むのを待ち構えていた。歳格好は私とほぼ同じくらい。
「絶好のチャンスですね。」
と声をかけると、
「いやー、今日は駄目だと思うよ。水平線に接して雲がかかっているから、沈み始める少し前から太陽はその雲に隠れると思うよ。」
「なにしろ、太陽が水平線に接する直前に太陽の下部がとろけて水平線に垂れ下がる瞬間を、何年間もこの場所にきて待っているから分かるんだよ。」
話しているうちにも太陽はその雲に隠れ始めた。
「あなたの言われる通りですね。」
と感心して応えた。、
「あなたもカメラをやるのかね。」
と私の手に小さなデジカメが握られているのを見て尋ねられた。
「私は絵を描くのが好きなので、絵になる対象を捜してうろうろしています。カメラはスケッチを補うために持ち歩いているんです。」
そう言っているうちに日は沈み、高い空の明るさだけになった。
そこへ一人の女性が近づいて来て、
「漁火を撮りたいが、最近はなかなか沖の漁火が見えなくて」
とカメラの男性に話しかけた。この人も同い年に見える。
「漁火なら皿倉山の頂上から構えるほうがいいよ。最近のイカ釣りは昔よりずっと沖の方に出るから、港からじゃあ見えないよ。」
「そうなんですか。私は最近NHKのフォト575に写真や俳句を投稿してるんです。」
次第に空の明るさは衰え始めたが、見知らぬ3人は、もう少し話がしたくなった。
太陽は帯状に拡がる雲をそして海をも赤く染め始めた。よくある夕日の風景だ。そうは思いながらも美しい時間の魅力に誘われて防波堤に近づいていくと、一人の男性が三脚に望遠レンズのついたカメラを据えて夕日の沈むのを待ち構えていた。歳格好は私とほぼ同じくらい。
「絶好のチャンスですね。」
と声をかけると、
「いやー、今日は駄目だと思うよ。水平線に接して雲がかかっているから、沈み始める少し前から太陽はその雲に隠れると思うよ。」
「なにしろ、太陽が水平線に接する直前に太陽の下部がとろけて水平線に垂れ下がる瞬間を、何年間もこの場所にきて待っているから分かるんだよ。」
話しているうちにも太陽はその雲に隠れ始めた。
「あなたの言われる通りですね。」
と感心して応えた。、
「あなたもカメラをやるのかね。」
と私の手に小さなデジカメが握られているのを見て尋ねられた。
「私は絵を描くのが好きなので、絵になる対象を捜してうろうろしています。カメラはスケッチを補うために持ち歩いているんです。」
そう言っているうちに日は沈み、高い空の明るさだけになった。
そこへ一人の女性が近づいて来て、
「漁火を撮りたいが、最近はなかなか沖の漁火が見えなくて」
とカメラの男性に話しかけた。この人も同い年に見える。
「漁火なら皿倉山の頂上から構えるほうがいいよ。最近のイカ釣りは昔よりずっと沖の方に出るから、港からじゃあ見えないよ。」
「そうなんですか。私は最近NHKのフォト575に写真や俳句を投稿してるんです。」
次第に空の明るさは衰え始めたが、見知らぬ3人は、もう少し話がしたくなった。