ボランタリー画廊   副題「げってん」・「ギャラリーNON] 

「げってん」はある画廊オーナとその画廊を往来した作家達のノンフィクション。「ギャラリーNON]は絵画を通して想いを発信。

ギャラリーNON(49) スケッチは楽しい(その2)

2010年09月13日 | 随筆
 何年通っても太陽がとろけて水平線に落ちて行く瞬間に立ち会うことが出来ないと言うカメラの男性は、柏原漁港の近くにお住まいなので、夕刻になればこの同じ場所にカメラを据えて時を過ごすとのこと。
「ファインダーを覗いてみますか。」
と言われるままに覗いてみると、右下に磯が配置され、左には遠くに突き出た半島が配置された構図。中央にはまだ水平線に落ちるまでは間がある太陽が真っ赤に輝いていた。
「いつもこの場所でこの構図で据えるのですか。」
「そう、こだわってる。芦屋の日没でなければいけないと決めている。」
「なるほど。」
「沈む太陽が大きくなって、それをバックにカモメが入ってくれるのを待っているんだ。」
「わー、そりゃあ大変だ。」
と悲鳴のような感嘆の声で応えた。続けて、
「絵の場合は、自分でカモメを描き込むことができるけど、写真はそうはいかないのですね。」
カメラの男性は、言われて気付いたように
「絵はそうなんだ。」
と感心されてしまった。

急に調子を変えて
「あんた、名刺もっとるね。」
と問われ
「持ってますよ」
と応えると、自分の名刺を持ってくるために、少し離れた駐車場へ行ってしまった。
フォト575の女性と二人で無言でいると、女性のほうから、
「この間来たとき、浚渫作業船が港に入ってましてね、もうすっかり暗くなった入り江から、あかあかと照明を点けて出港し始めたんです。とてもきれいな風景だったので、パシャパシャとシャッターを押し続けました。」
「カメラを触るようになって、人生感さえも変わったような気がするくらい何でもよく見つめるようになりました。」
立て続けに話しかけてくる。

名刺を持って戻ってきた。照明灯が少なくて顔もよく分からない中で名刺交換となった。フォト575の女性は、名刺を持っていなかったが、名前・住所・電話番号それにペンネームまで紙に書いてくれた。
「最近、入選するようになったんですよ。NHKフォト575を開いて、このペンネームで検索して下されば私の俳句と写真がでてきます。見てくださいね。」
とにっこり。
 又会う機会があればと言って3人は別れた。スケッチは楽しい。