内閣官房の資料によれば、この分科会とは、正式には「新型コロナウイルス感染症対策分科会 」といい、政府の新型インフルエンザ等対策閣僚会議の決定に基づき設置され、この分科会の議決で、同じ閣僚会議の下で開催されるとする「新型インフルエンザ等対策有識者会議」の議決にとって変えられる、とされるものだ。要するに、「専門家会議」を廃止したので、その変わりということで、小林慶一郎など経済学者も加えて、少し新味を出そうというものである。しかし、やはり専門家会議同様、いやそれ以上に、政府のいいなりのお墨付き機関であることをさらけ出してしまった。
7月16日、この分科会は政府の「Go To トラベル」キャンペーンの東京除外を了承した。それをもって赤羽国土交通大臣 は「専門家の了解を頂いた」と言って、政府案どおり、東京除外案を公表したのである。
そのあたりの尾身茂会長以下分科会委員の政府へのいいなりぶりはひどいものだ。以下は、会議後の記者への回答である。
尾身茂
「東京を一つ例外としたのは合理的な判断だと思います」
釜萢敏・日本医師会常任理事
「東京だけということよりは、まずは自分の県、あるいは隣県くらいまでのあいだでやりながら広げていったらどうかなっていうようなことを言おうと思ったんですけども、それはとくにしゃべる機会がありませんでした」
岡部信彦・川崎市健康安全研究所所長
「『GoToキャンペーンを止めるべきではないか』とか『3カ月様子を見よう』という意見は出なかった」
これでは、単なるセレモニーである。内閣官房は分科会を「構成員の間における自由かつ率直な議論が妨げられることがないよう、議事は 非公開とする」と決めており、議論の過程は漏れないようになっているのは、デタラメでも分からないようにするためだろう。「自由かつ率直な議論」などあろうはずもない。何も文句を言わない「専門家」だけを集めて、「はい、終わり」とやっているだけで、会議にもなっていない。尾身茂座長は、それで政府の案どおりの結論を出すだけである。
そもそも、政府側に専門家の意見を聞く耳などないことは、以前の「専門家会議」で明らかであり、委員もそれが分かっていて出席しているとしか思いようがない。それでは、専門家に値しない。ここに、先の国会に参考人招致された、東大先端科学技術センターの児玉龍彦名誉教授のような人物がひとりでもいれば、侃侃諤諤の議論になり、それこそ言葉の正しい意味での会議になるだろう。専門家とはこういう人のことを言うのだ。
この分科会も、各種の諮問会議と同じように、政府の言うとおりの結論を出す機関になってしまっている。政府が初めから、反対意見を言う学者は排除しているからで、政府が専門家の意見を聞いたと、お墨付きを与えるだけになっている。このような会議はむしろない方がましで、害悪以外の何ものでもないのである。