7月23日、東京都はついにに366人の感染確認数を公表した。曜日によって集計の差が出るのだが、7月以降、誰が見ても感染確認数が増加しているのは明らかだ。都知事や政府が言うように、検査数が増えているので、それによって確認される感染例が増えるというのもの確かにそのとおりで、366人の内、何人かは以前は検査されず、数字に入らなかったのである。
具体的に言えば、政治も自治体も、検査対象を詳細に公表していないが、メディアの報道で判断すると、以前は濃厚接触者の内、症状を呈していない者は検査しなかったのだが、今は無症状でも検査をする。つまり、以前は無症状で回復した者は「感染者」には入らなかったのである。その分が増えたのは、明らかである。逆に言えば、以前は見逃していたので、過去の数字はいい加減なものだ、と言っているに等しい。また、「夜の街」やスポーツ界など一定の集団を検査するようになったので、その分は「感染者」は増える、というのも納得がいく。しかし、報道で言うところの、感染経路不明者とは、症状を呈し、医師の勧めで検査したものである。この数字も著しく増えている。そのことから言えるのは、症状が表れている者も増大している。感染者の内、症状を呈する者はある程度一定しているので(無症状は4割という、アメリカからの最新の報告もる)、感染者全体が著しく増えているという実態が見えてきたということである。
緊急事態宣言の解除以後、政府も自治体も経済を再開し、「新しい生活様式」などと、感染予防への注意は呼びかけてきた。その結果が、感染増大(第2波は明らかだが、政府は頑なに認めようとしない)である。確かに、個々の人びとは入念に注意しているだろう。特に、高齢者が引き続き自粛しているのは、感染確認が若年層に多いことでも分かる。しかし、個人レヴェルでいくら感染予防に注意しても、飲食店やホテルがアルコール消毒をいくら熱心に行っても、感染拡大は止まらない。それが数字として表れているのである。いくら注意を呼びかけても、注意をする人は充分にしているのであり、それでも感染拡大は止まらない、それが現実なのである。
勿論、再度緊急事態宣言を行うのが、最も近道であるのは疑いない。それによる、或いはそれ以前からの、国民の自粛で感染を一定程度抑え込んだ実績があるからである。しかし、それは実際には極めて困難である。国民の命より、経済再開にひた走る安倍政権は、最後の最後までやりたがらないだろう。何よりも、国民は「自粛疲れ」を起こしており、再度の自粛には、抵抗がとてつもなく大きい。恐らく、法的な強権による行動制限を課す以外には方法はない。しかし、もとより日本では、それは不可能である。
部分的な地域や業種に限り、自粛と生活補償を行うという方法も考えられる。しかし、感染確認数が既に全国に拡大しており、「夜の街」以外にも数多く感染が発見されることから、その方法では、もはや完全に手遅れである。
つまるところ、WHOのテドロス・アダノム事務局長は言ったように「検査、検査、検査」しか方法はないのだ。「医療ガバナンス研究所」理事長 の上昌広医師も、 「感染症対策の基本は早期診断、治療、そして自宅も含めての隔離です。検査しなければ何も始まらない」 (毎日新聞7月23日)と言う。PCR検査を主体に、大規模な検査で感染者を見つけ出し、医療とともに、その人たちの防疫上の隔離を行って、その先の感染拡大を防ぐ、それ以外にはないのだ。検査数は多いければ、多いほど感染者を発見でき、その人の健康も保たれ、その人が感染させるリスクも激減させる。
日本のPCR検査数は確かに増えているが、それでも東京で1日数千件、全国で1万件程度。感染拡大をかなり抑え込んだニューヨーク州は無償で1日6万件である。(アメリカは地域によって、検査法もまちまちで、ニューヨーク州の感染確認数を抜いたカルフォルニア州では、CNNによれば、結果が出るまで10日もかかるなど、統一的な検査法がなく、問題も多い。何よりも、トランプのように経済再開を急ぎ、行動制限を嫌う人びとがあまりにも多い。)
中国武漢では1000万人の市民の検査が実施され、ドイツ、フランス、英国その他多くの国でも、多額の公費を費やしても1日10万件以上のPCR検査が実施されている。それはすべて、感染を封じ込めるのに、最も有効と考えられるからである。
政府が何もしなくても(アホでも)、国民の「民度」により、一度は感染を低く抑えた。だが、第2波はそうはいかないだろう。感染拡大を後押しする「Go To」の1兆円規模の予算があれば、1日10万件の検査は可能である。経営が悪化する病院への経済支援も、さらなる国民の生活支援にも公費は使える。今度ばかりは、アホな政府では、コロナ危機は乗り越えられない。安倍政権はアホな政策を直ちにやめるか、すぐに総辞職するか、どちらかを選ぶべきだ。