夏原 想の少数異見 ーすべてを疑えー

混迷する世界で「真実はこの一点にあるとまでは断定できないが、おぼろげながらこの辺にありそうだ」を自分自身の言葉で追求する

欧米主要メディアの偏向 「CNNスタッフによる自局のイスラエル寄り批判」

2024-02-14 11:18:06 | 社会
 2024年2月4日、英紙ガーディアンは、「CNNスタッフが、自局の親イスラエル報道を『ジャーナリズムの不正行為』と批判した」と報じた。
  CNNのネットワークスタッフによれば、CNNは、「戦争が始まって以来のニュースの大部分は、ネットワーク内のイスラエルに対する組織的・組織的な偏見によって歪められてきた」、それは「 CNNの報道はジャーナリズムの不正行為に相当する」というのである。
 その「偏見」ぶりは、「イスラエル政府の声明を額面どおりに受け取る一方で、ハマスの引用や他のパレスチナ人の視点を報道することに対する厳しい制限が含まれている。さらに、紛争に関するすべての記事は、放送または出版前にエルサレム支局によって承認されねばならない。 」「イスラエル側の被害と、ハマスとそのトンネルの捜索としてのイスラエルの戦争の物語に重点が置かれ、イスラエルのガザの破壊によるパレスチナ民間人の死者数の規模には十分な焦点が当てられない。」「ガザ保健省による死傷者数への言及は『ハマス支配下』と必ず前置きし、世界保健機関や他の国際機関が発表したにもかかわらず、数千人の子どもの死亡報告は信頼できないことを暗示している。 」結局「イスラエルが何をしようと、最終的にはハマスに責任がある 」と視聴者に思わせるように報道されているというのである。

 このような「報道のトーンは、10月7日のハマス攻撃の2日後に就任した新編集長兼CEOのマーク・トンプソンによって」なされているという。それは「天上からの勅命Edicts from on high」のような「報道指針」があり、そこには「 我々は常に視聴者にこの現在の紛争の直接の原因であるハマスの攻撃と大量殺人、そして民間人の誘拐を視聴者に思い起こさせ続けなければならない」と記されており、すべてこの方針で報道するように支持されている、というのである。これらのことは、まさに、CNNがイスラエル政府のプロパガンダ機関になっていることを示している。

マスメディアは、国際問題では自国政府の「応援部隊」になる 
 この報道トーンの「イスラエル寄り」は、アメリカバイデン政権の方針とまったく同一であることに誰でも気づく。また、このCNNスタッフの自局批判は英国のガーディアンに寄稿したもので、なぜ、ニューヨーク・タイムズなど自国アメリカのメディアに寄稿しなかったのか疑問も湧く。しかしそれは、考えればすぐに理解できる。勿論、トランプ寄りで100%親イスラエルのFOXニュースとは異なるが、ニューヨーク・タイムズもワシントン・ポストも、多かれ少なかれイスラエル寄りだからである。アムネスティインターナショナルもヒューマンライツウオッチも、10月のハマスによる攻撃以前に、イスラエルのパレスチナ統治をアパルトヘイトとしているが、この両紙は現在の戦争に際し、そのことなど言及したことがないことでも分かる。CNN同様にイスラエル寄りのメディアに、それに対する批判を寄稿しても、相手にされるはずはないからである。

 EUのフォンデアライエン委員長が、ハマスによる殺害非難して、イスラエルの「自衛権」を全面支持したことでも明らかなように、欧州諸国も程度の差はあれ「イスラエル寄り」である。ご多分に漏れず、多くの欧州主要メディアも自国政府に合わせイスラエル寄りである。その中でも、ガーディアンは、パレスチナ人への大虐殺を詳しく報じ、それを非難する意見を多数掲載するなど、公平さと倫理的正義を保っている。だから、CNNスタッフは、ガーディアンに寄稿したのである。

 マスメディアは、SNSと異なり、誤報を除けば「嘘」は記事にしない。CNNの報道も「嘘」はないだろう。しかしそれでも、報道トーン、論調は、極めて政治的な「偏向」は見られる。一つ一つは嘘ではないが、報道している全体像は「真実からほど遠い」報道をするのである。イスラエル対パレスチナで言えば、ハマスの虐殺を極めて厳しい口調で詳述し、大量に流し続ける(ハマスが赤ん坊を斬首したという伝聞をバイデンは公言したが、後に嘘だと分かり撤回した。CNNやFOXはその後も暫く、「ハマスの斬首」を流し続けた。)。ガザの惨状には、量的にも少なく、使用する言葉も単なる「攻撃」と言い、「虐殺」などという言葉は決して使わない。勿論、イスラエルのパレスチナ人に対する数十年にわたるアパルトヘイトとも言える抑圧体制に言及するするのは、ごく稀に報じるだけ。このような報道トーンに、イスラエルに軍事支援を続け、口先で「人道」と言う現最高権力者のバイデンは満足するだろう。しかし、真実の戦争の全体像からはほど遠い報道なのである。

 この欧米主要メディアの報道ぶりは、イスラエル対パレスチナ問題だけではない。対中国・ロシア・イラン、その他欧米と敵対する諸国に対しても、自国の政権が「満足」する報道トーンで溢れている。例を挙げれば、欧米の「自由民主主義」から言えば、サウジアラビアなど湾岸諸国もベトナムも、中国、北朝鮮同様に「自由民主主義」などない。しかし、それらの国の「非民主主義」的体制についてはほとんど報道されない。そこには、欧米政府がそれらの国との友好関係を深めたいという事情が隠れている。
 結局のところ、マスメディアは、国際問題では自国政府の「応援部隊」になる、のである。それが、「CNNスタッフによる自局のイスラエル寄り批判」で、誰の目にも明らかに露呈したのである。

 ひるがえって、日本の主要メディアが、欧米よりも、もっとひどい「偏向」ぶりなのは、言うまでもない。

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