国連前で、イスラエルの虐殺とアメリカの軍事支援に反対する抗議デモ(AP2024/9/25)
イスラエルは、9月23日以降レバノン各地を空爆し、アルジャジーラによれば、レバノン人を1000人以上を殺害し、死者のほとんどは一般市民の民間人であり、その中には、100人以上の子供が含まれている。9月27日には、アメリカ製地下貫通弾バンカーバスターを使い、ヒズボラ本部を空爆し、最高指導者ハッサン・ナスララ師を殺害したと公表した。
イスラエルは、アメリカ製最新鋭兵器を主力として空爆しているので、ハマスやヒズボラの弱小軍事力では、まったく歯が立たず、戦争というよりも、国際刑事裁判所ICCが言うように、イスラエルによるジェノサイドという方が実態に近い。まさに、イスラエルのやりたい放題がまかり通っているのである。そして、この「やりたい放題」のイスラエルを支援しているのが米欧というのが、現実の構図なのである。
ヒズボラ側もイスラエル領へのロケッ弾・ミサイル攻撃の強化で対抗するので、恐らく近々、イスラエル軍は地上部隊をレバノン領内に侵攻させるだろう。その時は、国連のアントニオ・グテーレス事務総長が危惧するように、レバノンもガザ同様の大虐殺が予想される。
実際、このイスラエルの軍事力行使は、米欧の支援なくしては、不可能なのは明らかである。ジョー・バイデンは、口先では停戦を呼びかけているが、4月に950億ドルの対イスラエル軍事支援法案を成立させ、9月26日にはイスラエル軍は、アメリカ政府から87億ドルの軍事援助を確保したと公表している(ロイター)。このように、バイデンにイスラエルへの軍事支援を停止する考えはまったく見られない。戦争の拡大が危惧されるナスララ師殺害には、「正当な措置」だと言い出す始末である。ナスララ師殺害は、この空爆で民間人が20人以上が巻き添えで死亡しているにもかかわらず、である。だから、上記写真のように、「アメリカ政府は軍事支援を停止せよ」と要求する抗議デモが頻発するのである。アメリカ議会でも、バーニー・サンダースを始め、左派はたびたび、軍事支援停止の演説を行っているが、バイデンは対応を変更する意思をまったく見せていない。
「自由民主主義国」イスラエル
米欧がイスラエルを支援するのは、バイデンの言う「自由民主主義対権威主義の戦い」のイスラエルが「自由民主主義」の陣営にいるからである。「自由民主主義」の国は、例えジェノサイドを行おうと擁護されるのである。
確かに、この地域の国の中では、イスラエルは俄然「自由民主主義」的制度を有している。イスラエル政府は反対するジャーナリストを攻撃するが(アルジャジーラは、ガザでも西岸でもイスラエル政府に閉鎖させられた)、原則的には言論の自由は保証され、野党も存在し、自由選挙も行われる。
対するアラブ側は、パレスチナではガザ地区でも西岸地区でも国政選挙は10年近く行われていないし、アメリカが敵視するイランは、大統領の上位にイスラ教シーア派指導者が君臨する。と言っても、親米のサウジアラビア、UAE、ヨルダンなどは、イスラム教スンニー派の王制が敷かれており、野党どころか政党そのものが禁止されている。「民主主義」も何もあったものではないが、勿論、ここには欧米「二重基準」が適用され、親欧米なら、「民主主義」かどうかは問題にされない。
「自由民主主義」は戦争を正当化する道具
多くの報道によれば、イスラエルはレバノンへの地上侵攻を近々、開始する。2006年のイスラエルの軍事侵攻は、ヒズボラ強力な抵抗に遭い、ヒズボラと同盟関係にある武装勢力の壊滅という目的は達成できずに、イスラエル軍は半年ほどで撤退した。したがって、今度の地上侵攻は、その轍を踏まない作戦が練られているだろうが、ヒズボラも同盟関係のイエメンフーシ派も徹底して抗戦し、イランも軍事作戦を開始するのは間違いない。
アメリカは中東に、既に空母「エイブラハム・リンカーン」を中心とする空母打撃群や戦闘飛行隊を派遣済みであり、さらに9月23日には、追加の部隊を増員する方針を発表している。これは、主にイランとの軍事衝突に備えて行われているが、イスラエルへの軍事支援を強化することが主眼である。
これらは、「自由民主主義国」のイスラエルを防衛するという目的で行われる。バイデンだけでなく、EUのウルズラ・フォンデアライエン委員長も、度々、イスラエルの正当な自衛権を断固支持する発言している。逆に言えば、パレスチナ自治区にもレバノンにもイランにも、正当な自衛権は認めないということである。
バイデンは世界を「自由民主主義国」と「権威主義国」に分割したが、イスラエルは、イスラエル経済と、西側各国内でのユダヤ人の政治的影響力がそうであるように、西側「自由民主主義国」の経済・政治システムに完全に組み込まれている。だから、イスラエルは「自由民主主義国」なのである。
「自由民主主義国」側にいれば、どんな残虐行為をしたとしても擁護され、軍事支援を受けられる。それが、米欧「自由民主主義」の論理なのである。
対ロシアのウクライナへの軍事支援も、「自由民主主義」を守るためと言って行われる。中国に対するアメリカを中心とする軍事同盟の強化も、「自由民主主義」を守るためと言って行われる。そして、イスラエルの戦争を支援する米欧は、ここでも、「自由民主主義」のためとして戦争を正当化するのである。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます