空が白み始めた5時頃には動き始めた登山者の気配が伝わってきました。
中ワク塚までの登ってくると、岩の窓の向こう側から上ワク塚が「俺はここにいるよ!」と私を誘うのです。
私も予定を1時間早めて出発することを決め、ササッと朝食を済ませて登山口に立ちました。
初めて歩く道ですが充分な下調べをしているので不安はありません。
祝子川の渡渉も何事もなくクリアです。
花を愛でる余裕もありました。
急斜面に設置された不安定なハシゴにも動じませんでした。
近年の集中豪雨で山肌が崩落し、岩盤が剥き出しになっている場所もありましたが、これも把握していることでした。
睡眠がとれていないことを考慮し、焦らずできるだけユッタリとしたペースで歩を進めて行きました。
登りはじめて2時間が経過した頃、今まで木々で遮られていた視界が突然開けました(袖ダキ展望所)。
登山雑誌で見た下ワク塚の勇壮な姿が目の前にありました。
抜ける様な青空を背景に岩のオブジェがそそり立っています。
さらに高度を上げ、先程見上げていた下ワク塚の上部までやってきました。
ギザギザとした中ワク塚が「ここまでおいで!」と私を呼んでいます。
中ワク塚までの登ってくると、岩の窓の向こう側から上ワク塚が「俺はここにいるよ!」と私を誘うのです。
余りも眺望が良くて中ワク塚の岩場の上にも立ちましたが、実はこの場所、滑落事故も発生している場所でした。
近くの岩陰に人知れずヒカゲツツジが咲いていました。
岩場の昇り降りで余計な体力を使い過ぎたようで、私は足に違和感を感じはじめたのです…
そしてそれが次第に痛みに変わり、足が上がらなくなってしまいました。
『あの時(馬見山や剱岳)と同じだ… 大丈夫!こんな時のために “魔法の薬” とストックを準備しているのだから。』
休憩をとったり、頻繁に水分を補給しながら上ワク塚の基部まで辿り着くことができました。
お昼にはまだ早い時間でしたが、ユックリと足を休ませるために昼食を摂ることにしました。
また、大崩山山頂まで行く予定を変更して、水場のあるリンドウの丘経由で坊主尾根を降りることを決めました。
満開のアケボノツツジやミツバツツジと、その下で食べたカップメンのお陰で、足の痛みはほぼ無くなりました。
その勢いで上ワク塚の上まで登り、下にある写真を撮ったのです。
上ワク塚からのパノラマは私を幸福な気持ちにさせてくれました。