本書は、中島岳志さんと、作家星野智幸さん(2010年9月)、文芸批評家大澤信亮さん(2011年2月)、作家重松清さん(2011年4月)及び社会学者開沼博さん(2011年7月)との対談集である。
本書の副題は「秋葉原事件から3・11以後へ」であるが、中島さんは秋葉原事件後に「言葉を失った」そうだ。なぜなら、「大切なことがすり抜けていく」からだ(5頁)。そして、中島さんは「絶望することにも絶望したとき、私たちはようやく世界を引き受けることができ」、その場合に最重要なものは「言葉」で、それによって「世界が変わる」という(17頁)。
また、東電バッシングによって、脱原発がなされても、「私たちは必ずそれ以上のものを失う」。そのような状況では、画一的な価値観の「妄信」が広がり、世論の合意が形成できなくなり、「異質なものが抹殺される」ことになる(22頁)。
なお、中島さんが編集委員をつとめる『週刊金曜日』に対する批判も含まれている。