震災のあった年末にきて、いい本に出会ったと思う。
本書は、『毎日小学生新聞』2011年3月27日号に掲載された、元毎日新聞記者の北村龍行著「東電は人々のことを考えているか」という文章に対し、小学6年生である「ゆうだい」君から「突然ですが、僕のお父さんは東電の社員です。」という一文で始まる手紙で、原発ができたのは東電だけではなくみんなの責任とする反論がなされ、その後、毎日小学生新聞紙上で、小学生等の論争がなされた。
その論争が紹介された後に、森さんがゆうだい君に対して、語りかける文章が続くが、その中で、「企業の責任と、そこで働く人たちの責任とを、絶対に一緒にすべきでない。」(181頁)とある。これには、頭をカーンと打たれたような衝撃があった。東電の例で言えば、原発導入を決定した経営陣(取締役)及びその経営陣を選任し解任することをしなかった東電の大株主の責任と、福島第一原子力発電所で今も懸命に働いている労働者の責任は一緒になるわけがないというのだ。これらの責任を混同したままでは、脱原発派は、原発推進派を切り崩すことどころか、推進派内の結束をより強固のものにしてしまうのではないだろうか。いずれの立場に立つにせよ、本書は多くの人々に読まれるべきだ。