本書によれば、中国のネット人口は、2010年7月時点で、4億人を超えた。恐らく、その数は増え続けているだろう。中国政府は、そのネット上の意見に神経を尖らせている。しかし、既存メディアとは違い、個人単位であるがために、完全な押さえ込みは難しいので、政府寄りのオピニオンリーダーなどを利用して、格差問題などで、人民の不満が政府に向かわないようにしている。それでも、そのような政府の干渉を巧みに潜り抜けて、地方政府が対応を変えざるを得ない状況を生み出すことに成功することもある。
注目すべきは、2009年の広州ゴミ焼却発電所建設抗議事件で、反対デモを行った人たちは、「自分達のやっていることは、禁じられているデモではなく、『集団散歩』である」といい、「われわれは何も代表しない。私は私自身の意見を持ってここに来ている」と言ったという(48から49頁)。このことから、著者は個人の権利という意識の高まりが見て取れるという。しかし、中東地域とはちがい、中国のネット市民の多くは、政府打倒という意見はもっていないようだ。