【連載エッセー】岩崎邦子の「日々悠々」（73）
もう一つの新型コロナ被害 
今年も３月11日がやって来た。あの東日本大震災から９年になるというけれど、このところの新型コロナウィルス騒ぎで追悼記念式典は取りやめとなった。東日本各地に甚大な地震被害、特に東北の東海岸を襲った大津波のこと、福島の原発事故など、誰の記憶にもまだまだ残っている。だが、未だ復興がままならないことも忘れてはいけない。
式典が執り行われなくても、この日に合わせての現地取材や、取り残された遺族の口惜しさ・思いがテレビで報じられている。今も4万7737人が避難生活、特に双葉町は汚染地域となっており、避難のために故郷を離れたままの人たちの苦悩がある。
年を重ね故郷への帰還をあきらめざるを得ない人の姿もあるが、復興に向け頑張る若者の姿には、胸を打たれる。津波への反省と教訓、原発事故を後世にどう伝えるか、そして「命を守る」ことの大切さが、追悼10年に向かっての課題となっている。
新型コロナウィルス感染の広がりを抑えようと、総理が出した「緊急事態宣言」だが、いろいろな所に弊害も。２月26日イベント自粛、27日全国一斉休校、３月１日フィットネス・ライブハウス運営自粛が伝えられた。このことで、仕事・依頼などはキャンセルとなって、収入ゼロになる人も出るだろう。フリーランスの方たちの死活に関わることでもある。
この白井健康元気村のブログでも紹介されたが、フリーランス協会理事長の平田麻莉さんが大奮闘。「ウーマン・オブ・ザ・イヤー2020」を受賞された平田さんは、元気村村民の平田新子さんのお嬢さんである。フリーランスの多様な働き方を推奨してきたのは、経産省・政府だ。彼女は働き方改革で経産省の審議会の委員をされているが、経産省の職員も安倍総理の独断通達への憤りもある。
３月９日のヤフー・ニュースにも取り上げられたが、平田麻莉さんは「無利子無担保の10万円融資では、フリーランス・自営業の悲鳴が鳴り止まない」と指摘した。新型コロナウィルスに関する政府の要請の影響で、仕事が出来ないフリーランスにも救済措置をと、切実に願ってのことだ。
フリーランスとは、特定の企業や団体、組織に専従せず、自らの技能を提供する人たちである。個人事業主、俳優・アーティスト・アナウンサー・通訳・研修講師・習い事の講師・スポーツインストラクターなどを指す。
平田さんたちの働きかけが効いたのか、政府は3月10日、「フリーランスの緊急対応策」を発表する。テレビのニュースで、政治判断での対応を願う姿の平田麻莉さん（代表理事）の姿が映し出されていた。休業補償は会社員など、一日一律8330円、フリーランス・自営業へは一日一律4100円が発表されたが、この差は倍以上でもある。補償が出ないよりはマシというものだが。
母親である平田新子さんからは、お嬢さんである麻莉さんの苦労話なども知ることになった。それは、窮状を訴えて来られたフリーランスの方たち、アドバイスや知恵を授けられた弁護士・地方自治体の職員の方々、政府内において不眠不休で制度設計をされた国家公務員の方たちの集約で、やっとこぎつけた「フリーランスの緊急対応策」である、とのことだ。まだまだ、国・政府の混乱と奮闘は続いていくことであろうと、想像される。
ここで、余談ながら平田麻莉さんが「ウーマン・オブ・ザ・イヤー2020」で受賞されたときの、スピーチの中から、私が感心した部分を少し紹介したい。
彼女の母親（新子さん）の生き方で実践されてきたのは、フリーランスの働き方、カンガルーワーク、２拠点ワークやワーケーションも、麻莉さんが小さい頃からされてきたとのこと。そのことに、感謝し、見習ってこられた。母となってからの女性の生きざま・創意工夫に、尊敬と感謝を述べておられる。「背中をみせてくれて、ありがとう」と。
日ごと世界中を脅かし続けているコロナウィルスの感染に関わるニュースは、経済にも及び株価も円高ドル安など、目まぐるしく動く。世界の経済情勢の判断などは、私には理解の範疇を越えるが、高齢者の日々の暮らしでは、我が身の安全を守り、その術をわきまえることしかないのかも。次世代を生きる若者の健全な生き方を、心から応援したい。
