ステレオ誌のコンテストの結果も、先日には分かってきていまして、
カノン5Dは見事「落選」してしまいました(笑)
反省するところは多々ありますが、
まずは、今まで余り話してこなかった応募作「S-049 ツイン・ウィング」について紹介したいと思います。
第1回目となる今回は、「ツイン・ウィング」の技術的特徴について説明しようと思います。
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「ツイン・ウィング」は、P1000 1発から最高の音を引き出すために設計されたエンクロージュアです。本作には、下記の3つの技術を採用しています。
1.「デュアルフレーム・エンクロージュア」
2.「ハイブリッド・レゾナンスチューブ」
3.「桧アンカー」
1.「デュアルフレーム・エンクロージュア」について。
「ツイン・ウィング」の特徴的な形状は、音響特性を最優先にして設計した「デュアルフレーム・エンクロージュア」を搭載しているためです。本技術は、二つの効能をもつ構造から構成されます。
一つめは、外観にも表れる「アウターフレーム」です。従来の箱型のエンクロージュアの場合、バッフル端の90°コーナーで音波が反射し、音を濁していました(図1-1左)。「アウターフレーム」は、外側を変形五角形とすることで、バッフル端の影響を軽減します(図1-1右)。これにより反射波の影響が少なくなり、低歪な音、広大な音場の表現に貢献します。
二つめは、内部構造の「インナーフレーム」です(図1-2)。複雑に組まれた本構造は、内部すべてが三角形で構成されます。これは、音を濁す定在波の原因とされるエンクロージュア内部の平行面を排除するとともに、「トラス構造」による箱強度の向上を狙ったものです。これらは音の混濁を低減する効果があり、大編成オーケストラも低歪かつ鮮明に鳴らすことができます。
「ツイン・ウィング」は、この二つのフレーム構造を一つの筐体に収める合理的な構造としています。これは板取りの効率化のみならず、構造の単純化による付帯音低減にもつながっています。
図1-1
図1-2
2.「ハイブリッド・レゾナンスチューブ」
一般的な共鳴管型スピーカーからは、音響管による増幅として、最低音の基音のほか、その3倍の周波数の3倍音、その5倍の5倍音などが付随して出てくることが知られています。これにより共鳴管は幅広い帯域の低音を増幅できますが、特に基音と3倍音の間には3オクターブもの開きがあり、それが「低音の癖」として認識される欠点がありました。
そこで本作に搭載した「ハイブリッド・レゾナンスチューブ」は、管の途中で大きく断面積を変えることで、まるで長さの異なる2本の共鳴管が双方の欠点を埋めるような動作することを狙います。
具体的には、ユニットから1mの位置で音響管の断面積を約3倍に一気に広げることで、長さが約1.5 mの部分共鳴(管全長2.6m-1.0m)を新たに発生させます(図1-3)。なお、この部分共鳴の発生には、「2倍以上の断面積」に管を一気に広げることが大切です。長岡式共鳴管にあるような、2倍以下の小さな広げかたでは部分共鳴を励起することはできません。
この部分共鳴が実際に起こっているかは、本作のインピーダンス特性(図1-4)で確認することができます。管全長2.6mに由来する40Hzと120Hzのディップ(共鳴点)のほか、長さ約1.5mの部分共鳴に由来する60Hzと180Hzのディップも発生していることが分かります。
本技術を搭載する「ツイン・ウィング」は、風圧を感じる大太鼓の響き(超低域)から、スピード感に溢れるウッドベース(中低域)までシームレスな再生が可能となりました。また、共鳴点が複数に分散しているため、吸音材をほぼゼロにしても付帯音を感じないメリットも生じ、生き生きとした音楽表現が可能となっています。
図1-3
図1-4
3.「桧アンカー」
スピーカーユニットは、音を出し終えた後も、自身の固有共振による残響音を発しています。これは、スピーカーユニットが金属やフェライト磁石など、内部損失が低い素材で作られているためだと考えられます。
本作では「桧アンカー」として、磁気回路の後部に「桧(ヒノキ)」の木片を貼りつけています(図1-5)。磁気回路(金属)と桧(木材)をハイブリッドさせることで、双方の固有振動の違いから固有音を低減することを狙いとしています。
この効果は非常に大きく、ボーカルは瑞々しくピンポイントに定位し、中低音はコシの強さを感じるものとなりました。さらに、中高域の付帯音が抑制されたためか、最低域の存在感も確かなものへと変化します。これらの効果は、スピーカーユニットを特殊な構造で強固に固定したものと似ていますが、「桧アンカー」は非常に簡便な方法で、同様の効果が得られるのが特徴です。
図1-5
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地味な技術ではありますが、それぞれ明確に音質を向上させてくれるものです。
次回は、具体的な設計図と、そのサウンドを聴いて頂きたいと思います!
~~オマケ~~
11/29のミューズの方舟自作スピーカーコンテストに向けて製作中の「S-054」。
ユニット周囲のバッフルをグリッと削り、背面の音の流れをスムーズにする加工としました♪
カノン5Dは見事「落選」してしまいました(笑)
反省するところは多々ありますが、
まずは、今まで余り話してこなかった応募作「S-049 ツイン・ウィング」について紹介したいと思います。
第1回目となる今回は、「ツイン・ウィング」の技術的特徴について説明しようと思います。
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「ツイン・ウィング」は、P1000 1発から最高の音を引き出すために設計されたエンクロージュアです。本作には、下記の3つの技術を採用しています。
1.「デュアルフレーム・エンクロージュア」
2.「ハイブリッド・レゾナンスチューブ」
3.「桧アンカー」
1.「デュアルフレーム・エンクロージュア」について。
「ツイン・ウィング」の特徴的な形状は、音響特性を最優先にして設計した「デュアルフレーム・エンクロージュア」を搭載しているためです。本技術は、二つの効能をもつ構造から構成されます。
一つめは、外観にも表れる「アウターフレーム」です。従来の箱型のエンクロージュアの場合、バッフル端の90°コーナーで音波が反射し、音を濁していました(図1-1左)。「アウターフレーム」は、外側を変形五角形とすることで、バッフル端の影響を軽減します(図1-1右)。これにより反射波の影響が少なくなり、低歪な音、広大な音場の表現に貢献します。
二つめは、内部構造の「インナーフレーム」です(図1-2)。複雑に組まれた本構造は、内部すべてが三角形で構成されます。これは、音を濁す定在波の原因とされるエンクロージュア内部の平行面を排除するとともに、「トラス構造」による箱強度の向上を狙ったものです。これらは音の混濁を低減する効果があり、大編成オーケストラも低歪かつ鮮明に鳴らすことができます。
「ツイン・ウィング」は、この二つのフレーム構造を一つの筐体に収める合理的な構造としています。これは板取りの効率化のみならず、構造の単純化による付帯音低減にもつながっています。
図1-1
図1-2
2.「ハイブリッド・レゾナンスチューブ」
一般的な共鳴管型スピーカーからは、音響管による増幅として、最低音の基音のほか、その3倍の周波数の3倍音、その5倍の5倍音などが付随して出てくることが知られています。これにより共鳴管は幅広い帯域の低音を増幅できますが、特に基音と3倍音の間には3オクターブもの開きがあり、それが「低音の癖」として認識される欠点がありました。
そこで本作に搭載した「ハイブリッド・レゾナンスチューブ」は、管の途中で大きく断面積を変えることで、まるで長さの異なる2本の共鳴管が双方の欠点を埋めるような動作することを狙います。
具体的には、ユニットから1mの位置で音響管の断面積を約3倍に一気に広げることで、長さが約1.5 mの部分共鳴(管全長2.6m-1.0m)を新たに発生させます(図1-3)。なお、この部分共鳴の発生には、「2倍以上の断面積」に管を一気に広げることが大切です。長岡式共鳴管にあるような、2倍以下の小さな広げかたでは部分共鳴を励起することはできません。
この部分共鳴が実際に起こっているかは、本作のインピーダンス特性(図1-4)で確認することができます。管全長2.6mに由来する40Hzと120Hzのディップ(共鳴点)のほか、長さ約1.5mの部分共鳴に由来する60Hzと180Hzのディップも発生していることが分かります。
本技術を搭載する「ツイン・ウィング」は、風圧を感じる大太鼓の響き(超低域)から、スピード感に溢れるウッドベース(中低域)までシームレスな再生が可能となりました。また、共鳴点が複数に分散しているため、吸音材をほぼゼロにしても付帯音を感じないメリットも生じ、生き生きとした音楽表現が可能となっています。
図1-3
図1-4
3.「桧アンカー」
スピーカーユニットは、音を出し終えた後も、自身の固有共振による残響音を発しています。これは、スピーカーユニットが金属やフェライト磁石など、内部損失が低い素材で作られているためだと考えられます。
本作では「桧アンカー」として、磁気回路の後部に「桧(ヒノキ)」の木片を貼りつけています(図1-5)。磁気回路(金属)と桧(木材)をハイブリッドさせることで、双方の固有振動の違いから固有音を低減することを狙いとしています。
この効果は非常に大きく、ボーカルは瑞々しくピンポイントに定位し、中低音はコシの強さを感じるものとなりました。さらに、中高域の付帯音が抑制されたためか、最低域の存在感も確かなものへと変化します。これらの効果は、スピーカーユニットを特殊な構造で強固に固定したものと似ていますが、「桧アンカー」は非常に簡便な方法で、同様の効果が得られるのが特徴です。
図1-5
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地味な技術ではありますが、それぞれ明確に音質を向上させてくれるものです。
次回は、具体的な設計図と、そのサウンドを聴いて頂きたいと思います!
~~オマケ~~
11/29のミューズの方舟自作スピーカーコンテストに向けて製作中の「S-054」。
ユニット周囲のバッフルをグリッと削り、背面の音の流れをスムーズにする加工としました♪
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