オーディフィル公式ブログ (趣味の小部屋)

スピーカー工房「オーディフィル(AudiFill)」の公式ブログ。
リアルで心地よい音の【ひのきスピーカー】を製作中。

[S-073] 無垢材で作るスピーカー

2022年01月30日 16時07分49秒 | AudiFill 情報
(写真:オーディフィル SOLA MK2

皆さん こんにちは。

今日は、ひのきスピーカーの特長でもある
無垢材」について説明しようと思います。


先日発表した「SOLA Mk2」は、
ひのきの無垢材を使っているのが大きな特徴になります。

この「無垢材」とは何か。

意外と知られていないことも多いので、
一般的な「MDF」との違いも併せて説明します。




無垢材

木材は、樹木を切った丸太の状態から作られます。
丸太をそのまま直方体の形にカットしたのが「無垢材」と呼ばれるものです。



基本的には、丸太を切り出すだけなので、
何も手を加えない「無垢な」状態の木ということで、無垢材と呼ばれているのだと思います。

無垢材の一番の特徴は、木の表面に見える木目模様でしょう。
一年ごとに刻まれる年輪が、そのままの美しさをもって現れます。



アコースティック楽器で使われる木材も、(基本的には)この無垢材です。

美しい響き、意匠性を備えているため、
長い年月をかけて演奏される楽器には最適な材料なのです。





集成材

無垢材は、先ほどの図にあるように、丸太からそのまま切り出すことが特徴です。
逆に言うと、無垢材は「小さな丸太からは、小さな板しか作ることができない」という欠点も併せ持っています。

そこで「集成材」の登場です。



無垢材のような生の木の風合いをもちながらも、
原材料の選択肢や、作れる板材の種類は格段に広がります。

無垢材と比べると、木目の美しさは一歩劣りますが、
木の響きは比較的残っており、板の反りが少なく扱いやすいので、
自作スピーカーにオススメの材料です。

(※横方向だけを貼り合わせた「幅はぎ材」は、無垢材として扱われることが一般的です)




MDF

MDFの製造方法は、先程と大きく異なります。


参考:https://jfpma.jp/seihin/koutei-index.html

一度、原料を繊維まで解きほぐし、そこに接着剤などを加えて成型して作られます。

原材料の姿は全く分からなくなりますので、
木質廃材の再利用も可能になります。

このように、極めて合理的な板材がMDFだと言えるでしょう。
無垢材や集成材のような、縦横の力学的な区別もありません。


他に、パーティクルボードや、合板もありますが、
いずれも木材を細かく裁断して、再成型したものになります。




スピーカーに無垢材を使う理由

現代のスピーカーではMDFが最も多く使われる材料になっていますが、
あえて無垢材を使う理由として、木材の繊維構造が挙げられます。


参考:https://www.shinrin-ringyou.com/mokuzai/kouzou_micro.php


木材には、「道管」という水を通すための構造があります。
(写真はアカマツの顕微鏡写真なので正確には「仮道管」です)

これが、「軽くて強靭」という特徴をもつハニカム構造をとっており、
木材固有の特性の源になっています。


特に、この構造を構成するセルロース成分は、極めて高い強度があり、
それが寸断されずに直線的に繋がっていることは、
音のヌケ感、鮮度感にも好ましい影響があるのではないかと考えています。


参考:http://www.audifill.com/essay/eng/0_10.html

無垢材で作ったスピーカーは、濁りのない鮮度の高い音が得られ、
音色の描写に優れている
という印象をもっています。

楽器の素材感、ボーカルの体温が伝わってくるスピーカー作りには、
この無垢材が欠かせない材料になっています。




こうして、利点欠点がそれぞれの材料になりますが、
全て手作業でスピーカーを作るオーディフィルにとっては、
木材の魅力を最大限に発揮できる無垢材を愛用しています!

一方で、スピーカーを大量生産するメーカーにとっては、
均質で安定的な供給が可能な、MDF材が好ましいという結論になると思います。

エンクロージュア(箱)の素材選択は、スピーカーの性能を決める無数の項目の一つでしかありません。
「MDFで作ったスピーカーだからダメ」なんてことはないと思っています。

どういう手段で、何を目的にスピーカーを作るのかという、
メーカー側のスピーカー作りに対する考え方が、
材料の選択に現れると思うと、スピーカー選びが少しだけ面白くなるのではないでしょうか。



次回は、SOLA Mk2のエンクロージュア設計について、説明しようと思います。
どうぞお楽しみに!


続きは、こちら。
「ひのきでスピーカーを作る理由(その1)」






ひのきスピーカー「SOLA Mk2」の詳細はこちら。





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