音響管を使ったスピーカーとして、二つの作例を比較してみます。
それぞれ、ユニット(FOSTEX P1000K)の振動板面積に対して、
200%と400%の断面積をもつ音響管をS-048で用意しました。
それらを「U字型」に折り曲げたときの、
変化を見てみましょう。
まず、聴感上の変化ですが、
あまり大きな変化はありませんでした。
瞬時に切り替えての比較であれば、分かる程度の違いだと思いますが、
記憶を辿っての比較のため、この程度では大きな差とは感じませんでした。
なお、断面積の差(200→400%)などは、直管で感じた違いを踏襲するものとなっています。
U字管でも、直管と同様に、共鳴管の断面積に由来する変化は起こっているようです。
では、周波数特性を確認して、より詳細に見てみましょう。
(画像の保存、でより高精細な画像が見れます。)
左から、ダクト直前(音響管開口部付近)、ユニット直前、軸上1mの周波数特性となっています。
<ダクト直前特性について>
まず、70Hz前後の一倍振動による共鳴を確認すると、
直管に比べ、「U字」のほうが共鳴によるピークが強く明確に表れています。
さらに気になるのは、U字管は共鳴周波数が若干低くなっていることです。
共鳴が強い400%では、明らかに一倍振動のピーク位置が、70Hz(1.2m)→50~60Hz(1.5m)と低くなっています。
倍音に関しても同様に、U字管のほうが明らかに低い周波数に出ていますね。
なお、U字管で懸念された、音響管内での分割共鳴については、
141Hz(=60cm、ユニット側)や106Hz(=80cm、開口部側)の双方とも確認されませんでした。
とくに周波数特性に乱れた感じもなく、理論通りの倍音が確認されるので、共鳴の分割は起こっていないといえるでしょう。
<ユニット直前特性について>
注目は、共鳴周波数でのディップ(振幅=空振りの抑制)です。
200%の太さでは、U字管のほうがディップは全体的に小さくなっています。
400%の太さの方は、三倍振動(160~200Hz)のディップについてはU字管の方が大きく見えますが、やはり一次振動(50~60Hz)のディップはU字管が小さく出ています。
<軸上1m特性について>
まず、一倍振動(70Hz付近)に注目すると、特に200%の太さではU字管のほうが音圧が出ているように見えます。一方で、400%の太さのほうは、大差なし…でしょうか。
基本的にほぼ同じ特性となっていますが、一部違うのは200~400Hz前後の中低域の特性です。
3倍~7倍の高次共鳴に相当する帯域ですが、U字管のほうが明らかに特性の乱れ(細く鋭いピーク)が確認されます。
こうして周波数特性を見てみると、大きく3つのポイントが見えてきます。
<U字管の特徴>
1. 一倍振動が強い。(制動が弱く、共鳴が強い)
2. 共鳴周波数が下がる。
3. 中低域に特性の暴れが出る。
1.については、周波数特性からの推測でしかありませんが、
U字管のように、一回折り返しをつけることで、折り返した後の管は(スピーカーユニットによる制動を受けず)比較的フリーに共鳴できるようになる。と考えています。
2.については、インピーダンス特性を見てみても明白です。
それぞれ、太さが200%と400%のインピーダンス特性ですが、
U字管のほうが、明らかに共鳴周波数が下がっているのが分かります。
今回、長さ1.2mの直管の再現として、
長さ0.6mの音響管をつなげたU字管を用意しましたが、その前提が違うのかもしれません。
太さ400%のU字管の場合、共鳴周波数(50~60Hz)から計算する音響長は1.5mでして、これはU字管内の最短距離ではなく、U字管の折り曲げ部の奥を含めた距離がカウントされているとも考えられます。
音は最短ルートを通る、という常識とは異なる結果ですが、
今回の実験結果からは、そう考えるのが妥当でしょう。
3.の、中低域の暴れについては、以前からバックロードホーン製作界隈で噂となっていたことです。
ただ、この原因は一般的に「管の分割共鳴による」と考えられていますが、
今回の実験箱では、分割共鳴(141Hzや106Hz)は全く確認できません。
つまり、この中低域の暴れは、共鳴の変化ではなく、
コーナー部に特有な音響的干渉が原因ではないか、と考えられます。
(もちろん、それによって共鳴の変化が誘発されることもあるでしょうが、本当の原因は違うと思うのです。)
現実的なバックロードホーン型や共鳴管型スピーカーでは、避けて通れないU字管ですが、
今回の実験で、色々と興味深い挙動を確認することができました。
上記に挙げた3つの特徴は、あくまでも仮説にすぎません。
そもそも、直管とU字管の2条件の比較だけでは、明確な結論に達することは難しいでしょう。
次回は、U字管にすると「2. 共鳴周波数が下がる。」を、徹底的に調べてみようと思います!
それぞれ、ユニット(FOSTEX P1000K)の振動板面積に対して、
200%と400%の断面積をもつ音響管をS-048で用意しました。
それらを「U字型」に折り曲げたときの、
変化を見てみましょう。
まず、聴感上の変化ですが、
あまり大きな変化はありませんでした。
瞬時に切り替えての比較であれば、分かる程度の違いだと思いますが、
記憶を辿っての比較のため、この程度では大きな差とは感じませんでした。
なお、断面積の差(200→400%)などは、直管で感じた違いを踏襲するものとなっています。
U字管でも、直管と同様に、共鳴管の断面積に由来する変化は起こっているようです。
では、周波数特性を確認して、より詳細に見てみましょう。
(画像の保存、でより高精細な画像が見れます。)
左から、ダクト直前(音響管開口部付近)、ユニット直前、軸上1mの周波数特性となっています。
<ダクト直前特性について>
まず、70Hz前後の一倍振動による共鳴を確認すると、
直管に比べ、「U字」のほうが共鳴によるピークが強く明確に表れています。
さらに気になるのは、U字管は共鳴周波数が若干低くなっていることです。
共鳴が強い400%では、明らかに一倍振動のピーク位置が、70Hz(1.2m)→50~60Hz(1.5m)と低くなっています。
倍音に関しても同様に、U字管のほうが明らかに低い周波数に出ていますね。
なお、U字管で懸念された、音響管内での分割共鳴については、
141Hz(=60cm、ユニット側)や106Hz(=80cm、開口部側)の双方とも確認されませんでした。
とくに周波数特性に乱れた感じもなく、理論通りの倍音が確認されるので、共鳴の分割は起こっていないといえるでしょう。
<ユニット直前特性について>
注目は、共鳴周波数でのディップ(振幅=空振りの抑制)です。
200%の太さでは、U字管のほうがディップは全体的に小さくなっています。
400%の太さの方は、三倍振動(160~200Hz)のディップについてはU字管の方が大きく見えますが、やはり一次振動(50~60Hz)のディップはU字管が小さく出ています。
<軸上1m特性について>
まず、一倍振動(70Hz付近)に注目すると、特に200%の太さではU字管のほうが音圧が出ているように見えます。一方で、400%の太さのほうは、大差なし…でしょうか。
基本的にほぼ同じ特性となっていますが、一部違うのは200~400Hz前後の中低域の特性です。
3倍~7倍の高次共鳴に相当する帯域ですが、U字管のほうが明らかに特性の乱れ(細く鋭いピーク)が確認されます。
こうして周波数特性を見てみると、大きく3つのポイントが見えてきます。
<U字管の特徴>
1. 一倍振動が強い。(制動が弱く、共鳴が強い)
2. 共鳴周波数が下がる。
3. 中低域に特性の暴れが出る。
1.については、周波数特性からの推測でしかありませんが、
U字管のように、一回折り返しをつけることで、折り返した後の管は(スピーカーユニットによる制動を受けず)比較的フリーに共鳴できるようになる。と考えています。
2.については、インピーダンス特性を見てみても明白です。
それぞれ、太さが200%と400%のインピーダンス特性ですが、
U字管のほうが、明らかに共鳴周波数が下がっているのが分かります。
今回、長さ1.2mの直管の再現として、
長さ0.6mの音響管をつなげたU字管を用意しましたが、その前提が違うのかもしれません。
太さ400%のU字管の場合、共鳴周波数(50~60Hz)から計算する音響長は1.5mでして、これはU字管内の最短距離ではなく、U字管の折り曲げ部の奥を含めた距離がカウントされているとも考えられます。
音は最短ルートを通る、という常識とは異なる結果ですが、
今回の実験結果からは、そう考えるのが妥当でしょう。
3.の、中低域の暴れについては、以前からバックロードホーン製作界隈で噂となっていたことです。
ただ、この原因は一般的に「管の分割共鳴による」と考えられていますが、
今回の実験箱では、分割共鳴(141Hzや106Hz)は全く確認できません。
つまり、この中低域の暴れは、共鳴の変化ではなく、
コーナー部に特有な音響的干渉が原因ではないか、と考えられます。
(もちろん、それによって共鳴の変化が誘発されることもあるでしょうが、本当の原因は違うと思うのです。)
現実的なバックロードホーン型や共鳴管型スピーカーでは、避けて通れないU字管ですが、
今回の実験で、色々と興味深い挙動を確認することができました。
上記に挙げた3つの特徴は、あくまでも仮説にすぎません。
そもそも、直管とU字管の2条件の比較だけでは、明確な結論に達することは難しいでしょう。
次回は、U字管にすると「2. 共鳴周波数が下がる。」を、徹底的に調べてみようと思います!
おっしゃるとおり、「最長ルート」という考えで正しいようです。
今まで、ちょっと長めに音響長が測定されても、「開口端補正かな?」と思って気にとめなかったのですが、しっかり確認していくことが大切ですね。
実は、次回の実験でそれが確認されるのですが、先を越されてしまいました(汗)