「タイムドメイン」というと、富士通テンが販売している卵型SPが有名でしょうか。
この卵型SPの理論を生み出したのが「タイムドメイン」で、今回行ったのはその試聴室。
どうせ聴きに行くなら良い音の所がいいなぁ・・・と思い、webサイトを見るものの、大半がデザイン重視のお店でした。(それはそれで良いのですが。)
しかし、一つ目にとまるものが。
「ん?オンキョーのセプターがあるぞ?しかも個人宅?長澤邸?」
これなら良い音で聴けるのではないか、と思い長澤邸にお伺いする事になったのです。
場所は東京の小金井。武蔵小金井駅を降り、商店街を進んで少しの所に長澤邸はありました。
表札が奥にあるので家の場所はやや探しにくいですが、門を勝手に開けて玄関付近のチャイムを鳴らすと、長澤さんが出迎えてくださいました。(要予約、時々電話がつながらない事あり)
通された先が長澤さんのリスニングルームです。こじんまりとしているものの、木材の散音材が一面に敷かれ良好な音響特性を持つ部屋だと分かります。
笑顔で応対してくださる長澤さんのお話を聞くに、長澤さんはタイムドメイン「Yoshi9」の開発者の一人で、現在はミュージックバードのJAZZ部に関わっていらっしゃるとのことでした。
早速、「Yoshi9」で音楽を聞かせていただくと、
とにかく自然な音に驚かされるカノン5D。
変なエッジや高音域のクセは一切無く、ただ芯のある音が存在する感触なのです。
しかし、こういう音はナイーブなもの。音響特性が整った長澤邸でないと単なる無表情な音に聞こえるかもしれません。
さらに、驚いたのが低音。8cmのユニットからバスドラムのエア感が出ているではないですか!!
さて、せっかく開発者がいらっしゃるので、沢山の質問をさせていただきました。
ここでは、そのダイジェストを紹介したいと思います。
Q1.なぜ、この大きさのSPなのですか?
試作過程で高さ50cmのものや、13cm口径のものも作った。
しかし、大口径のものは分割振動してしまい理想的ではなかった。例えば、コオロギの音は、100m先まで聞こえる。理想的には5.5cm口径が良く、ヘッドフォンは理想に近いといえる。ちなみに、「Yoshi9」の「9」は管が9cm内径だから。また、高さがある程度無いと、子供にユニットを弄られてしまうのと、耳の高さにしたかったので、この高さになった。ちなみに、30Hzぐらいまで出るよ。
あと、ユニットをネジで止めしたくなかったのもあり、結果的にユニットは上向きになっているが、これもコンサートホールでブレンドした音を再現するのに貢献している。ユニットが前向いてると色んな弊害がある。
Q2.この箱は共鳴管ですか?材質は?
共鳴管というより、車のマフラーに近いね。ユニットの裏側からの音を如何に消せるかに拘ったつくりで、できるだけ長い方が良いけど、耳の高さにあわせることにした。スピーカーを自作するのであれば、平面バッフルはかなり理想的だが、販売ルートには持ち込めないよね。
材質はアルミ。木では円筒形に出来ないし、試作ではアクリルもあったけど傷がつきやすいし高価だった。アルミ管の内部に吸音材を張るのは至難の業で、大阪の工場で作ってもらっている。
Q3.プレーヤーもアンプ(「Yoshi9」付属)もかなり小さなものですね。ケーブルも細いですし。
今鳴らしてるプレーヤーはポータブル型。電源系を外に出すのが重要。アンプは手配線で、非常にシンプル(試作機の中身を見せる)。
太いケーブルが音が良いなんて事は無い。数十万円のケーブルなんて(ry
太いケーブルはSPの振動をアンプに伝えてしまう。柔らかいテフロン皮膜のこのケーブルならそんな事無いし、むしろ皮膜無し(売れないけどw)のケーブルならもっと良い。絹みたいので銅線を包むのもいいね。
そんなお話を伺った後、ご自慢のJAZZから新譜CDとして「Minor Blues / Kenny Barron Trio (VHCD-1032)」を聞かせていただきました。
とにかく、ピアノ・ドラムが本物らしく聞えるのが凄いのです。ユニットが上向きな分、高音不足になるかと思いきや、シンバルの余韻も見事に描くのだからfレンジで考えても不満は思い当たりませんでした。
ただ、中音量以上だと簡単に音割れしてしまうのが、唯一の欠点でしょうか。おそらくアンプのパワー不足と思われます。その辺は百も承知なのか、長澤さんはかなりの小音量派。もし私が小音量で音楽を聞きたいならこのシステムは購入の第一候補に並ぶでしょう。
さて、お待ちかねの「GrandSepter GS-1 (ONKYO)」のご登場・・・と思いきや、
確かに大型システムの低音は出てくるものの、どうも調子良くない。
このセプターは、吉井さん(現在タイムドメイン代表)がオンキョーにいた時代のもので、
Yoshi9のような正確な音ではないと、長澤さん。
そこで、長澤さんに「タイムドメイン理論とは、つまりどういうことですか?」と伺ったところ、
「タイムドメインは録音した場所の時間の再現。録音には(f特グラフのような)周波数は入っていなく、時間の変化、つまり空気の振動が入っているんだ。」
と、明快なお答えが返ってきました。
しかし、「周波数は結果的なもの。録音されたときの時間を復元すれば、周波数も結果的に出てくる。」とおっしゃり、
よくある早合点として『タイムドメイン=f特は無視』というのは誤解であることもここから感じました。鶏が先か、卵が先か・・・と言うより、結局は表裏一体のようです。
そして、長澤さんはこう続けます。
「今オーディオは、会社がやってくれない。みんなITに流れちゃう。タイムドメインのスピーカーは、「こういう音も出せるよ」という試作品」
そこには単なる自社の商品としてでなく、f特重視のオーディオ界に新たな提案をしている姿がありました。
中学生の頃から60年間オーディオをやってこられた長澤さんは、あと10年やりたいね、とおっしゃっておられましたが、
10年と言わず、20年、30年と、大好きなJAZZと共にオーディオを歩んでいって欲しい、と伝えたところ笑顔で答えてくださいました。
タイムドメインの技術者である前に、一人のJAZZ好きとして60年オーディオをやってこられた長澤さん。楽しい時間を過ごさせていただき、ありがとうございました。
この卵型SPの理論を生み出したのが「タイムドメイン」で、今回行ったのはその試聴室。
どうせ聴きに行くなら良い音の所がいいなぁ・・・と思い、webサイトを見るものの、大半がデザイン重視のお店でした。(それはそれで良いのですが。)
しかし、一つ目にとまるものが。
「ん?オンキョーのセプターがあるぞ?しかも個人宅?長澤邸?」
これなら良い音で聴けるのではないか、と思い長澤邸にお伺いする事になったのです。
場所は東京の小金井。武蔵小金井駅を降り、商店街を進んで少しの所に長澤邸はありました。
表札が奥にあるので家の場所はやや探しにくいですが、門を勝手に開けて玄関付近のチャイムを鳴らすと、長澤さんが出迎えてくださいました。(要予約、時々電話がつながらない事あり)
通された先が長澤さんのリスニングルームです。こじんまりとしているものの、木材の散音材が一面に敷かれ良好な音響特性を持つ部屋だと分かります。
笑顔で応対してくださる長澤さんのお話を聞くに、長澤さんはタイムドメイン「Yoshi9」の開発者の一人で、現在はミュージックバードのJAZZ部に関わっていらっしゃるとのことでした。
早速、「Yoshi9」で音楽を聞かせていただくと、
とにかく自然な音に驚かされるカノン5D。
変なエッジや高音域のクセは一切無く、ただ芯のある音が存在する感触なのです。
しかし、こういう音はナイーブなもの。音響特性が整った長澤邸でないと単なる無表情な音に聞こえるかもしれません。
さらに、驚いたのが低音。8cmのユニットからバスドラムのエア感が出ているではないですか!!
さて、せっかく開発者がいらっしゃるので、沢山の質問をさせていただきました。
ここでは、そのダイジェストを紹介したいと思います。
Q1.なぜ、この大きさのSPなのですか?
試作過程で高さ50cmのものや、13cm口径のものも作った。
しかし、大口径のものは分割振動してしまい理想的ではなかった。例えば、コオロギの音は、100m先まで聞こえる。理想的には5.5cm口径が良く、ヘッドフォンは理想に近いといえる。ちなみに、「Yoshi9」の「9」は管が9cm内径だから。また、高さがある程度無いと、子供にユニットを弄られてしまうのと、耳の高さにしたかったので、この高さになった。ちなみに、30Hzぐらいまで出るよ。
あと、ユニットをネジで止めしたくなかったのもあり、結果的にユニットは上向きになっているが、これもコンサートホールでブレンドした音を再現するのに貢献している。ユニットが前向いてると色んな弊害がある。
Q2.この箱は共鳴管ですか?材質は?
共鳴管というより、車のマフラーに近いね。ユニットの裏側からの音を如何に消せるかに拘ったつくりで、できるだけ長い方が良いけど、耳の高さにあわせることにした。スピーカーを自作するのであれば、平面バッフルはかなり理想的だが、販売ルートには持ち込めないよね。
材質はアルミ。木では円筒形に出来ないし、試作ではアクリルもあったけど傷がつきやすいし高価だった。アルミ管の内部に吸音材を張るのは至難の業で、大阪の工場で作ってもらっている。
Q3.プレーヤーもアンプ(「Yoshi9」付属)もかなり小さなものですね。ケーブルも細いですし。
今鳴らしてるプレーヤーはポータブル型。電源系を外に出すのが重要。アンプは手配線で、非常にシンプル(試作機の中身を見せる)。
太いケーブルが音が良いなんて事は無い。数十万円のケーブルなんて(ry
太いケーブルはSPの振動をアンプに伝えてしまう。柔らかいテフロン皮膜のこのケーブルならそんな事無いし、むしろ皮膜無し(売れないけどw)のケーブルならもっと良い。絹みたいので銅線を包むのもいいね。
そんなお話を伺った後、ご自慢のJAZZから新譜CDとして「Minor Blues / Kenny Barron Trio (VHCD-1032)」を聞かせていただきました。
とにかく、ピアノ・ドラムが本物らしく聞えるのが凄いのです。ユニットが上向きな分、高音不足になるかと思いきや、シンバルの余韻も見事に描くのだからfレンジで考えても不満は思い当たりませんでした。
ただ、中音量以上だと簡単に音割れしてしまうのが、唯一の欠点でしょうか。おそらくアンプのパワー不足と思われます。その辺は百も承知なのか、長澤さんはかなりの小音量派。もし私が小音量で音楽を聞きたいならこのシステムは購入の第一候補に並ぶでしょう。
さて、お待ちかねの「GrandSepter GS-1 (ONKYO)」のご登場・・・と思いきや、
確かに大型システムの低音は出てくるものの、どうも調子良くない。
このセプターは、吉井さん(現在タイムドメイン代表)がオンキョーにいた時代のもので、
Yoshi9のような正確な音ではないと、長澤さん。
そこで、長澤さんに「タイムドメイン理論とは、つまりどういうことですか?」と伺ったところ、
「タイムドメインは録音した場所の時間の再現。録音には(f特グラフのような)周波数は入っていなく、時間の変化、つまり空気の振動が入っているんだ。」
と、明快なお答えが返ってきました。
しかし、「周波数は結果的なもの。録音されたときの時間を復元すれば、周波数も結果的に出てくる。」とおっしゃり、
よくある早合点として『タイムドメイン=f特は無視』というのは誤解であることもここから感じました。鶏が先か、卵が先か・・・と言うより、結局は表裏一体のようです。
そして、長澤さんはこう続けます。
「今オーディオは、会社がやってくれない。みんなITに流れちゃう。タイムドメインのスピーカーは、「こういう音も出せるよ」という試作品」
そこには単なる自社の商品としてでなく、f特重視のオーディオ界に新たな提案をしている姿がありました。
中学生の頃から60年間オーディオをやってこられた長澤さんは、あと10年やりたいね、とおっしゃっておられましたが、
10年と言わず、20年、30年と、大好きなJAZZと共にオーディオを歩んでいって欲しい、と伝えたところ笑顔で答えてくださいました。
タイムドメインの技術者である前に、一人のJAZZ好きとして60年オーディオをやってこられた長澤さん。楽しい時間を過ごさせていただき、ありがとうございました。
こういったオーディオを大事にしてる方の言葉には重みがありますね。(オーディオだけではないですが)
気軽に音楽を聞ける今ではあるけれど、音というものの深さがしみじみ伝わってきました。
長澤邸は、豪華絢爛というのとは反対方向のオーディオルームですが、人生の深さといったものを感じさせる、心地よい空間でした。