11/30のミューズの方舟コンテストに向けて、
バックロードバスレフ型の「S-043」の実験を続けています。
今回は、空気室のサイズを変えての実験です。
バックロードバスレフ型は、バックロードホーンでいう「空気室」、ダブルバスレフでいう「第一空気室」に相当する容積(つまり、ユニット背面にある箱容量)が存在します。
今回は、そこを変化させることによる、箱の動作の確認をしてみようと思います。
今回用意した空気室容量のサイズは、
2.1L、3.5L、5.7L。
前回までの日記では、空気室容量 3.5Lでの測定値でしたが、
そこから前後に値をふることで、空気室容量の違いによる変化をつかんでいきたいと思います。
ホーンやダクト(開口部塞ぎ)については、前回と同様で、
ホーン長が1.2m、ホーン開口部は50φ(約20cm2)、12mm厚のダクトとします。
さて、まずはダクト直前での周波数特性から。
<2.1L、ダクト直前>
<3.5L、ダクト直前>
<5.7L、ダクト直前>
これは、非常に分かりやすい結果ですね。
空気室容量を大きくすると、100Hzのピークが大きくなっていきます。
一方で、70Hz付近の音圧は空気室容量に依存せず、
むしろ150~200Hz付近に関しては、空気室容量を大きくすると、よりカットオフが鋭くなって(音圧は低下して)いると言えそうです。
これらを説明するには、後述のユニット直前(軸上5cm)の特性と、
インピーダンスの変化を見てみると分かりやすいでしょう。
<2.1L、軸上5cm>
<3.5L、軸上5cm>
<5.7L、軸上5cm>
最も小さい空気室容量(2.1L)では、4つのディップ(70Hz, 140Hz, 240Hz, 380Hz)が確認できるのに対し、
最も大きい空気室容量(5.7L)では、2つのディップ(60Hz, 100Hz)のみとなっています。
これは、インピーダンス特性を見ても同様です。
2.1L(赤線)では、220Hz付近にインピーダンスの凹凸が確認できるのに対し、
5.7L(青線)では、220Hz付近の凹凸が確認できません。
また、100Hz~180Hzにあるインピーダンス特性の凹は、
空気室容量を大きくするに従って、周波数が下にシフトしていることが分かります。
この変化は、どう説明するべきでしょうか?
私自身の経験だと、「ダブルバスレフ」だけでなく、「バックロード」としても説明ができるのです。
まず、「ダブルバスレフ」としての説明です。
第一空気室容量(通常Vc1などと表される)が増大することで、第一ダクト・第二ダクト共に共振周波数が下がる(ユニット直前特性や、インピーダンス特性参照)。
また、空気室容量の増大により、ダクトの共振先鋭度が高く(より自由に共振できる状態)になり、共鳴の効率が向上する。(ダクト直前特性参照)。
次に「バックロード」としての説明です。
空気室容量が減少すると、ホーンとユニットの結合が強くなり、いわゆるホーンのクロス周波数(Fx)が向上する。
その結果、ユニットは200Hz以上の領域でもホーン共鳴の影響を受けるようになる。(ユニット直前特性や、インピーダンス特性参照)
また、クロス周波数の向上により、ホーン開口部は150Hz~500Hzの音圧が向上するとともに、共鳴音によるピーク(250Hz, 380Hz等)が小さくなる(ダクト直前特性参照)。
(なお、共鳴周波数が空気室容量に依存することは、本機(開口部を塞がない状態)や、通常のバックロードホーン(いわゆる長岡式での設計)でも確認される現象です。)
まあ、「長岡式バックロードホーン」自体が「不完全なホーン」として成り立っており、いわゆる「バックロードホーン」として作製したものも、バスレフ的な動作を内包しているといえるでしょう。
そう考えると、今回の「開口部をダクトで塞いだ」という行為でさえ、長岡式バックロードホーンの延長(バスレフ的な動作を含むもの)として解釈できるのは、ごく自然なことなのかもしれません。
もちろん、その逆も然りで、
「ダブルバスレフ」というものも、箱の寸法により定在波が生じ、それが再生音に影響を及ぼすことはよく知られていることです。
その定在波がダクト共振周波数に近いところで発生し、低音増強として働くのなら…と考えると、「バックロードバスレフ」の動作を上手く説明することができるのかもしれません。
なんだか曖昧なところではありますが、ラストに周波数特性(軸上0.5m)です。
下記特性は、開口部を塞ぐダクトが「50mmφ(20cm2)、長さ12mm」のものです。
<2.1L、軸上0.5m>
<3.5L、軸上0.5m>
<5.7L、軸上0.5m>
周波数特性では、違いが分かりにくいのですが、
聴感では大きな差異を感じることができました。
空気室容量を小さく(2.1L)したほうが、低音量感を確保することができました。
一方で、5.7Lとすると、ハイが目立ってしまい全体的にバランスがとれません。
しかし、これはダクトが「50mmφ(20cm2)、長さ12mm」での話。
大き目のダクトとして「100mmφ(78cm2)、長さ12mm」を装着すると、5.7Lでも良好なバランスとなることが確認できました。(周波数特性は割愛)
つまり、
「適度な低域のBH(空気室:大)」×「ダクト断面積:大」=GOOD
「過剰な低域のBH(空気室:小)」×「ダクト断面積:小」=GOOD
となるのです。
ご想像の通り、前者がBH的な味付け、後者がダブルバスレフ的な味付けの音であることも、確認済みです。
まあ、結局は「ダクト」=「中低域量感 調整剤」として考えることができる訳で、
作製するバックロードホーンの低域量感に合わせて、最適なダクトが選択される…という設計手法となりそうです。
逆に言ってしまえば、バックロードホーンの低域があまりにも過剰な場合、ダクトを小さくしても対応できない(もしくは、箱の持ち味が生かせない)場合もあるでしょうし、
バックロードホーンの低域が不足している場合(概して通常の長岡式で設計したBH)に対して、ダクトを装着しても、元のBH箱以上の低音量感は望めないと思われるのです。(中低域付帯音が減少し、相対的に重低音量感が上昇する場合はありそうですが…)
なお、空気室容量が大きくなると、最高域(10kHz以上)の音圧が上昇し、かつ情報量も大幅に増えるように聞こえました。
この辺の変化は、バックロードホーンと共通しているところがあり、過度な背圧は再生音を殺して(特に音の伸びやかさ・質感表現力が激減して)しまうようです。
ここまでの実験で「バックロードバスレフとは何か?」について、ある程度説明ができるようになってきたと思います。
次回は、コンテスト出品用の作品「S-044」の設計&製作に移っていこうと思います。
バックロードバスレフ型の「S-043」の実験を続けています。
今回は、空気室のサイズを変えての実験です。
バックロードバスレフ型は、バックロードホーンでいう「空気室」、ダブルバスレフでいう「第一空気室」に相当する容積(つまり、ユニット背面にある箱容量)が存在します。
今回は、そこを変化させることによる、箱の動作の確認をしてみようと思います。
今回用意した空気室容量のサイズは、
2.1L、3.5L、5.7L。
前回までの日記では、空気室容量 3.5Lでの測定値でしたが、
そこから前後に値をふることで、空気室容量の違いによる変化をつかんでいきたいと思います。
ホーンやダクト(開口部塞ぎ)については、前回と同様で、
ホーン長が1.2m、ホーン開口部は50φ(約20cm2)、12mm厚のダクトとします。
さて、まずはダクト直前での周波数特性から。
<2.1L、ダクト直前>
<3.5L、ダクト直前>
<5.7L、ダクト直前>
これは、非常に分かりやすい結果ですね。
空気室容量を大きくすると、100Hzのピークが大きくなっていきます。
一方で、70Hz付近の音圧は空気室容量に依存せず、
むしろ150~200Hz付近に関しては、空気室容量を大きくすると、よりカットオフが鋭くなって(音圧は低下して)いると言えそうです。
これらを説明するには、後述のユニット直前(軸上5cm)の特性と、
インピーダンスの変化を見てみると分かりやすいでしょう。
<2.1L、軸上5cm>
<3.5L、軸上5cm>
<5.7L、軸上5cm>
最も小さい空気室容量(2.1L)では、4つのディップ(70Hz, 140Hz, 240Hz, 380Hz)が確認できるのに対し、
最も大きい空気室容量(5.7L)では、2つのディップ(60Hz, 100Hz)のみとなっています。
これは、インピーダンス特性を見ても同様です。
2.1L(赤線)では、220Hz付近にインピーダンスの凹凸が確認できるのに対し、
5.7L(青線)では、220Hz付近の凹凸が確認できません。
また、100Hz~180Hzにあるインピーダンス特性の凹は、
空気室容量を大きくするに従って、周波数が下にシフトしていることが分かります。
この変化は、どう説明するべきでしょうか?
私自身の経験だと、「ダブルバスレフ」だけでなく、「バックロード」としても説明ができるのです。
まず、「ダブルバスレフ」としての説明です。
第一空気室容量(通常Vc1などと表される)が増大することで、第一ダクト・第二ダクト共に共振周波数が下がる(ユニット直前特性や、インピーダンス特性参照)。
また、空気室容量の増大により、ダクトの共振先鋭度が高く(より自由に共振できる状態)になり、共鳴の効率が向上する。(ダクト直前特性参照)。
次に「バックロード」としての説明です。
空気室容量が減少すると、ホーンとユニットの結合が強くなり、いわゆるホーンのクロス周波数(Fx)が向上する。
その結果、ユニットは200Hz以上の領域でもホーン共鳴の影響を受けるようになる。(ユニット直前特性や、インピーダンス特性参照)
また、クロス周波数の向上により、ホーン開口部は150Hz~500Hzの音圧が向上するとともに、共鳴音によるピーク(250Hz, 380Hz等)が小さくなる(ダクト直前特性参照)。
(なお、共鳴周波数が空気室容量に依存することは、本機(開口部を塞がない状態)や、通常のバックロードホーン(いわゆる長岡式での設計)でも確認される現象です。)
まあ、「長岡式バックロードホーン」自体が「不完全なホーン」として成り立っており、いわゆる「バックロードホーン」として作製したものも、バスレフ的な動作を内包しているといえるでしょう。
そう考えると、今回の「開口部をダクトで塞いだ」という行為でさえ、長岡式バックロードホーンの延長(バスレフ的な動作を含むもの)として解釈できるのは、ごく自然なことなのかもしれません。
もちろん、その逆も然りで、
「ダブルバスレフ」というものも、箱の寸法により定在波が生じ、それが再生音に影響を及ぼすことはよく知られていることです。
その定在波がダクト共振周波数に近いところで発生し、低音増強として働くのなら…と考えると、「バックロードバスレフ」の動作を上手く説明することができるのかもしれません。
なんだか曖昧なところではありますが、ラストに周波数特性(軸上0.5m)です。
下記特性は、開口部を塞ぐダクトが「50mmφ(20cm2)、長さ12mm」のものです。
<2.1L、軸上0.5m>
<3.5L、軸上0.5m>
<5.7L、軸上0.5m>
周波数特性では、違いが分かりにくいのですが、
聴感では大きな差異を感じることができました。
空気室容量を小さく(2.1L)したほうが、低音量感を確保することができました。
一方で、5.7Lとすると、ハイが目立ってしまい全体的にバランスがとれません。
しかし、これはダクトが「50mmφ(20cm2)、長さ12mm」での話。
大き目のダクトとして「100mmφ(78cm2)、長さ12mm」を装着すると、5.7Lでも良好なバランスとなることが確認できました。(周波数特性は割愛)
つまり、
「適度な低域のBH(空気室:大)」×「ダクト断面積:大」=GOOD
「過剰な低域のBH(空気室:小)」×「ダクト断面積:小」=GOOD
となるのです。
ご想像の通り、前者がBH的な味付け、後者がダブルバスレフ的な味付けの音であることも、確認済みです。
まあ、結局は「ダクト」=「中低域量感 調整剤」として考えることができる訳で、
作製するバックロードホーンの低域量感に合わせて、最適なダクトが選択される…という設計手法となりそうです。
逆に言ってしまえば、バックロードホーンの低域があまりにも過剰な場合、ダクトを小さくしても対応できない(もしくは、箱の持ち味が生かせない)場合もあるでしょうし、
バックロードホーンの低域が不足している場合(概して通常の長岡式で設計したBH)に対して、ダクトを装着しても、元のBH箱以上の低音量感は望めないと思われるのです。(中低域付帯音が減少し、相対的に重低音量感が上昇する場合はありそうですが…)
なお、空気室容量が大きくなると、最高域(10kHz以上)の音圧が上昇し、かつ情報量も大幅に増えるように聞こえました。
この辺の変化は、バックロードホーンと共通しているところがあり、過度な背圧は再生音を殺して(特に音の伸びやかさ・質感表現力が激減して)しまうようです。
ここまでの実験で「バックロードバスレフとは何か?」について、ある程度説明ができるようになってきたと思います。
次回は、コンテスト出品用の作品「S-044」の設計&製作に移っていこうと思います。
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