NOTEBOOK

なにも ほしがならなぁい なにも きたいしなぁい

名探偵モンク7

2011-01-09 | 授業
大好きな作品ほど最終回って言うのは観たくないんだけどなぁ…


『名探偵モンク7』(NHK BS2)


「人気のあるうちにシリーズを完結させたい」と3年前に発表され、最終シーズンを楽しみにしていたけど観れていなかった『名探偵モンク7』が今年の正月の三日に三日連続で放送されていて、録画していた分を今日ようやく見終えました。これまでのシリーズのファンなら泣いて喜ぶような展開がふんだんに用意されていて、ファンサービスに溢れたラストシーズンにふさわしい豪華な内容でした。

途中降板したシャローナはゲスト出演、女運の悪かったストットルマイヤーには良い結婚相手、シリーズ中盤からバカキャラにさせられてしまったディッシャーは思いを寄せていたシャローナと一緒になるなど、ファンの願望のかゆいところに手が届く内容でした。そしてモンクはついに警察への復帰を果たし、シリーズ最大のクリフハンガーになっていた愛妻トゥルーディーの死の真相も解明し何という大団円。


ただ正直トゥルーディーの死の真相にはちょっと釈然としないところはあるけれど(真犯人であるリックオーバーが冷血にも二人の人間を殺してまで守った秘密があれというのは釈然としない。なら彼はむしろ冷血ではないし、なら何故トゥールーディーを殺したのかと。)。でもモンクが12年間開けられなかったトゥルーディーからのクリスマスプレゼントがしっかりと複線になっていたことには驚かされましたが。


それでも最後のモンクことトニー・シャルーブの歌は反則です。あんな歌聴かされたら、みんな全部許せちゃう。というか、あの歌を歌うために主要キャラクターみんなにそれぞれの幸せな結末を用意したんでしょう。シャツのボタンを上まですべて止めないと許せなかったモンクが第一ボタンを開け、ラストではタートルネックまで着られるようになった。ナタリーの娘ジュリーは進学の為家を出て、ディッシャーはシャローナの住むニュージャージーへ。


ファンの願望を叶えた上で登場人物が変わっていくこと、分かれていくことを示して、それを最終回とする。別に登場人物たちは物語上では死なないわけでファンに媚を売るだけならto be continued的な、show must go on的な終わり方でも全然問題ないのに、キャラクターたちに落とし前を付け、一応は広げた風呂敷を畳み切ったスタッフって凄い。それもかなり誠実な方法で。これは本当に凄いと思います。そして最後のトニー・シャルーブの別れの歌。



本当に大好きなドラマだったし、このクロマニヨンズの「スピードとナイフ」的な幕引きは視聴者に、特に熱狂的なファンにとって恥ずかしくなるくらいとても誠実な切り口でした。ラストの歌で語っていることは『新世紀エヴァンゲリオン』劇場版の庵野秀明監督と同じことなんだけど、表現の仕方でこうもいとおしくなるのだろうかと思わされました。本当にこれからも大好きなドラマだと思います。



ただ惜しむらくはこの愛すべき名探偵の活躍は日本では映像作品として商品化されていないことです。同じくらいマイナーな『ライフ・オン・マーズ』でさえDVD-BOXが出てるのに。BD-BOXでとは言いませんのでせめてDVD-BOXで全シーズンリリースしてくれないでしょうか。

LADY~最後の犯罪プロファイル~

2011-01-08 | 休み
もうなんでしょうか…このドラマは…


「LADY~最後の犯罪プロファイル~」(TBS)


馬子にも衣装と言うべきか、借りてきた衣装と言うべきか、台詞がばかばかしい上にまったく馴染んでいない。それも絶望的に。やたら知識をひけらかすだけで、水の上に油が浮いているような分離感。今回は『クリミナルマインド』のインスパイア。BAUじゃなくてCPAだって。馬鹿じゃ中目黒。

こんな台詞を喋っていて恥ずかしくないんだろうかと思うほど、上っ面だけの台詞。観ているこっちが恥ずかしくなるドラマって久しぶりだ。悪い意味で。冒頭の事件だけでもうお腹いっぱい。犯人であるスピードワゴンの人を追い詰めるプロファイリング(笑)。何これ?ですよ。


『クリミナルマインド』の面白さを再確認できる点では良いドラマかと。『クリミナルマインド』の知識の披露って基本的には単なる知識のひけらかしでは無く会話の中できちんと機能しているし、知識も実際の犯罪者や事件の引用であり、だからこそドラマにリアリティを付加してくれている。何より台詞が馴染んでいて嘘くさくない。



それにしても最近の海外ドラマをちょろっとぱくってきて、しかもつまらない日本の刑事ドラマって最悪です。ぱくりだろうがなんだろうが面白ければ問題ないけど、大半がつまらないを通り越して恥ずかしくて苦痛。同枠の前作『SPEC』が挑戦的なドラマだっただけに余計に酷く感じます。本当に酷い。

相棒 「聖戦」

2011-01-08 | 休み
『相棒』の新年スペシャルが放送されましたが、久しぶりに出色の出来の2時間スペシャルだったんじゃないかと思います。序盤までは。主演はいつの間にか渡辺謙の奥さんになっていた元辻仁成な南果歩。大まかな筋は息子をジャンキーによる交通事故で失った母親が加害者に復讐を果たすという王道というかありふれたフィクション。

ありふれたフィクションなんだけど、息子と母親である南果歩と夫がどういう人生を歩んできたのかを台詞ではなくて、演出で丁寧に表現していたのが印象的。そして何より惹かれたのが、息子をひき殺した犯人が幸せな家庭を気づいていると知ってから復讐鬼になっていく母親の狂気。

加害者をストーキングし、自宅に侵入し、盗聴し、復讐の機会をうかがい、挙句の果てにはリモコン爆弾を製造し、加害者を爆殺する。一見すると荒唐無稽な行動だけど、息子の描写を丁寧に描き、母親の感情の変化もきちん追いかけていたので納得し、理解し、咀嚼できる。

南果歩の普通の母親から復讐の鬼と化す演技はさすが。あたかも殺人事件の捜査をゲームでもしているかのような口ぶりで語る杉下警部に「ゲームなんかじゃない!」と凄むシーンや証拠を持って来いと嘯いたり、加害者の妻に詰問されると逆にその妻にだけ聞こえるように「あんたの旦那を殺してすっきりした!」と囁いてみたり分かりやすくも見事な狂人です。


でもでもでもです。終盤がいただけない。せっかくの誠実な描写も南果歩の狂気も『相棒』の限界なのか、地上波の限界なのか、はたまた水谷豊の限界なのか成就されない。ラストの自殺を思いとどまらせたのが加害者の奥さんの妊娠って…そこから始まるいつものミステリー伝統の棒立ち説得。そして南果歩は説得され逮捕される。ラストの刑務所内の描写は良かったけど。「聖戦」っていうサブタイトルも台無しだなぁと。母親の母性からの復讐をきっかけとして狂人になっていく女の聖戦なわけですよ。ならそこには一切の理性も情も差し挟める余地が無いはずなんじゃないかと、その方が『相棒』は確実に凄い次元にいけると思うけど、あんなにグッズを作りまくってるドラマじゃ望むべきでもないでしょうか。



ここ2週間ほど旧作の『相棒』が放送されていましたが、「二人だけの特命係」というサブタイトルがあったころはまだ「土曜ワイド劇場」的な雰囲気を残し、まだまだB級であり、水谷豊のお芝居も杉下右京じゃなくそれ以前の「地方記者立花陽介」や「浅見光彦」といったサスペンスのお芝居でした。A級を志さないからこその良い意味の泥臭さや奇抜さがあったのだと改めて感じさせられました。そう言えば、南果歩も渡辺謙も2時間サスペンスが主戦場の俳優さんだったなと。