-『アルプススタンドのはしの方』(公式)
城定秀夫監督の久々の一般作品、しかも青春映画と言うことで期待値マックスで観てきました。城定監督作品を映画館で初めて観た。
■映画『アルプススタンドのはしの方』予告編
夏の甲子園が中止になった2020年の夏に本作を観ると、ある種のノスタルジーのような、高校野球のブラバンによるJ-POPやテレビ主題歌が演奏されると、嫌々行った高校野球の応援を思い出させられる。それすらも今観ると在りし日の存在として貴重な体験だったと思うようになる。しかも75分。今日日、75分でこんな限定環境で面白い映画監督が居るのか。
本作のパンフレットの城定組の常連、守屋文雄さんによる寄稿文を読むまで、本作の舞台は甲子園の地方予選であると信じて疑わなかった。まさか、甲子園の一回戦だとは思わなかった笑。(だから「ホテルで補習を受けていた」と言う台詞が謎だった。)そう指摘されると、地方の球場にしか見えない。でも守屋さんも書いているが、そんなことはどうでも良い、だんだんどうでも良くなってくる。焦点はそんなに応援したくない人たちが心から応援しようと気持ちが変わるまでのお話だから。それは原作の戯曲を書かれた籔博晶さんがそもそも母校の甲子園での試合に感動して書かれたのだから当然。
ある種、『桐島、部活辞めるってよ』にも似ていると言えば似ている。高校生活の周縁に居る生徒たちが、更に高校生活の花形である野球部の試合が行われる甲子園のスタンドの端っこで繰り広げられる些細な話である。でも登場人物たちにとっては重大な話が繰り広げられる。些細な人たちの些細な話は、当初は遠めの、スタティックなカメラで切り取られる。それが会話の進展、関係性の進展、感情の開放が進むにつれて、どんどんと登場人物たちに寄り添い始め、カメラも段々と感情的な揺れが出てくる。それに伴って、観客も感情移入が進み、後半の彼らの感情の変化に感情を引き寄せられて行く。そして城定監督曰く、「クソリアルな最近の若手監督の映画と演劇の中間」と言う絶妙に戯画的な世界観は『桐島』より安心して観られる。
2日目のアップリンク吉祥寺の城定監督が舞台挨拶をする回で観たが、城定監督は本作を小さな映画だと評していた。アップリンク吉祥寺はミニシアターで小さな劇場であるが、小さな劇場は本作には物足りないと感じた。鳴り続けるブラスバンドの演奏が観客を甲子園のスタンドに誘う映画だからだ。本作は可能な限り大きな画面、優れた音響を持つ劇場で観ると更にスタンドに居る気持ちにさせられて、更に感動が深まるのではないかと感じた。アップリンク吉祥寺は初めて利用したが、少なくとも本作を鑑賞した印象では、俳優が叫んだりすると音がキンキンと高音で鳴ってしまって聞きづらかった。より大きなスクリーン、良い音響環境で今一度観てみたい。ちなみに、7月26日時点だと、ユナイテッドシネマ アクアシティお台場だと上映回によっては、600人収容のスクリーン1で上映されている。アップリンク吉祥寺の4倍のスクリーンサイズだ。ちょっと遠いが行ってみたくはある。
会話の中で登場するのみだったと言うブラスバンド部部長の久住さんを本作で登場させている。高校演劇版や商業演劇版は観ていないのだけれど、久住(黒木ひかり)はブラスバンド部部長、野球部のスター選手、園田と付き合っていて、校内模試でも1位になるなど才色兼備な存在として描写される。そんな完璧超人の久住は劇中で誉めそやされる中で、褒められる自身についても悩みがないわけではないと言うことを吐露する。久住の存在自体は物語の奥行きを産む良い追加要素であると感じたが、この吐露する内容が余りに直接的だったのでちょっと浮いてしまっているように感じた。後半、久住と園田のLINEのやり取りが示されるが、そのやり取りだけでも、必ずしも全てが上手く行っているわけではないと言うことが示せていたのでは?と思ってしまった。
パンフレットは1200円と一般的なパンフレットと比べて高価だが、原作の戯曲が丸々掲載されていてそれを考えれば安価だ。また、守屋さん以外にも制作会社レオーネの久保和明プロデューサーや映画評論家の町山智浩さんにそっくり(且つ出身大学と学部まで同じ)な麻木貴仁さんの本名が浅木大(※ご指摘いただいたので、×麻木→○浅木修正しました。)さんであること、且つ麻木さんのお父様が元ラジオのアナウンサーで本作にも実況アナウンサーとして登場しており、且つ麻木さんと共に本作に出資していると言うことまで知れる、城定監督ファンには堪らない内容になっております。(麻木さんは本作にも演劇部顧問役で出演されている。後姿しか映らないが。)
大きな映画館の大きなスクリーン、良い音響環境でゆったりもう一度観たくなる映画だ。
城定秀夫監督の久々の一般作品、しかも青春映画と言うことで期待値マックスで観てきました。城定監督作品を映画館で初めて観た。
■映画『アルプススタンドのはしの方』予告編
夏の甲子園が中止になった2020年の夏に本作を観ると、ある種のノスタルジーのような、高校野球のブラバンによるJ-POPやテレビ主題歌が演奏されると、嫌々行った高校野球の応援を思い出させられる。それすらも今観ると在りし日の存在として貴重な体験だったと思うようになる。しかも75分。今日日、75分でこんな限定環境で面白い映画監督が居るのか。
本作のパンフレットの城定組の常連、守屋文雄さんによる寄稿文を読むまで、本作の舞台は甲子園の地方予選であると信じて疑わなかった。まさか、甲子園の一回戦だとは思わなかった笑。(だから「ホテルで補習を受けていた」と言う台詞が謎だった。)そう指摘されると、地方の球場にしか見えない。でも守屋さんも書いているが、そんなことはどうでも良い、だんだんどうでも良くなってくる。焦点はそんなに応援したくない人たちが心から応援しようと気持ちが変わるまでのお話だから。それは原作の戯曲を書かれた籔博晶さんがそもそも母校の甲子園での試合に感動して書かれたのだから当然。
ある種、『桐島、部活辞めるってよ』にも似ていると言えば似ている。高校生活の周縁に居る生徒たちが、更に高校生活の花形である野球部の試合が行われる甲子園のスタンドの端っこで繰り広げられる些細な話である。でも登場人物たちにとっては重大な話が繰り広げられる。些細な人たちの些細な話は、当初は遠めの、スタティックなカメラで切り取られる。それが会話の進展、関係性の進展、感情の開放が進むにつれて、どんどんと登場人物たちに寄り添い始め、カメラも段々と感情的な揺れが出てくる。それに伴って、観客も感情移入が進み、後半の彼らの感情の変化に感情を引き寄せられて行く。そして城定監督曰く、「クソリアルな最近の若手監督の映画と演劇の中間」と言う絶妙に戯画的な世界観は『桐島』より安心して観られる。
2日目のアップリンク吉祥寺の城定監督が舞台挨拶をする回で観たが、城定監督は本作を小さな映画だと評していた。アップリンク吉祥寺はミニシアターで小さな劇場であるが、小さな劇場は本作には物足りないと感じた。鳴り続けるブラスバンドの演奏が観客を甲子園のスタンドに誘う映画だからだ。本作は可能な限り大きな画面、優れた音響を持つ劇場で観ると更にスタンドに居る気持ちにさせられて、更に感動が深まるのではないかと感じた。アップリンク吉祥寺は初めて利用したが、少なくとも本作を鑑賞した印象では、俳優が叫んだりすると音がキンキンと高音で鳴ってしまって聞きづらかった。より大きなスクリーン、良い音響環境で今一度観てみたい。ちなみに、7月26日時点だと、ユナイテッドシネマ アクアシティお台場だと上映回によっては、600人収容のスクリーン1で上映されている。アップリンク吉祥寺の4倍のスクリーンサイズだ。ちょっと遠いが行ってみたくはある。
会話の中で登場するのみだったと言うブラスバンド部部長の久住さんを本作で登場させている。高校演劇版や商業演劇版は観ていないのだけれど、久住(黒木ひかり)はブラスバンド部部長、野球部のスター選手、園田と付き合っていて、校内模試でも1位になるなど才色兼備な存在として描写される。そんな完璧超人の久住は劇中で誉めそやされる中で、褒められる自身についても悩みがないわけではないと言うことを吐露する。久住の存在自体は物語の奥行きを産む良い追加要素であると感じたが、この吐露する内容が余りに直接的だったのでちょっと浮いてしまっているように感じた。後半、久住と園田のLINEのやり取りが示されるが、そのやり取りだけでも、必ずしも全てが上手く行っているわけではないと言うことが示せていたのでは?と思ってしまった。
パンフレットは1200円と一般的なパンフレットと比べて高価だが、原作の戯曲が丸々掲載されていてそれを考えれば安価だ。また、守屋さん以外にも制作会社レオーネの久保和明プロデューサーや映画評論家の町山智浩さんにそっくり(且つ出身大学と学部まで同じ)な麻木貴仁さんの本名が浅木大(※ご指摘いただいたので、×麻木→○浅木修正しました。)さんであること、且つ麻木さんのお父様が元ラジオのアナウンサーで本作にも実況アナウンサーとして登場しており、且つ麻木さんと共に本作に出資していると言うことまで知れる、城定監督ファンには堪らない内容になっております。(麻木さんは本作にも演劇部顧問役で出演されている。後姿しか映らないが。)
大きな映画館の大きなスクリーン、良い音響環境でゆったりもう一度観たくなる映画だ。
となっておりますが。正確には、
浅木大(あさき まさる)ですね。
以前に本人が、インスタで告白してました”インスタではあまりハッキリとは書いて来ませんでしたが、わたくし浅木大は本名ですが、#麻木貴仁 (アサキタカジン)名義で色々と出演しております。”