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なにも ほしがならなぁい なにも きたいしなぁい

探偵はBARにいる2 ススキノ大交差点

2013-05-12 | 授業
今の時代にこれ以上無いくらいのまがうことなき東映アクション映画なのに、これじゃない感がぬぐえないのは何故なのだろう。


『探偵はBARにいる2 ススキノ大交差点』
リトルランボーズ


格闘シーンは最近主流のカット割でごまかしたり、スタイリッシュの名の下に切り替わりまくるのではなく、泥臭く結構長めのカットで構成されていて見ごたえ抜群。カーチェイスもいまどき日本映画で観られないくらい泥臭く王道のカーアクション。音楽も衣装も俳優さんたちもスキのない完成度はすんばらしく、画面から漂ってくる東映臭は流石の一言。

前作の登場人物がチョコチョコと登場し、楽しませてくれるし、結末に対してもささやかではあるものの前半で伏線(DV云々やレノン云々)を敷いており良心的。また話の大筋で、女のリベンジという前作の構造をなぞっているという遊び心も。しかもそれをちゃんと反対のラストにしてる。尾野真千子さんに関西弁を喋らせてるのも正解。やっぱり尾野さんは関西弁でこそ本領を発揮するし、しかもちゃんと意味のある関西弁になっている。でも、でも何だろうか、このすっきりしなさは。前作でも感じていたすっきりしない感じは今作でもしっかりと残っている。


日本のドラマでは長いこと自民党政権が続いてきたため、物語上悪の政党、イデオロギーは自民党であり、保守勢力であったのだけれど。体制に楯突くのがドラマの主人公であるとするなら、その楯突く対象は時の権力の隆盛によって変わるべきだとぼくは思うのだけれど、自民党が政権を失い、民主党政権になってからもドラマは自民党、保守勢力を敵として描いてきてる。でも今作では脱原発を志す左派勢力の政治家が悪として描かれているのは挑戦的で面白かった。後援会長を演じる筒井真理子さんの髪型も『逆転裁判』の登場人物並みのインパクト。

でもその政治を描く部分が、正直物語に関係ないから、まったく持って物語上のただの装飾に過ぎなくて、大変上面に描かれる。それだけなら物語上の必要として許せなくもないけれど、探偵を襲う集団の正体が実はその左派政治家の脱原発を応援する人々の自発的な暴力だったと探偵に変える地にされ、泣きそうな表情で吐露したりする。この人たちは探偵を何度も襲い、ボコボコにする。その時の少なくともリーダー(矢島健一さん)は笑いながら探偵を追い詰めていた。これ無意識にやっているならアホだし、意識的やっているとしたらかなり最低だと思う。

そして本シリーズで一番の問題点というか、ぼくがずっと気になっているのがカタルシスの薄さ。ハードボイルドだから物語的にビターで不完全燃焼なのは仕方がない。でも見せ場のアクションシーンで散々ボコボコにやられてきた探偵と高田が逆襲しても、敵は対して報いを受けるわけでもなく次のシーンに移ってしまう。それが積もり積もったままビターなエンディングに突入して終わってしまう。一応最後はコメディシークエンスだけれども。やっぱりシナリオか、アクションシーンどちらかで大きなカタルシスが無いと辛い。しかもサスペンスの構造が『相棒』で頻出するパターンの落ちだし、既視感がひどい。脚本は別の人のほうが良いのでは?大根監督が書いたら、もっと面白いんじゃないのかとか思ってしまうです。


とか言いつつ、今の日本でここまで雰囲気のあるハードボイルドな日本のアクション映画って無い!大泉洋主演だから避けている人も居るけれど、ちゃんと体作っていて、アクションもしていて思った以上にアクションとバイオレンスが激しく1作目では大変驚いたし。松田龍平は『まほろ』の行天と同じ感じ。安藤玉恵さんも麻美ゆまさんが素晴らしすぎた。特に麻美さんはやっぱりAV監督よりも映画・ドラマの監督のほうがエロくとれるなぁ。このシリーズ大変すばらしく、続編ももちろん観たいけれど、欲を言うなら映画も良いけれどテレビシリーズ化して欲しい。テレビで毎週東映アクションドラマが観られていた昔が懐かしいです。