いやーめちゃくちゃ面白かった!!
言われていたように冒頭の「運び屋」家業のシーンは単純に突っ走るだけではなく、いかにして警察を巻くかという点で描かれているので、例えば『トランスポーター』みたいな突っ走りまくりの「運び屋」とは異なる。この1点だけでも新鮮なのに、警察無線を傍受しつつの駆け引きはまるで『メタルギアソリッド』シリーズのようなステルスのような緊張感。そして最後には、抑制を効かせながらも見せ場を作ってくれる。
昼はカースタントマン、夜は運び屋をしているライアン・ゴズリングが夫が刑務所にいる人妻で子持ちのキャリー・マリガンと知り合い、愛情をはぐくんでいく。この出会いの、関係が生まれるシーンをはじめ、演出のこざっぱり感が半端無い。例えば、この出会いのシーンではその前にゴズリングがマリガンの存在を気に留めているシーンをいくつか挟んでからの駐車場で車が故障しているところへゴズリングが歩み寄るシーンから彼女の部屋に荷物を持って運び込む!一線を越える描写もマリガンがゴズリングの手に手を絡ませるシーンという簡潔さ!安い凡百なベッドシーン、キスシーンを見せられるよりよほど説得力があるし、しかも短くなる(この映画はなんと100分!)
マリガンの刑務所にいる夫が戻ってきた時、初めてゴズリングと対面するシーンも直接的には自分の妻に惚れている男へ、そのことに気づき、手を出すんじゃねーよ!とは言わないが、言外でちゃんとそれが表現されている。
大筋としては、陰のある男が人妻に恋をした(しかも純愛!)でも彼女には夫がおり、しかも面倒事に巻き込まれている。それを解決するために立ち上がる、というまぁたまに目にする話だとは思うけど(でも思い出せない。)、それが途中からフックが加わって、ヴァイオレンスの連鎖になっていくのがまた飽きさせなくて素晴らしい。前半の物腰柔らかなゴズリングが超人ハルクの如く次々と悪漢たちを血祭りに上げて、そしてまた超人ハルクの如くその姿を目にした愛する人から遠ざけられるという。
その超人ハルクを見せてしまう前のゴズリングとマリガンのキスシーンがすごく示唆的。エレベーターで悪いやつらからのヒットマンに出くわし、覚悟を決めたゴズリングはマリガンに最期のキスをする。この時、ゴズリングがマリガンを腕で押してエレベーターの置くに立ち位置を変える。エレベーター内のライトはマリガンには当たっているが、ゴズリングは影の中に沈む。二人の今後を示すよう。そしてキスの直後にゴズリングはヒットマンを蹴り殺す。それを目前としたマリガンはその場から去ってしまう。
ラストに至るまでヴァイオレンスは強烈だが、さっぱりとしているので引きずらない。凄いよ、とっても面白かった!ただニーノへの復讐の際に、変装する理由がよく分からなかったです。