NOTEBOOK

なにも ほしがならなぁい なにも きたいしなぁい

カリフォルニア・ドールズ

2012-11-26 | 休み
シアターNのクロージング作品として上映されていたので、前知識がほぼ無い状態で鑑賞。


リトルランボーズ


場末の、美貌の女子プロレスラーのサクセスストーリー。女子プロのドサ周りがロードムービーとして描かれる。無名のタッグはいくら実力と美貌を兼ね備えていても各地の興行師に安く叩かれる。ピーター・フォーク演じるマネージャー、ハリーは悪いやつじゃないが良いやつでもない。興行師にギャラを値切られ、キレてとんでもないことをしでかす。マネージメントする女子プロコンビ、カリフォルニアドールズたちにも理不尽な怒りをぶちまける。しかもドールズの一人、アイリスとは恋人関係ながら浮気までする駄目男。

ハリーを嫌いながらも学歴も経験もこねも無い二人は他に出来ることも見出せず、ドールズの二人は満足な収入も名声も得られないままに、なし崩し的にハリーとドサ周る。アングルを無視しガチンコで試合をしてチャンピオンを倒してしまったり、怪我したり、はたまた真剣にプロレスに打ち込んでいるにもかかわらずだまし討ちで田舎の祭りの余興、泥レスに出されたりもしてしまう。果てにはハリーのせいで、大きな試合に出られなくなり、見かねた恋人のアイリスが文字通り人肌脱ぐことになってしまう。

パンフ代わりとして劇場で販売されていた『ロバート・オルドリッチ読本1』(内容は充実しているけど、モリー役のローレン・ランドンのインタビューなど学生バイトが訳したの?と疑うほどのぎこちない翻訳が残念…)によると、4ヶ月もの特訓の上で撮影に望んだらしく、劇中では吹き替えなしの納得の試合シーンを演じてる。また劇中だまし討ちで泥レスをさせられるシーンがあるけれど、劇中同様に二人の女優さんたちも撮影まで知らされていなかったようである意味ガチだったみたい。ただこのシーン、めちゃくちゃエロい…


なんとかかんとかで、タッグのチャンピオン決定戦へ。後半の怒涛の盛り上がりはすごい。初めてロバート・アルドリッチ映画を観たけれど、なんともすっぱり切るところは切る監督だなぁと。それはよくもあり悪くもあるような気がしないでもないかなぁ。ドールズたちのハリーへの不満が、すぱすぱと切られる演出で彼らの関係性を描いているようでもありつつ、ちょっとさっぱりしすぎじゃないか?とも。



午後のロードショー版ゴーン・ベイビー・ゴーン

2012-11-11 | 休み
『アルゴ』の公開を記念して「午後のロードショー」で『ゴーン・ベイビー・ゴーン』が放送されていました。何故評判の高い『ザ・タウン』ではなく、あまり評判を聞かない『ゴーン・ベイビー・ゴーン』なのかと思いましたが、観ると納得!個人的には『ゴーン・ベイビー・ゴーン』の方が好き!さすが「午後ロー」、ただのB級ボンクラ映画枠じゃない!



ハードボイルドであり(カップルの探偵なのに!)、社会派でありながら、ちゃんとエンターテイメント映画になっているっていうのが凄い。ハリウッドエンディングで決して無いし、後味は必ずしも良くはない(だってGone Baby goneなのだから)けれど、すべてを分かった上ですべてを引き受けようとする主人公、パトリックの姿が格好良すぎる。ある1点のみを用いた凄い正論を畳み掛けるところとか、もうねえ。

一方でなんでそこまでしたのかと思う部分も。他にもやりようがあったのじゃないかと。例えば、あの人はヤクチュウなのだから、薬の件でどうにかしてしまえば良かったんじゃ無いかとも思えるのですが、それじゃ話がってことなんだと。

惜しむらくは初監督作品だからか、『ザ・タウン』で見られた濃厚すぎるボストン描写が弱いところ。ボストンが舞台の本作でももっとボストン、ボストンしてくれていたほうが、この事件がもっと臭い立つようなリアリティが得られていたんじゃないだろうかと夢想しちゃうです。こんな傑作が劇場未公開だなんて。しかもブルーレイ版はこの好機なのに廃盤。まぁ『アルゴ』は日本ではコケたみたいだけれど。

これ、昔だったら「火曜サスペンス」で日本版を作ったんじゃないかと思うほど、日本にも通じる問題意識で描かれているじゃないかと、MXテレビの「昼のサスペンス」枠での「火サス」再放送枠での『名無しの探偵』を観ていたら、そういう思いがこみ上げてきました。志のある脚本家がテレビ化権をを買ってきて、ゴールデンタイムでやってくれよとかまたまた夢想してしまうですよ。

アメリカンスプレンダー

2012-11-11 | 授業

リトルランボーズ


アメリカのアングラコッミク原作者のハービー・ヴィーカーをモデルとした『American Splendor』シリーズと自身の癌闘病を生活を描いた『Our Cancer year』というエッセイコミックを原作とした2003年の映画。アメリカの人気トークショー、「デビット・レターマンショー」にも本人がたびたび出演したほどに著名な作者だからか、エッセイコミックという原作を活かしてか、映画の中にもハービー本人がナレーションを行い、また本人役として登場し、ポール・ジアマッティが主にハービーを演じているが、晩年のハービーはハービー自身が演じている。

太っていて怒っているような鋭い目つき。禿げ上がった頭は近寄りがたい不に気を見せる。子供のころから頭がよく、周りがくだらなく見えたハービーは実際に知識に長けてはいたが、大学を中退し、結局は退役軍人病院のカルテ係という仕事に甘んじている。趣味のレコード集めをしている際に『フリッツ・ザ・キャット』(あの帽子を被った奇妙な猫のコミック)の作者であるコミック作家のロバート・クラムと知り合い、自らの退屈な日常をありのままに描いた大人向けコミックの作成を提案する。

スーパーヒーローではない、アメリカの田舎のさえないおっさんのさえない生活を描いたエッセイコミックが徐々に人気を獲得していく。でも愛する妻は、それも学費を出して大学院にまで出してあげたインテリの妻は彼を捨てて出て行った。コミックは評判になるも、コミックだけでは食べてはいけず、病院のカルテ係を続けている。基本的にはさえない人生。そこにコミック原作者としての成功と新しい出会い、そして癌との闘いが描かれる。普通のさえない人生かと思えば、ハービーの人生は何だかんだで色んなもので満ち満ちている。

『American Splendor』の成功のおかげで、ハービーは人生を開けた。でもハービーは定年までカルテ係だった。ラストはハービー本人の退職パーティーで終わる。年金と映画のギャラが老後の頼りだとハービーは言う。確かに金銭的な大成功はハービーには無かったけれど、いかめしいあービーの顔はとても満ち足りているように見えた。映画は2003年公開だったけれど、その7年後の2010年にハービーは亡くなったそう。確かに退屈で苦難に満ちた人生だったのかもしれないけど、傍目から見たらそれは幸福な人生だったんじゃないと思える。


ちなみにハービーの妻ジョイス役にはジェニファー・アニストンも自ら立候補していたらしいけれど、日本語版のジョイスの吹き替えはジェニファー・アニストンの吹き替えで有名な安達忍が吹き替えを担当している。

特典映像にはカンヌ映画祭に主席したハービーたちの道中が収録されていたけれど、その中にはジャンクロード・ヴァンダムの姿が。2008年に差落ちぶれた俳優となったヴァンダムの日常を描いた『その男、ヴァンダム』が公開されているけれど、まぁ関係ないか。