NOTEBOOK

なにも ほしがならなぁい なにも きたいしなぁい

テレビ東京2年ぶりの深夜映画枠、サタシネ

2011-12-30 | 授業
年末の番組表を見ていると、「サタドラ」枠で放送中だった『Lie To Me』が何故だか年末一挙放送という名の下に繰上げで放送されているのに気がついてから、もしかして土曜深夜の枠に映画枠が戻ってくるのでは?と思っていたら本当に戻ってくるようです。


「サタ☆シネ」(テレビ東京)



前枠の「バリシネ」が海外ドラマ枠となってから早2年。久方振りにテレビ東京の深夜映画枠が戻ってくるようです。しかも「バリシネ」が比較的クズ映画中心だったのに比べて、「サタシネ」の1月、2月のラインナップを見る限りどうやら単館系など”ちょっといい映画”ばかりのラインナップです。


・1月
1月7日(土)『Vフォ-・ヴェンデッタ』
1月14日(土)『狩人と犬、最後の旅』
1月21日(土)『あるスキャンダルの覚え書き』

・2月
2月4日(土)『ミスティック・リバー』
2月11日(土)『ラースと、その彼女』
2月18日(土)『スカイキャプテン ワールド・オブ・トゥモロー』


上記のラインナップを観ると、頑張ったなぁというすごく良いラインナップ。というか、ゴールデンでも良さそうな豪華なラインナップですなぁ。

深夜食堂2・・・

2011-12-30 | 授業
第一話である「第十一話 再び赤いウインナー」のクオリティに心動かされ、すっかり圧倒されたのですが…


『深夜食堂』(公式)


多くの回で前作で良かった部分、つまりは丁寧に作った”べた”が、微妙な”べた”に、それも90年代から2000年代中盤にかけて日本映画を覆っていた青臭い中二病的な空気が全体を覆っています。まじめで、堅物で、そしてつまらない。特に小林聖太郎監督の回は。

放送開始前、『深夜食堂2』をして、中心となっている松岡鍵司監督は「『フレンチコネクション』における『フレンチコネクション2』のような作品にしたい」といった趣旨のことをおっしゃっていました。確かに第1話はその片鱗を見せましたが、多くの回でその目論見は外れていました。

”べた”が『深夜食堂』の良いところだったのに、若手監督にありがちなふわふわした脚本や感情移入のしづらいキャラクター。そして鈴木常吉サウンドからのフェードアウト。特にボーカル入りの使用頻度は回を追うごとに減り、福原希己江へと移行してゆきました。それが直ちに悪いとは思いませんが。



何というか、ガンダムの変わりにコレジャナイロボかと思ったけど、ガンダムAGEだったみたいな。そんな感じでした。



カーネーション

2011-12-29 | 授業

『おひさま』を基本的には大変楽しんでいたはずだったのですが…


『カーネーション』(NHKオンライン)
リトルランボーズ


戦前、戦中、戦後とを描くということで、どうしても直前に放送されていた『おひさま』と『カーネーション』を比較せざるを得ないです。


登場人物のキャラクターの複雑さと言う点でも『カーネーション』は非常に優れています。主人公の糸子は真っ直ぐな情熱や素直さを持ち合わせているだけではなく、情熱の裏返しでもある図太さや傲慢さも隠しません。父親の善作は暴力もいとわない自分勝手で奔放な嫌な父親である一方で、周囲への思いやりも玉に見せる憎めないキャラクターでした。死の直前の温泉へ行くことを認めてくれ、その上日本酒まで持たせてくれた糸子への礼を切り出すシーンはその複雑さを端的に示していました。

良いことばかりではありません。紳士服店ロイヤルでの糸子の働きぶりに惚れて、入り婿にまでなり糸子の親戚などの外堀を口説き落としてまで糸子と結婚した糸子の夫、勝は基本的には温厚で、大人しく、優しい夫として描かれます。そんな夫が出征した後、優しい夫に女の影があったことが明らかになってしまうのです。必ずしも夫は糸子への愛に忠実だった人物としては描かれていません。気の良い近所の髪結いのおばさんは息子の自殺未遂の間接的な原因を糸子が作ってから、鬼と化し糸子に辛く当たります。また糸子もその仕打ちを受け入れるでもなく、冷たく突き放すのです。

またキャラクターの掘り下げ方は主要登場人物に限りません。ダンスホールの踊り子は何の考えも持たない空虚な美人かと思いきや、その実は自分の職業に誇りを持てずコンプレックスにさいなまれていました。太平洋戦争に突入した後、登場した国防婦人会のリーダー格のおばさんなどはことあるごとに小原洋装店を目の敵にするある種の悪役的な存在ですが、そのおばさんの子供もまた戦地に赴き戦死してしまいます。いつもは強気なおばさんも涙ながらに葬式行列を出していました。要するに『カーネーション』の登場人物たちは基本的に単純なキャラクターではなく、極めて重層的なのです。だからこそ実在感が感じられ、まるで生きている人たちの日常を覗くかのような没入間です。


キャラクター造詣もさることながら、物語の展開のさせ方、見せ方が極めて秀逸です。前述の夫、勝の出征のエピソードがその一例です。夫の出征はとても悲しい話のはずですが、出征の直後糸子は勝の浮気疑惑の物証である料亭の女性とのツーショット写真を見て受けてしまいます。怒り心頭に発した糸子は夫の出征という感傷から一転して、夫の浮気に怒り狂います。シリアスで悲しい場面だったのが、一転してコメディに変わってしまうのです。『カーネーション』では往々にしてペーソスとユーモアが混在します。どちらか一方にはなりきらないのです。現実の生活では必ずしも悲しみやおかしさ一辺倒なんてことは無いはずです。それを『カーネーション』ではきちんと表現しています。

またある種の残酷さを描くことをためらいません。小原家の生活が長女である糸子の腕一つにかかると言う流れの中では、頼るべき寄る辺として存在していた大金持ちの神戸の祖父母の老いが描かれます。体は弱り、精神も衰弱してしまった祖父母はそれまで糸子が最後の頼みとしてきた保護者としての面影はなくなっていました。そこで糸子はもう誰も自分を守ってはくれないことを悟り、自分の力で家族を守っていくことへの決意を新たにするのです。両親や祖父母の老いとかを容赦なく描く。そここそが『カーネーション』の凄さの好例と思います。(しかもこのエピソードでは祖父母の表情を一切見せないと言う演出がなされていました!)




もう何と言うか、『カーネーション』と比べると『おひさま』はおこちゃまだなぁと思ってしまうのです。あんなに好きだったのにです。例えば『おひさま』では戦争の悲惨さを陽子の兄、春樹と陽子の友人、真知子との果たされない悲恋のみにアウトソーシングされた格好になっていました。しかも『君の名は』のパロディという軽さ。付け加えるなら、もう一人の陽子の友人、育子を瓦礫の中から助けてくれた上原という医学生の死に外部化されていました。そして戦争という物語上の推進力を失った『おひさま』はグダグダな終盤に突っ走ってしまいました。

『カーネーション』の前半が終了しましたが、後半一体どうなってしまうんでしょうか。ベタをやるはずのNHKの連続テレビ小説朝ドラなのに、こんなに複雑な個性を持った魅力的な登場人物にあふれたドラマって本当に凄い!何なんだろうか、これは。

警視庁失踪人捜査課SP

2011-12-27 | 授業
「警視庁失踪人捜査課スペシャル」(ABC公式)

前作というか、連続ドラマ時の「警視庁失踪人捜査課」の印象は「オープニングは格好良いが、ドラマ部分の映像は凡庸で、脚本は丁寧ながらも地味で面白みに欠ける。」というものでした。

ですが今回、寒竹ゆりというミュージックビデオ畑出身の女性が演出を手がけており、連続ドラマ版とは異なり連続ドラマの版のOPの同様にフォーカスをきつくした海外ドラマに良く観られる画作りに変更されていました。『モテキ』の大根仁監督も述べていましたが、フォーカスをきつくするだけで大概”きれいな”映像になります。しかも焦点が登場人物のみに合うので画的に集中しやすく、映像としての理解もし易くなるのだと思います。そのため大根監督以外にも日本のテレビドラマで海外のテレビドラマのように強いフォーカスを用いた映像表現が増えつつあります。


脱線しますが、漫画に置いても線のタッチや質感が違う方が画として強く見えます。そのため安彦良和のようなすべて自分で描けてしまう、書いてしまう漫画家の絵は背景も登場人物も描線がほぼ同じなため、画として観辛いことになっています。画はものすごく上手いのに背景も登場人物も安彦良和節の有機的な線のため、両方が同一の存在として見えてしまうのです。


ありふれた失踪と思われた失踪事件と失踪人捜査課室長の失踪が実は何者かによる連続拉致事件だったという筋でした。その実は息子を死に追いやられた父親の復讐譚。ありふれてはいるけれど、この話の味噌は死に追いやられた息子というのが遺書を残してその後遺体が発見されていないという点。要は失踪しているという設定。だからこそ息子の失踪が最後の方で作用してくる。ただちょっと扱われ方が遅くて、死が明らかになるのも急だった気もするけど。