死んだ父親の夢を見た。
どうも場所は山形らしい、月山とか、そのあたりのような感じだ。
父が運転をしていて、俺が助手席に乗っている。見ると50歳くらいの印象だ。俺はと言えば、多分今の年齢だろう。
どこから車に乗っていたのかは良くわからないのだが、湖にかかる高速道路を通っているようだった。
何となく方向は、日本海側から太平洋側に進んでいる印象である。
その湖にかかる道路というのが、沈下橋のように道路が水面下に沈んでいる。一見湖が広がっているのだが、その下にはまっすぐの高速道路が走っている。
そんなところを車で飛ばしているのだ。
なんだかやたらとスピードが出るらしく、父はぽつりとこう言った。
「出るなぁ」
ふと、スピードメータを見ると、180キロを超えている。
(いくらなんでも出し過ぎなんじゃねぇか?)
と思いながら前方を見ると、遙か彼方で道路が水面から出て、上り坂になっている。車は滑るように水面を進んでいるようだ。
「ハイドロプレーニング現象起こしてるね」と言うと、
「うん」とも「うう」ともつかないような肯定の返事。このスピードで道路から外れちゃったら大変なことになるなぁと思いながらも、特にそのような心配は口にせずに乗っていた。
なんというか、父親といる安心感みたいなものがあったのだ。
徐々にスピードを緩め、水面から出た道路に少しずつ近づいていくと、前を走っていた車が、上り坂をジャンプした。まるで水面から飛び上がった魚みたいだった。
さらに近づくと、左側に雪の壁があって、それが道路に大きくせり出している。前を走っていた二台目が、雪の壁を避けようと右に寄りながら上り坂をジャンプした。
(なるほど、それで魚のように見えたわけだ、水面からジャンプする魚の体には、ひねりが加わっている)
と思ったら、その車は、上り坂の頂上あたりに落下し、大破。
相当にスピードを緩めた俺の乗った車は、ソロソロと雪の壁と大破した車を避け、対向車を気にしながら上り坂の頂上を越えた。
大破した車と運転者のことは全く気にしなかった。
なおも高速道路は続くのだが、程なくして急に山道になった。軽く右に曲がり、Uターンするような急カーブが待ちかまえていた。そこでも二台事故っていた。それを慎重に避け、カーブの曲がりの先にある待避所のようなところに一旦車を止める。
そこではもう事故処理が始まっていて、警官が交通整理をしている。その指示に従い、待避所から出た。道は先ほどとはうってかわって狭くなっている。
このあたりで、蔵王のスキー場に関する話をしたような気がするが定かではない。
しばらく進むと右側に駅があった。なにやら火花が散っている。どうも工事中のようだ。手前にちょっとした交通整理の人がいて「立ち入り禁止ですよ」だったか「入っちゃダメですよ」だか言っていたような気がする。
そんな駅を通り過ぎて進んでいると、いつの間にか俺は一人で歩いていた。車も父親もいない。後ろから来るんだろうなぁと思って、とぼとぼと歩く。
かなり歩いた頃、右側にちょっとした建物があった。どうもバス停のようで、ベンチのある待合所と、それにつながって土産物屋がある。店の人は誰もいない。和紙で出来たお面のようなレリーフのような訳の分からない工芸品がほこりをかぶって並んでいる。
振り返ってバス停の方を見るが父はまだ来ない。
そこで目が覚めた。
実に久しぶりに父親の夢を見たような気がする。なんの警告だろう?
ふと、そろそろ命日だったことに気づく。4/15日。
初七日を終えて盛岡に帰ってきた日は、桜が満開だった。
でも、そういわれれば、そんな感じだな。水面疾走は大友っぽいし、工事中の駅とか、訳の分からない土産物のあるバス停とかは、つげっぽいし。