『初代 竹内洋岳に聞く』聞き書き/塩野米松(アートオフィスプリズム)
5月26日ついに完全制覇してしまった。天候さえよければ、ほかに何の障害もなさそうだったから、やり遂げるとは思っていた。去年のチョーオユーに続き、連続して頂上をおとしいれた。いやあ本当にめでたい。ただ竹内洋岳氏の公式ブログによると、登頂後C4跡地でビバークとなっていて、ちょっと心配させられた。現時点で無事C1まで下ったようだ。
今回の遠征にはNHKが取材班を編成して同行していたから、近々NHKスペシャルで放送ということになるのだろう。今から放送が待ち遠しい。放送したら録画して完全保存版だね。
ところで、この竹内洋岳氏を採り上げた、2010年3月20日発行の544ページもある本をつい先ほど読み終えた。わくわくドキドキで読めたのだが、さすがにこのボリュームだと、いっき読みとはいかず、ちょっとずつ読んで、今頃の読了となってしまった。
この本は聞き書きだから、いわば雑誌のインタビュー記事のような体裁になっている。話言葉だからくだけた感じで、より身近に竹内氏の人となりが伝わってくる。
正直いって最初のほうの少年時代の記述はつまらない。たんに生い立ちがわかるというだけで、山との関連性はほとんどない。やはり実際に山に登り始めるあたりから、こちらの血もたぎってくる。とくにガッシャーブルムⅡの雪崩遭難事故については、克明に書かれていて、まるで現場に居合わせたような臨場感を味わえる。事故後の顛末も詳細だから、何が起きていたのかが非常によくわかる。
BS朝日の番組でも登場していた友人のラルフやガリンダもこの本に登場してくる。直近では、2009年の12座目のローツェで一緒に登っている。このときにラルフは14座をドイツ人で初めて完登。ガリンダは昨年K2に登り、14座完登を達成している。
最後にこの本でへえと思わせてくれた点をひとつ。視点を変えて、スポンサーからの竹内洋岳像を描いていることだ。石井スポーツ、カシオ、ゴアテックス、東京映像社のスタッフがそれぞれの目から見た竹内像を語っていて、竹内本人が語る自己像とは違った面が見えてくる。対比するとおもしろい。
蛇足ながら、巨大な目標を達成してしまった竹内氏は、今後いったい何を始めるのだろう? 次なるターゲットは? 興味津々だ。今後の動向を注目していきたい。
参考
登山家・竹内洋岳 公式ブログhttp://weblog.hochi.co.jp/takeuchi/
竹内洋岳の友人が挑む「K2」の頂~ナショジオ2012年4月号http://blog.goo.ne.jp/aim1122/d/20120421
初代 竹内洋岳に聞く (ちくま文庫) | |
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