新松田へ行った。天気が良く、散歩がてら。いつも散歩がてら、火急の用なんてそうそうあるわけじゃない。自宅から小田急線で一本なので遠さは感じない。
駅で降りて、ぶらぶらと歩いた。
この街をこうして歩いたことは記憶には無かった。かつて丹沢に登山したときに下車くらいはしたかもしれない。でも記憶では、いつも車での通過くらいで、それも東名を走る時にインター出入口として知っているくらい。高速を行く時に右手の山の中腹に丸い、円筒形の少し変わった建物がいつも目に入り、印象に残っていて、そのあたりかなと想像していたら、果たしてそうだった。
店が何軒か並ぶ通りを歩いていて右手を見るとそれほど高くはない山が見え、冬の枯れた木々で淡く覆われていた。こういう景色もまたいいなと眺めていたら、そこにその建物がポツッと、しかし目立って見え、あ、やはりここだったのだな、といったところだった。
ここは、JR御殿場線の松田駅も隣接している。ふたつも駅がある。丹沢山も近く、そちら方面のレトロバスも客待ちで停車していた。
歩いていると、小さな看板が偶然目に入り、そこにこれまた小さく酒蔵と書いてあったので、行ってみたくなってそこの細い路地を入った。奥へ進むと直ぐに酒蔵は見つかった。中澤酒造という酒蔵だった。下調べなどはしていない。大きな酒蔵ではなさそうだったけれど、木造の、いかにもこの土地に古くからあるといった造りの建物だった。酒は好きな方なので何かウキウキした。
ここで小瓶の酒を記念にと買い、その時に酒蔵の人と少し話をした。小さな街のようだったが話だと、季節にはお祭りもあり、訪れる人々でいっぱいになるとのことで、以前やはりこの近くを訪れた時に、花、樹木目当ての客が多かったことを思い出したりした。
お祭りのパンフレットをもらった。今はロウバイの祭りをやっている。2月に入って少しすると桜まつり。これは3月の上旬くらいまで。桜まつりの方は場所は?と思ってそのパンフレットに書かれた地図を見ると、松田山ハーブガーデンとなっていて、先ほど見た円筒形の建物のある場所だった。建物はハーブ館となっていた。以前から車で通るたびに見ていたその辺りがハーブ園だったことを初めて知った。歩いても30分くらいで登れますよ、とのことだった。ハーブは嫌いでなく、パクチー、バジルなどよく食べる。
パンフレットの桜の写真に目を落とすと、赤みが強そうに見えた。もしかしたら、
「河津桜?」
「そうです!同じ種類のもの」
書かれた見頃の時期が普通より早いので、どうしたのかな、もしかしたら、と思ったのだが、やはりそうだった。
建物の外の庭の木の長椅子に腰掛け、早くも小瓶の栓を開け、味わいつつ半分飲んだ。美味かった。銘柄は「松みどり」。 残りは、後で家で飲む用、として。
先週末、新松田の松田山 西平畑公園へ河津桜を見に行った。
屋台のあるテントの中で日本酒を飲む。テントの重しがカッコいい。
河津桜を観たことはあるが、山の斜面に菜の花と共にこんなに咲いているところは知らない。新松田の街が見下ろせる。
山道を歩きながら。
店棚で柑橘類を売っていて土産に買った。本ゆず ハルミ ライム
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今。豆腐屋が外を通って行く。例のピープーという笛の音で分かる。あれがラーメン屋のはずがない。
駅が二つ三つ隣の街から遠征してきているそうだ。もうずっと以前から。いつも昼間、それも雨や曇った日が多い。時として雷が鳴り始めた頃にピープーとのんびりした音でやっていて、雷嫌いの僕には、彼は勇者として通っている。
早朝にその日の豆腐を作り終え、昼間、売りに出ているのだろう。
以前、遠野へ旅した時、朝早く起きて街を歩き、一軒だけ開いている店を見つけ、それが豆腐屋で、美味しそうなので買って食べた事がある。あれは本当に旨かった。ほんのり甘い大豆の香り。
豆腐屋の豆腐は昼頃行くと、もう売り切れていたりする。そういう自分は主にスーパーで、夕方などにパック入りのを買うことが多い。パック入りのものしか知らないと言っていい。夜に仕事帰りの男が一丁買ってササッと帰っているのを見かけることもある。自分も似たようなものだ。夜遅くても買えるからそれもまた好い。酒の肴に。あと厚揚げ、はんぺんなども。
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( sea-chanはdrawingのシリーズとして10枚くらいこれから描こうと考えています。よろしくお願いします。)
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