町家のツバメ

 今の季節、京都の小路を歩くと、町家の軒下でツバメが巣作りしているのが見える。巣の中の雛たちが大きくなってくると、巣の下にたくさん糞が落ちるようなのだけれど、軒下に巣のある家では、ちょうど糞の落ちるあたりの地面に段ボール紙や新聞紙を敷くことで済ませていて、そこに、住んでいる人の寛容さが感じられるような気がする。
 お向かいの家にも、ツバメが巣を作っている。外からは少し見えにくくなった家の壁の雨の当たらないところに、家の人が板の台をつけてあげているのである。
 お向かいの壁にはもうひとつ板の台があって、そこにはかつて巣があったことがわかるような泥がところどころにこびりついている。何年も前は、毎年その場所で雛を育てていたのだが、ある年、巣がカラスに襲われたそうである。その後、五、六年の間、ツバメは戻ってこなかった。そこで、家の人が、カラスから見つかりにくい今の場所に、新たに巣の台を設けたのである。
 巣の中の雛を見たくて近寄ったら、一度親鳥が驚いて飛んでいってしまったので、怖がらせてはいけないと思って、なかなか近づくことが出来ない。親鳥がいないときにそっと覗いてみるのだけれど、そういうときには、雛はじっと隠れているのか、ちっとも見えないのである。親が餌の虫を捕らえて帰ってくると、急に騒がしいツバメ鳴き声が聞こえてくる。みゆちゃんは窓辺に座り、にゃわわあ、にゃわわあ、と鳥に呼びかけるように鳴く。
 それがいつのまにか、その雛の声も聞こえなくなってしまったから、もうすっかり巣立ってしまったのかもしれない。


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