昔はカメラを持って都内を散策していると、偶然に出会う車両たちも案外多かったことに気づいている。もちろん、カメラ持参で動くからには目的ははっきりしていたが、それに付随する「おまけ」のような被写体も、これだけの時間とともに熟成され想いが募り懐かしくさえ思えるようになる。そんな画像から、今回は都内を走る「クモニ13」の掲載。
当時はまだ東海道ブルトレも、EF65P型けん引の時代。親父の持っていた一眼レフにネガカラーを入れて、ダイヤ改正後の都内を廻っていたようだ。鉄道写真も、雑誌に載っているものを見よう見まねでカメラを構え、友人にアドバイスを受けながらシャッターを切っていた。どこにピントを合わせるのか?、動く被写体にはどのくらいのシャッタースピードが必要なのか?、その時の絞り値は?と、今では意識から遠のいてしまった撮影技法が、アントンKに次々に襲いかかったものだ。撮影した直後に画像の確認など出来ないから、きっちりフィルムを撮り切り、街のカメラ店に現像を頼み上がってくるまでは、期待と不安の日々を過ごしたもの。今のこの時短時代にはもう考えられないのかな?そう思うと時間がゆっくりだったその頃の方が、アントンKには合っていた気がする。
釣り掛け音を響かせ姿を現わした荷物電車クモニ13。もちろん単行だ。浜松町4番線は、京浜東北南行のホームだが、いつ出会えるのかよく分からず、分からず仕舞いで消えてしまった電車の一つになっている。背景に写っている0系新幹線も懐かしいが、ホームで新聞紙を広げている乗客、今にしてみれば簡素なホーム、多々お世話になった駅長事務室など、アントンKには昭和時代満載の画像となっている。
1975-03 クモニ13013 京浜東北線:浜松町にて