杏子の映画生活

新作映画からTV放送まで、記憶の引き出しへようこそ☆ネタバレ注意。趣旨に合ったTB可、コメント不可。

コクリコ坂から

2012年08月11日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2011年7月16日公開 91分

東京オリンピック開催前の1963年の横浜。高校二年生の松崎海(声:長澤まさみ)は、父を海で亡くし、大学助教授(英米文学者)の母・良子(風吹ジュン)の留守を助け、二女の空や陸、祖母や下宿人も含めて7人の大世帯を切り盛りしていた。その頃海の通う高校では、取り壊しが予定されているカルチェラタン(部室棟)を存続させようと、生徒会長の水沼や新聞部の部長・風間俊(岡田准一)が中心となり騒いでいた。初めはこの騒動を冷ややかに見つめていた海だが、次第に彼らの活動を助けるようになる。カルチェラタンの良さを他の生徒達に伝えるための大掃除を提案して女生徒を巻き込み、やがて存続賛成派が多数を占めるようになる中で、海と俊の仲も接近していくが・・・。

宮崎吾朗が監督を務めたスタジオジブリ作品で、原作は、少女漫画だそう。
率直に言えば、私の好きなジブリ作品の系統ではないです。レンタルで十分

1960年代の青春学園物語とあって、ノスタルジックな味わいを感じさせます。
横浜が舞台だけれど、ヒロインの住む町の設定はどこか田舎の港町を思わせる雰囲気が漂っています。様々な船が行き交う海から人と車でごった返す賑やかな港近くの商店街を抜け、無舗装の坂道の両脇に並ぶ家々の先にある坂の上の洋館が海の住む家です。彼女が毎日旗を上げるのは、行方不明になった父への合図であり、叶わぬと知りながらも父の帰宅を願う現れです。

海はメルと呼ばれているのですが、その理由は映画では明かされていません。原作では、海のフランス語「ラ・メール」が縮まってメルと呼ばれているのね。
海と俊は互いに惹かれあうけれど、俊の出自のため、叶わぬ悲恋の様を呈します。
ところが、その後にどんでん返しが用意されていました。
まだ戦後を引きずる時代だからこそ納得できる設定です。

映画は二人のまっすぐな純愛模様と、カルチェラタン存続運動の顛末の二つを軸に進んでいきます。
この部室棟もなかなか趣があり、学生運動盛んな頃のデカダンでバンカラな雰囲気にも魅了されます。理事長の所に直談判に出かけた際の東京の街並みなども『三丁目の夕日』ぽくてわくわくしました。古き良き昭和の香り、高度成長に向かう元気な日本を感じさせるからかしら?

ただ、現代事情とはかけ離れた彼らの青春にどっぷり共感できたかというと、ちょっと違う。気になったのは、海は家事を進んでしているのに、妹の方は言われなければ全く手伝わないこと。それってありなの?海と俊がいわゆる「良い子」過ぎるのも逆に噓くさく見えてしまうんだな。どうも他人事で、実感の湧かない絵空事のようなよそよそしさを感じてしまうのは、当時の若者が持っていた清純でまっすぐな気持ちを今の自分が失くしてしまっているからなのかもしれませんが。 


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