杏子の映画生活

新作映画からTV放送まで、記憶の引き出しへようこそ☆ネタバレ注意。趣旨に合ったTB可、コメント不可。

ぼくらの家路

2016年06月05日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2015年9月19日公開 ドイツ 103分

10歳のジャック(イヴォ・ピッツカー)は、6歳になる弟マヌエル(ゲオルク・アルムス)の世話で毎日大忙し。シングルマザーの母は優しいが、まだ若いため、恋人との時間や夜遊びを優先してしまう。そんなある日、とある事件をきっかけに、ジャックは施設に預けられることに。友達もできず、施設に馴染めないジャック。待ちに待った夏休みがようやく訪れるが、母から“迎えは3日後になる”との電話が。がっかりしたジャックは、施設を飛び出してしまう。夜通し歩き続けて家に着いたものの、母は不在でカギもない。携帯電話は留守番メッセージばかり。仕方なく母に伝言を残して、預け先にマヌエルを迎えに行くジャック。仕事場、ナイトクラブ、昔の恋人の事務所まで、母を捜してベルリン中を駆け回る兄第。小さな肩を寄せ合う2人は、再び母の腕の中に帰ることが出来るのか……?(Movie Walkerより)


10歳と6歳の幼い兄弟が母を捜す3日間を描き、2014年の第64回ベルリン国際映画祭コンペティション部門に出品された作品。ジャックを演じた子は撮影当時11歳でこれが俳優デビュー作とは思えない確かな演技で魅せます。

冒頭で描かれるのは母の留守中に弟の面倒を見るジャックの日常。(ちょっと邦画の「誰も知らない」を連想してしまいます。)でも、お風呂の温度を間違えて弟が火傷を負ったため、家庭の事情がばれて児童保護局?の指導が入り、母と引き離されて施設に入れられてしまうの。まだ幼い弟には母親が必要だろうと見なされたようですが、そもそも母が留守がちだからこそ起きてしまった事故なのに、ジャックがいなくなったらマヌエルの世話は誰がするんじゃ!って話ですが

施設ではいじめっ子に目を付けられてしまいます。母と会える夏休みの初日。いそいそと帰り支度をするジャックを待っていたのは迎えが遅れるという母からの電話気晴らしに出た池で出くわしたいじめっ子もどうやらジャックと同じく親が来ない様子。親近感から気を許したのも束の間、彼はジャックを水中に押し込みあわや溺れかけます。更に同室の子が貸してくれた双眼鏡を池に投げ込まれ、我慢の限界に達したジャックは木の枝で彼を殴ってしまうの。恐くなったジャックは母のところに帰ろうとします。(この展開はあらすじ紹介では省かれていたのね)

ところが、夜通し歩いて辿り着いた家には母の姿はなく、心当たりを訪ねても誰も行き先を知りません。弟も母の友人のところに預けられたまま迎えに来ていない様子。とりあえず弟を迎えに行ったジャックは二人で母を捜そうと決意します。

彼らが訪ね歩く母の友人たちは、幼い兄弟の状況に無関心。お金も食べ物も寝るところもない二人ですが、トイレの手洗い水で体を拭き、食べ物は盗み、他人の車の中で寝てと、幼いながらに知恵を絞るジャックの姿が何とも健気。
最後に訪ねた母の恋人は二人に食事を与えてはくれますが、連絡が付かないことに業を煮やし、兄弟を警察に連れて行こうとします。(まぁ一番まともな対応をしたわけですが、ジャックが望んでいたことではないのよね

ようやく会えた母は、そんな兄弟の苦労には無頓着で、いっそ無邪気なほどに新しい恋人の話をします。毎日残していた伝言メモの存在さえ気付かない母に、ジャックは・・・・。
翌朝、眠っている母を起こさずに弟を連れてジャックが向かった先は施設です。彼は母と離れ弟と一緒に施設で暮らすという選択をしたということですよね?

弟のマヌエルが天使のように愛らしく、兄に連れまわされても不平の一つも言わずついていくの靴紐の結び方を教えてもらって一生懸命練習する姿のいじらしいことったらありません

子は親を選べない。彼らの母は決して子供たちを愛していないわけではないけれど、彼女は母である前に女であることを無意識に選んでいます。(おそらくジャックとマヌエルの父親は別人なのではないかしら?)そしてジャックは10歳で自らの人生を選択したわけです守るべき存在(弟)を得たジャックは、きっと施設で逞しく生きて行けると思うわ

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