杏子の映画生活

新作映画からTV放送まで、記憶の引き出しへようこそ☆ネタバレ注意。趣旨に合ったTB可、コメント不可。

64 ロクヨン 後編

2016年06月15日 | 映画(劇場鑑賞・新作、試写会)
2016年6月11日公開 119分

昭和最後の年、昭和64年に起きた少女誘拐殺人事件は刑事部で“ロクヨン”と呼ばれ、被害者が死亡し未解決のままという県警最大の汚点となっている。その事件から14年が過ぎ、時効が近づいていた平成14年、“ロクヨン” の捜査にもあたった敏腕刑事・三上義信(佐藤浩市)は、警務部広報室に広報官として異動する。記者クラブとの確執、キャリア上司との闘い、刑事部と警務部の対立のさなか、ロクヨンをなぞるような新たな誘拐事件が発生する。そして三上の一人娘の行方は……。(Movie Walkerより)

横山秀夫の小説「64(ロクヨン)」を映画化した2部作の後編です。前編は試写会が当たりましたが、今回は自力鑑賞
平日初回の割に8割方埋まっていたので、興行成績も良いのでしょうね

犯人は「サトウ」と名乗り、身代金の額は2000万円でデパートの一番大きなスーツケースの使用を指定し、車で何か所も立ち寄らせるなど、「ロクヨン」をなぞったような展開に、初めは一課は模倣犯を疑います。上層部は警察庁長官の視察に対する刑事部の妨害とまで邪推する始末。マスコミ対策は広報室に押し付けるけれど、肝心の情報は被害者の名前すら伏せたままなので、これでは協定を結ぼうにも(地方紙の記者は前編で信頼関係を築けているので良いとしても)全国紙の記者が納得する筈もなく、広報室はまたまた矢面に立たされます。今回三上は外に出て動くので、記者たちを相手にするのは諏訪(綾野剛)と捜査二課から差し出された落合(柄本佑)なんですけど落合君ってば、初めは渡された文を読み上げるだけで、被害者の名前すら知らないお飾り君だったのですが、長時間の記者たちとの攻防に消耗しながらも、だんだん逞しくなっていくのがです。

新たな誘拐事件の犯人については前編のラストの方で何となく想像がついていたのですが、事件そのものが人質とされた少女の素行を利用したものだったとは
誘拐事件の被害者の父親・目崎(緒形直人)の過去にこそ、重大な秘密があったことに三上と一緒に気付くことになる展開にもでした。

原作と異なるというラスト。これは三上の暴走を指しているかと思うのですが、たしかに映画としては見応えがあるけれど、現実には行き過ぎな感を禁じ得ません。憎むべき真犯人ではありますが、彼もやはり人の子の親であることを考えれば、二度もあのような思いを繰り返すのは私刑に等しいのではと思ってしまいます。(喉元過ぎれば・・な態度は腹立つけれど、家族のために一生隠し通さなければならない秘密を持ってしまった故と思えば哀れです。)彼の娘の前で真実を暴いてしまった三上が、辞職を決めたのは、もしかしたらそのことへの贖罪が含まれているのかも。三上の娘は見つかっていませんが、真犯人逮捕の時に留守宅にかかってきていた公衆電話からの着信が観る側に希望を与えています。

雨宮が真犯人を探し当てたのは最初の電話で耳にした犯人の声です。電話帳の最初のページから順に電話をかけていくその地道な作業(現代ならその方法では犯人には辿り着かないけれど)に要した途方もない時間はそのまま彼の行き場のない怒りや悲しみを現しているかのようでした。

しかし・・・一課はいつからこの新たな誘拐事件の全容に気付いていたのかしらん?もしかして最初から?だから初めから匿名と決めていたの?だから、あくまでも「犯人逮捕」のために人質の筈の娘が見つかったことを知らせなかったの?機会を見つけて原作を読んで検証しなくては

さて、日吉(窪田正孝)君は前編のおさらいシーンと、事件が解決してからのワンシーンのみの登場ですが、14年間引き籠っていたその時間の長さや苦しみを歩き方や表情で見事に演じています 
この作品を観ようと思ったきっかけは窪田君が出るからなんですが、それ抜きにしても、三上と一課長の松岡(三浦友和)を初めとする豪華俳優陣の緊迫したやりとりなどはまさに「ザ・日本映画」です

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