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「今はまだ人生を語らず」レコーディングのくろう話【たくろうマネージャー渋谷高行さん】の話

2021-07-19 07:50:00 | 雑記
8月19日 まだ夏は真っ盛り
数日前まで「たくろう一家」は
葉山の海岸で夏休みを過ごしていた。
この夏休み中にも東京と
連絡を取り合い、今回の
レコーディングの準備は
進められていた。
いよいよ今日から1年半ぶりに
スタジオでのLP作りが始まる。
スタジオの中にはたくろうの
レコーディングではすでに顔馴染みの人や、そして今回初参加の人もいる。
ドラムス、ベース、キーボード、ギターのそれぞれのパートごとに
何回となく繰り返される音合わせ。
スタジオ内の雰囲気が少しづつ緊迫してくる。
ミキシングルームの方でも、
大きな調整卓を前にして、
一つ一つの楽器の音が決められていく。
16チャンネル2インチのテープが
回り始め、いよいよ録音開始である。
1回録り終えるごとに全員が
スタジオからミキシングルームへと
入ってくる。
プレイバックされる曲を聞きながら
全員の意見が交換され、また
スタジオへと戻っていく。
この光景が何回か繰り返される。

最初の曲はやはり、かなりの時間が
費やされることになる。
そして、1曲目がOKになる頃には
たくろうの曲の雰囲気やレコーディングペースが全員にゆきわたり、
2、3曲目くらいからは
ぐっと、ペースが早くなる。

今回は2枚組ということで
曲数も20曲以上録らなければならない。
ところが10曲程あがった時点ですでにスタジオ時間の不足が目立ってきた。
このため当初予定の3週間に、
さらに2週間プラスされることに
なった。この頃は
連日の録音で、全員家に帰るのは
午前5時頃というハードスケジュールである。
昼と夜が逆転した生活のために、
まるで時差ぼけの時のようになって
しまっていた。
こうして9月半ばには、リズム帯を
全て録り終え、あとはいよいよ
歌入れと、かぶせ、そして
トラックダウンへと進めていく段になって、またもやスタジオ時間が足りなくなってしまった。
そしてどう調整しても、もうこれ以上は時間を増やすことは不可能ということになった。
この時点で無理をしても
2枚組にするか
あるいは1枚にして満足の出来るものを作るかの決断をしなければならなくなっていた。

結局、1枚にするということで
決定したのだが、出来るところまで
やってみようということで
さらに1週間の追加がなされた。
そして、すべてが終わったのは
10月4日。
いや、正確には5日午前3時であった。
出来上がった曲は
16曲
LPに収められてるのは12曲
残った4曲に対する措置が検討された。
ドーナツ盤にする案。
ソノシートにする案 等々
が出されたが、すべて時間的にも
技術的にも不可能ということで
テープのまま保存されることに
なった。

その曲は
「蛍の河」「ルームライト」
「地下鉄にのって」「私」(のちの、悲しいのは)
の4曲である。

こうして、1ヶ月半におよぶ、
たくろうのレコーディングは終わった。
LPのタイトルは
「今はまだ人生を語らず」と
名付けられた。

吉田拓郎マネージャー
渋谷高行





先般
吉田拓郎さんが
ラジオで

放送禁止扱いになっていた
「ペニーレインでバーボン」が収録
されている
アルバム
「今はまだ人生を語らず」
を諸般の問題をクリアして
再販に向けて動きだした
というニュースを聞いた。

あの名曲だけ差し引かれて
「今はまだ人生を語らず」ー1
として販売されてたアルバム。
何か歯抜けのような物足りないだけではすまない
喪失感すら感じてしまう。

拓郎ファンからすれば悔しい
やりきれない熟知たる思いで
ここ数年やり過ごしていた
ネットでは
CD化されてすぐのアルバム
いわゆる、その曲が入っている
状態のものは
高額取引されている。
拓郎さん本人も
ラジオで
(天国にまで持っていきたい曲)の中で
【ペニーレインでバーボン】をあげているほど
傑作として納得されていた。
アルバムの第一曲目のあの名曲が
復活する
嬉しい知らせ。
そして
レコーディング話から
日の目を見てない
4曲を含めた
再販を強く希望します。
「今はまだ人生を語らず」は
当時やりきった
16曲をもう一度
この世に誕生させることを
切望します。