京都楽蜂庵日記

ミニ里山の観察記録

杉谷岩彦先生とスギタニルリシジミ

2022年09月23日 | ミニ里山記録

 

   杉谷岩彦先生 (1888-1971)は兵庫県神戸市に生まれた。神戸一中に在学中から六甲山系でチョウの採集を始められたという。その頃から蝶の同好会誌に寄稿していたというから、根っからの蝶好きであったようだ。先生は旧制第三校高等学校を経て東京帝国大学理論物理学科に進学、後に京都帝国大学に転学、理工学部数学科を卒業されたが、成績優秀で卒業時に銀時計を恩賜された。専門は関数論であったが三高の数学教授に着任され、そこで湯川秀樹、朝永振一郎、岡潔、小堀憲などの俊英を育てられた。柴谷篤弘によると、柴谷の三高時代の担当教授は杉谷先生だったそうだが、授業はいつも厳しく、少しでもよそ見する学生がいると直ちに退室を命じたといわれている。

   教育研究のかたわら杉谷先生は蝶収集とその研究を続けられ、昆虫関係の雑誌に多くの報告や論文を掲載された。夏休みには朝鮮、台湾、樺太を含めた地域で精力的に蝶の採集を行なった。フィールドに出るときは、背広にヘルメット姿だったそうである。採集品の中には新種、新亜種が含まれ、スギタニルリシジミ、スギタニオオムラサキのように献名された種もいくつかある。その中で蝶類研究者やマニアに最も有名な種はスギタニルリシジミである。このシジミチョウ科の一種は春4~5月に発生する。年1化性で蛹休眠する地味なシジミチョウの一種だが、渓流沿いによく飛翔している。近縁種のルリシジミより色が濃く、トチノキ、ミズキ、キハダの花や蕾を食する。先生は1918年4月、貴船でこの蝶を発見し捕獲された。当時は、京福電鉄はなかったので、市電の終点である烏丸車庫から、徒歩で深泥池、市原を経て、出かける大変なフィールドワークであった。学名は蝶類学者の松村松年がCyanisris sugitanii Matumuraとし「動物学雑誌」(1919)に発表した。(属名は後にCelastrinaに変更されている)。このタイプ標本は北海道大学の昆虫学教室に蔵されている。

  蝶以外に蛾も収集され、発見した新種としてスギタニアオケンモン、スギタニマドガ、スギタニモンキリガなどが知られている。多くの外国産の標本は交換によって収集されたという。先生を中心に川村多実二、上野益三、柴谷篤弘、栗原善夫、戸沢信義、岡田慶夫などが集まり京都の蝶サロンが形成された。当時の一部の文化人にとって蝶のコレクションはステータスシンボルであった。

 京大の文書資料館に旧三高時代の教授に関する戦後の調査資料が残されている。他の教授はまがりなりにも専門分野の論文や報告を書いているのに、杉谷先生には数学に関する論文は一つもなく、チョウ類研究がズラリと目録に並んでいる。これは、さすがに当時の教授会でも問題になったようだが、健康増進のためであると言って意に介されなかった。先生は1949年に三高を定年退官されたが、収集した標本は翌年、一部を残して江崎梯三教授の主催する九州大学農学部昆虫学教室に寄贈された。当時の教室のスタッフの一人であった白水隆氏が貨車を借り切って230箱の標本ケースを運搬したそうである。これらは現在、九州大学総合研究博物館に杉谷コレクションとして保管されている。

三高の数学教授としては厳しかったが、蝶仲間には親切に対応され慈父のように慕われていた。晩年は持病のせいで、ほとんど家にこもり蝶類の変異についての研究をまとめようとされていた。先生は1971年6月に享年82歳で亡くなられた。病弱でおられた割には、当時としては長寿をまっとうされた。

 

 

                    (杉谷コレクションの一部)

 

 

 

 

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シロボソマダラグモ(白細斑蜘蛛)

2022年07月28日 | ミニ里山記録

                                             
いさかへる夫婦に夜蜘蛛さがりけり    種田山頭火.
 
 

 最初はユウレイグモの仲間かと思ったが窓辺付近の壁に網をはっているので別種である。図鑑をしらべたがいまのところ種名はわからない。表題の名前は自分で勝手になずけたものである。すぐに種名がわからない場合はそれらしい名前をつけておくのが良い。

 

 

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二ホンミツバチ分蜂

2022年06月25日 | ミニ里山記録

    

 

 

 

ひさびさのニホンミツバチ分蜂群きたる。この季節の分蜂は第三分蜂ぐらいであろう。偵察バチが20匹前後、朝の7時ごろから来ている。その姿が一斉に見えなくなって、しばらくしてから本体が到着。

 

約2週間後のコロニーの様子

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ヒトツバ(一葉)

2022年06月24日 | ミニ里山記録

 

ヒトツバ (Pyrrosia lingua ) . シダ植物門ウラボシ科ヒトツバ属のシダの一種。庭の片隅に生えている植物で最近やっと名前がわかった。繁殖力はある。

 

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ユクノキ(雪之木)

2022年06月23日 | ミニ里山記録

 

 

ユクノキCladrastis shikokiana

マメ科フジキ属の山地にはえる落葉高木。別名ミヤマフジキ。葉は互生し、4-6小葉からなる奇数羽状複葉です。小葉は互生し、裏面は粉白色となります。枝先に円錐状の白色の蝶形花をつける。花は旗弁が反り返り、花序の軸や萼に縮れた毛が密生する。果実は豆果。ユクノキはユキノキの訛ったものか?写真は京大理学部植物園にて。

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フタリシズカ(二人静)

2022年06月23日 | ミニ里山記録

フタリシズカ 学名: Chloranthus serratus

センリョウ科チャラン属に属する多年草。の上部に鋸歯をもつ2–3対の対生し、ふつう2本 の花序をつける。花は花被を欠き、雌しべは白色の雄しべで包まれている。日本を含む東アジアに分布する。有毒であるが、中国では薬用ともされる。和名の「二人静」は、2本の花序を能楽二人静』における静御前とその亡霊の舞姿にたとえたものである。意外と身近に生えている。

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ウラギンシジミ (裏銀蜆蝶)

2022年06月23日 | ミニ里山記録

 

ウラギンシジミ( Curetis acuta)のメス

 

本州(東北地方南部以南),四国,九州,南西諸島に分布.翅の裏面が真っ白なモンシロチョウ大のチョウ。表面はオスが濃茶色地に朱色の紋、メスは濃茶色地に水色の紋を持つ。翅の先端が尖っているのが特徴的。飛ぶと翅の裏の白色がチラチラと良く目立つ。林と平地の境目あたりを活発に飛ぶ。人家周辺でもよく見られる。幼虫は、フジ、クズなどのマメ科植物。花やつぼみを食べる。

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カイコ(蚕)

2022年06月18日 | ミニ里山記録

カイコ(Bombyx mori)

人類が5500年前から家畜化した唯一の昆虫。桑で育つ。

最近家で飼い始める。

補光実験(下の写真)で化性や形態に及ぼす影響を調べている。

 

 

 

追記1)2022/06/25

ピーター・ゴターズ「桑の文化誌」(原書房2022)  上原ゆう子訳

この書はカイコと桑の共進化のようなことが書かれていて役にたつ。

桑葉成分のGABAなどが、カイコの昆虫としての本来の活動性

(幼虫の分散、成虫の飛翔性など)を抑制していているのではないか?

 

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キマダラカミキリ(黄斑天牛)

2022年06月18日 | ミニ里山記録

 

蕪村には天牛の句はなかりけり   楽蜂

 

               キマダラカミキリ(学名 Aeolesthes chrysothrix
   節足動物門>昆虫綱>有翅昆虫亜綱>甲虫目>カブトムシ亜目>カミキリムシ科>カミキリ亜科

灯火に寄せられてやってきたカミキリムシの一種。夜行性で成虫はクヌギ・コナラなどの樹液を吸い、幼虫はクヌギやコナラの枯れ木の中で育つとされている。

 

 

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エダシャクの一種?

2022年05月06日 | ミニ里山記録

エダシャクの一種と思えるが正確な種名はわからない。

 

 

 

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マツバウンラン(松葉海蘭)

2022年05月06日 | ミニ里山記録

 

マツバウンラン(松葉海蘭) Nuttallanthus canadensis。ゴマノハグサ科の1年草。葉の形が松葉、花がウンラン (Linaria japonica) に似ていることからこの名がついたそうだ。北アメリカ原産の帰化植物。日当りの良い場所に生える。買ってきた芝生に種が紛れ込んでいた。

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ベニウツギ (紅空木)

2022年05月06日 | ミニ里山記録

 

 

卯の花のこぼるゝ蕗の廣葉哉     蕪村

 

ベニウツギ(スイカカズラ科タニウツギ属)

 タニウツギの園芸種で、花の紅色が濃く、花冠の内側も紅色である。買った園芸店でタニウツギとして売られ、札の写真もタニウツギだし「花はうすい紅色」と書かれれていた。しかし実際花が咲いてみると、色の濃いベニウツギであった。なんとなくだまされたような気がするが、こんな場合は返品可能なのだろか?比叡山で出会ったタニウツギは品の良い紅色だったような気がする。

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クロコノマチョウ(黒木間蝶)

2022年04月23日 | ミニ里山記録

 

  クロコノマチョウ(黒木間蝶、Melanitis phedima)。チョウ目タテハチョウ科ジャノメチョウ亜科に分類されるジャノメチョウの一種〈雄)。このあたりでは初めて目撃した。家のドアのガラスに止まっている。型と型があり、夏型は秋型と比べて比較的黒っぽく、翅裏には小さな蛇の目模様が並ぶ。秋型は翅裏が枯葉模様になり翅の縁が尖る。食草はススキジュズダマなどのイネ科単子葉植物。日本国内では本州以南で見られるが、沖縄にはほとんどいない。

 

       木間蝶目立たぬ物ぞ良かりけり  楽蜂

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リキュウバイ(利休梅)

2022年04月11日 | ミニ里山記録

 

 

利休梅五十はつねの齢ならず   石田波郷

 

リキュウバイ(利休梅)。バラ科ヤナギザクラ属の落葉低木学名は Exochorda racemosa中国中北部が原産で、わが国へは明治時代渡来した。高さは2~4メートルになり、楕円形の互生する。4月から5月ごろ先に総状花序白い花を咲かる。名前は、茶花としてよく利用されたことから。正式名称はウメザキシモツケだが、はあまり使われない。

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タイワンタケクマバチ(台湾竹熊蜂)

2022年04月07日 | ミニ里山記録

 

タイワンタケクマバチ(台湾竹熊蜂)

 あまり見かけない大型のハナバチが菜種に来て蜜を吸っている。しらべてみると外来種のタイワンタケクマバチのようである。ミツバチ科に属する。もともとは大陸のもので中国南部からインドにかけて分布する。日本では2006年に豊田市ではじめて見つかった。

 

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