京都楽蜂庵日記

ミニ里山の観察記録

イカル(鵤)

2021年03月23日 | ミニ里山記録

イカル(Eophona personata)スズメ目アトリ科。

  窓ガラスに激突して事故死した可哀想なイカル。イカルはロシア東部の沿海州方面と日本で繁殖し、北方の個体は冬季に中国南部に渡り越冬する。日本では北海道、本州、四国、九州の山林で繁殖するが北日本の個体は冬季は本州以南の暖地に移動する。体は灰色で翼、尾、それに頭上は青味のある黒色、大きな太い黄色のくちばしが特徴。堅い木の実や草の実をくだいて餌にしている。冬には数百羽の群れになることもある。奈良の斑鳩(いかるが)の里に、昔イカルがたくさんいたところから名づけられたという説がある。

 

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トクサ(砥草)

2021年03月19日 | ミニ里山記録

トクサ(Equisetum hyemale)は、シダ植物門トクサ科トクサ属の植物。スギナの仲間である。はかま状のぎざぎざが葉に当たる。茎の先端にツクシの頭部のような胞子葉群をつけ、ここに胞子ができる。トクサ科の植物は石炭紀から存在すると言われている。トクサは耐火性のあるケイ酸を蓄積することで、野火から生き延びるよう進化したと考えられている。茎は硬いので、アスファルトを突き抜けて延びている。

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悪口の解剖学: 種の学名を通じたアカデミックな悪口

2021年03月13日 | 悪口学

 

 エルザ・ウォーバーグとオルヴァル・イスベルグは、いずれもスエーデン人で20世紀の前半に活躍した古生物分類学者であった。ウォーバーグはユダヤ人で、イスベルグは親ナチの極右支持者であった。当然、二人の仲は良くなかった。最初に、分類学上の名前によって戦いの口火を切ったのは、ウォーバーグだった。彼女は1925年の博士論文で、ある三葉虫の属にイスベルグから取った名前をつけたのである。自分が研究する化石を集めてくれたイスベルグに愛想良く感謝の意を表しているように見えたが、命名はあきらかに悪意に満ちたものであった。新たなイスベルギア属には2種類があったが、ウォーバーグは、それをIsbergia parvulaIsbergia planifronsと命名した。ラテン語でparvulaは「取るに足りない」をplanifronsは「平べったい頭」を意味している。ナチスは、その人種理論で平べったい頭を劣等人種としていたのである。

   

 

 それに対して9年後になってイスベルグは反撃した。彼は絶滅したイシガイの属をWarburugiaと命名した。ウォーバーグが大柄で肥えた女性であったのをあてこすり、4種の種小名にそれぞれ、crassa (太っている)、lata  (幅広い)、oriforimus  (卵形)、inique (邪悪)と名命した。そしてこの属が、近縁種と区別する特色としての大きな形質はschliessmuskel (肛門括約筋)のような閉殻筋だと記述した。

 ウォーバーグとイスベルグにとって、それぞれ不名誉なこれらの生物の学名は文明が存続する限り文献に永遠に記録されている。

 

<参考文献>

スティーブン・B・ハード 『学名の秘密^生き物はどのように名付けられるか』(上京恵訳)原書房 2021

 

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