トウヨウミツバチ(Apis cerana)は、天敵であるスズメバチの攻撃を迎え撃つために工夫をこらした多様な戦術を編み出してきた。熱殺戦法のその一つである。だが、ベトナムで行われた新たな調査では、さらに風変わりな戦術が一つ発見された。巣の入り口に動物の糞を塗るという方法である。東南アジアでは、ミツバチの巣の入り口に黒い斑点がよく見られる。しかし今回の調査が行われるまで、その正体は解明されていなかった。米ウェルズリー大学のマッティラ氏のチームは、この黒い物体がニワトリや牛など動物の糞であることを突き止めた。さらに、この糞が、スズメバチの仲間Vespa sororを寄せ付けないことを確認した。マッティラ氏のチームは、ベトナムの養蜂場でミツバチを観察。スズメバチの攻撃を受けた後、ミツバチが巣の入り口に糞を塗り始めることに気づいた。スズメバチの攻撃を300回以上撮影して分析したところ、巣に塗られた糞の量が多くなるほど、スズメバチが巣の入り口を長く飛び回ったり侵入を始めたりする行動が減ることが確認された。なんだか楠木正成が赤坂城で行った糞尿作戦に似ている。
これはミツバチの道具使用が確認された初めての明確な事例だとマッティラ氏は述べている。しかし、ニツバチは他にも樹木から樹脂を採取してきてプロポリスとして、巣の構造物をつくるなどしている。「道具」使用の最初の例とは思えない。
参考文献
{Honey bees (Apis cerana) use animal feces as a tool to defend colonies against group attack by giant hornets (Vespa soror).HR Mattila, et al., - Plos one, 2020 - journals.plos.org}
追記(2021/05/09)
セイヨウミツバチはプロポリスを作り、巣の補修や抗菌塗装して病原菌やウィルス対策をしている。一方トウヨウミツバチ(ニホンミツバチ)はそのような特性はない。プロポリスの代わりにこの糞素材が使われているの可能性はないか?