京都楽蜂庵日記

ミニ里山の観察記録

パソコンに潜む不便のリスクかな

2017年10月21日 | 日記

パソコンに潜む不便のリスクかな

 長らく自宅で使用していたアップル社のパソコン(iMacG5)が故障した。これは昔、スティーブ・ジョブズさんが開発したディスプレイ一体型のもので、当時としては、その機能の良さと外見のスマートさから、人気の高いものであった。これの起動ボタンを押しても電源が入らなくなった。取り扱い説明書や関連サイトの記事を参考に、本体裏のパネルを外し、複雑な電子回路に埋没しているリセットボタンを何回か押しているうちに、ポーンという大きな音がして、再起動がかかり、ディスプレイに画面が出てパソコンが動き始めた。

 これで目出たしと、思っていたら、1時間程で画面がフリーズしてしまい、結局、電源プラグを引っこ抜いて、前と同じような操作で再起動するのだが、こんな事を繰り返しても埒があかないので、ついに近所の大学生協のパソコンショップに修理に出すことにしました。そして、1週間ほどして帰ってきたのは、「部品の製造中止につき修理不能」というメーカーからの手紙が付いた壊れたままのパソコンであった。部品というのは、小さな電源部分で、そこを取り替えさえすれば、このパソコンは十分機能を果たす事ができたのである。実はいままでにも同様のトラブルがあり、電源部(結構な値段がした)を替えた経験があった。

 電化製品の部品については、少なくとも10年間はメーカーが保有しなければならないと信じ込んでいたので、生協の担当者に文句を言うと、彼は「そのような法律はありません。パソコンの原価償却期間は4年間なので、販売終了後6年(アップル社の場合)も備蓄すれば良いほうですよ」と冷たく言い放った。

 パソコンのCPU(中央演算処理装置)、OS、ソフト、メモリーなどの機能は1-2年の間にバージョンが変更されるので、メーカーとしては、長期間、古いタイプの機種の備品をストックして、根気よくユーザーをサポートする気なぞ、さらさらなく、消費者に新しい物に買い替えよと、いつも強要していると言う事である。こういった「買い替え強要シンドローム」は、パソコンだけではなく、電気製品一般に見られるメーカーの戦略になっているようだ。たまたま部品があっても、その修理費は不当に高く、新品を購入するのと、あまり変わらないという事もあある。昔は丈夫で長持ちが工業製品のトレードマークであった、昔のものよりも壊れやすくなっていると感ずるのは筆者だけであろうか?

 故障したパソコンは下取りされ資源回収されるというが、回収されるレアーメタルの量なんてしれた物で、大部分は廃棄されてしまう。産業資本は地球の資源をどのように考えるかといった視点で商品の販売戦略を考えるのではなく、ともかく新製品をつぎつぎ出して、いかに人々に消費させるかに腐心している。今は亡きワンガリ•マータイさんでなくても「もったいない」と大声で叫びたくなるような話である。近所の大学でもまだ使えるのに、少し古くなったパソコンを集めて廃棄処理しているのを見て、これは何だとおもったものだ。すこしでも機能の進んだ機種を使いたいという人々の過剰な欲求と予算消化の必要性が、まったくの「もったいない」状態を生み出している。

 結局、泣く泣く最新型のiMacを購入する事になった。これは前の物と比較すると、格段に機能が進化しているが、こいつはキーボドとマウスがワイヤレスになっていた。それ故、乾電池が必要なのだが、それの消耗が結構早い。ある日のこと、深夜までパソコンを使っていたが、突然、マウスのポインターが動かなくなった。電池が切れたのである。「電池残量が少なくなりました」という警告が画面にでたが、まだ大丈夫と思って使っているうちにサドンデスとなったわけである。そのような時に限って、手元に予備の電池がなく、結局、コンビニが朝開くまで作業ができないという事になった。マウスやキーボドにコードがついていてもついていなくても、使い勝手にそれほど変わりがない。ワイヤレスという「文明」のために、まったく余分な資源と労力が必要となっている。まったく無駄な変更としか言えない代物だ。設計者も分かっているのだが、他社がそのような製品を出すと、遅れてはならじと真似をする。

 電池の取り替えがわずわらしいので、USB接続のキーボードとマウスにかえて使うことにした。オール電化が文明の進歩の指標のように思われて、あらゆる器具を不必要に電化する傾向がある。暖房器具は、いままでは手動の電撃式の火花発生器を使っていたが、最近では電気で火を起こす物が大部分である。災害時には電気が止まり、これらの器具が利用できなくなる。「普段の便利」は非常のリスクが存在するという事である。無駄と言うと非生産性を意味するのが一般であるが、実は「生産性」こそが今や無駄そのものであるといえるかもしれない。このような資源の消費をもたらす無駄のシステムを市民が変えるためには、商品に応じた機能保証(少なくとも10年)を義務付ける法律を作る消費者運動を起こすと必要がある。

コメント
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