田中悟の片道旅団

大阪で芝居と弾き語りをしています。

ちょっとした、お好み焼き

2013年03月04日 | 日記
今から10年ほど前のこと。

当時の僕は早朝から深夜まで複数のバイトと仕事に追われていました。
休日にも単発の仕事やイベントの仕事を入れてほとんど無休の日々。
器が小さいもんですから、身心ともに疲れ果てていました。

でも、それは芝居をするため。

だから舞台の予定は必ず詰め込んでいました。
多くの役者さんがそうであるだろうし、こんなの苦労話でも何でもありません。
ただ未熟であったが故に、恥ずかしながら、やがて精神的にも肉体的にも許容量オーバーとなり、
僕の心は悲鳴を上げ始めていました。

そんなある日のこと。
『凪くれて、風』という舞台の稽古場で、僕はとうとうやらかしてしまいました。
日曜日、午前中から終日稽古だったのですが…起きられなかった。寝坊で遅刻。有り得ません。
作家兼演出家と役者が二人だけのお芝居。最大で3名の稽古場に僕がいない。
稽古場に到着したのはお昼過ぎ。
しかし二人とも僕を責めませんでした。それどころか労わってくれます。
「とりあえず昼食でも」ということになり、稽古場近くのお好み焼き屋さんに3人で出掛けました。
静かな日曜日の昼下がり。久しぶりの熟睡で僕の身体は脱力しきっている。
(このままこんな穏やかな時間がずっと続いたらいいのにな…)
そう思った瞬間、僕はとんでもないことを口走っていました。
「ビール飲みたい」
寝坊して、遅刻して、到着してすぐに昼食、そこでお好み焼きを食べながらビールを飲んで、午後からの稽古に参加する…絶対有り得ないです、絶対に。完全に正常な判断力を欠いていたとしか思えません。
そんな僕に作家兼演出家が言いました。




「いいですね、僕も飲みます!」




救われました。本当にその時、救われました。
そして、そこから先の記憶はありません。(酔いつぶれたんじゃないですよ、元気に稽古をしたはずです)

あれから10年ほど時間が過ぎ、『凪くれて、風』は『天気予報を見ない派』にタイトルを変え今も成長を続けています。作家兼演出家は南出謙吾くん。
あの頃の僕は若かった。
南出くんはもっと若かった。だけど僕より大人だった。
そしてそのバランスは今も変わらない。

そんな思い出とともに、明日、もう一度同じ物語の舞台に立たせて頂きます。




劇団りゃんめんにゅーろん番外公演
ちょっとした夕暮れ 作・演出 南出謙吾

~夕暮れに似た、ふたつの物語~
第一話「小さい夕方」 第二話「天気予報を見ない派」
【日時】3月5日(火)18:30~/20:30 6日(水)19:30
【料金】2000円(1ドリンク込み)
【出演】宿南麻衣(遊気舎)×南出謙吾 肉戸恵美(劇団未来)×田中悟(ONE WAY TRIP)
【会場】雲州堂 http://www.iori-unshudo.com/
劇団りゃんめんにゅーろんHP http://www.ryanmen.com/
コメント
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