本日も「暴走が止まらない!」シリーズの続きであります。
第1期のトランプ政権は、「共和党保守派」が周囲をガッチリ固めていたので、肝心の外交施策と国防施策については、大統領に実質的な決定権を握らせませんでした。したがって、関税施策などで暴れようとしても、大切な軍事上の同盟国に対して乱暴な対応をさせることはありませんでした。すべては、対中国封じ込めのためだけに強硬手段を許していたと思います。
しかし、今回は違います。
共和党保守派が推していたペンス候補(第1期の副大統領)が早々と大統領予備選から撤退を余儀なくされて、圧倒的支持を集めていたトランプ候補は、その「共和党保守派」および、ヴァンス上院議員をはじめとする「MAGA派」をバランス良く自陣営に加えることで、先の大統領選にて地滑り的勝利を収めました。
ちなみに「MAGA派」とは、トランプさんがよく口にする「Make America Great Again!」から取った名称であり、日本語で言えば「アメリカ第一主義派」ということ。そこだけ取り出すと、何だか知性を感じない輩の集まりに見えますが、さにあらず。
まず「MAGA派」の思想を支えているのは、保守系シンクタンク「American Compass」主宰のオレン・キャス氏。米国製造業の復権により米国中間層の没落を阻止し、米国の「強い国家主権」を守ろうとしている人物。物静かで、かつ説得力のある話しぶりが特徴の保守系の論客であります。ヴァンス副大統領やルビオ国務長官にも強い影響力を与えていて、政権内部で「MAGA派」の勢いが強まる原動力と言えます。
そして、政権内での「MAGA派」のトップがヴァンス副大統領で、非常に頭脳明晰で野心家といえる人物。もともとはトランプさんのことを「米国のヒトラー」と揶揄していましたが、その後「改心」してトランプ支持派に転じました。恐らくは、上院議員選挙に勝つためには、トランプ氏の支持が必要だったためトランプ支持派に転じたのだと思いますが、「急進的な保守」と見られがちな自分が、将来の「大きな選挙=大統領選」に勝つためには、引続きトランプさんの支持が必要であることを痛感している人物であり、極めてクレバーと言えます。
その「MAGA派」が政権内部で主導権を取ったことは、今回のトンデモナイ「相互関税導入」により証明されています。なぜならば伝統的「共和党保守派」であれば、こんな乱暴なことは絶対にしませんので。
そして、この急進的な保守派である「MAGA派」は、ヴァンス副大統領を中心に「トランプ大統領」を神輿に担ぎ、急進的な保守施策を強引に推し進めていこうとしています。この流れは、少なくともこのあと8年間は続く可能性が高い。
なお、MAGA派の「錦の御旗」は、「窮地に追い込まれている米国中間層を救う」ということ。全国民8割の連邦所得税をゼロにする政策も併せると、彼らへの国民支持率は今後ともに相応の高さで推移する蓋然性は高い。一方で、我々日本人にとっては、あの忌まわしい相互関税や自動車税から解放される見込みは当面低いということ。
アメリカは、完全に「内向き志向」へ変化してしまい、「世界に頼られる存在から降りる」ことにしたようです。そのことを前提に、日本の政治も経済も、完全自立に向けたロードマップを練り直さないといけないと思います。早急に。
欧州はもう、その作業に入っています。