金融マーケットと馬に関する説法話

普段は資産運用ビジネスに身を置きながら、週末は競馬に明け暮れる老紳士の説法話であります。

【暴走が止まらない! トランプ政権 ③】 政権の主導権は「MAGA派」が握っている!

2025-04-11 04:05:13 | 金融マーケット

 本日も「暴走が止まらない!」シリーズの続きであります。

 

 第1期のトランプ政権は、「共和党保守派」が周囲をガッチリ固めていたので、肝心の外交施策と国防施策については、大統領に実質的な決定権を握らせませんでしたしたがって、関税施策などで暴れようとしても、大切な軍事上の同盟国に対して乱暴な対応をさせることはありませんでしたすべては、対中国封じ込めのためだけに強硬手段を許していたと思います。

 

 しかし、今回は違います

 共和党保守派が推していたペンス候補(第1期の副大統領)が早々と大統領予備選から撤退を余儀なくされて、圧倒的支持を集めていたトランプ候補は、その「共和党保守派」および、ヴァンス上院議員をはじめとする「MAGA派」ランス良く自陣営に加えることで、先の大統領選にて地滑り的勝利を収めました。

 

 ちなみに「MAGA派」とは、トランプさんがよく口にするMake America Great Again!」から取った名称であり、日本語で言えば「アメリカ第一主義派」ということ。そこだけ取り出すと、何だか知性を感じない輩の集まりに見えますが、さにあらず

 まず「MAGA派」の思想を支えているのは、保守系シンクタンク「American Compass」主宰のオレン・キャス氏米国製造業の復権により米国中間層の没落を阻止し、米国の「強い国家主権」を守ろうとしている人物物静かで、かつ説得力のある話しぶりが特徴の保守系の論客であります。ヴァンス副大統領やルビオ国務長官にも強い影響力を与えていて、政権内部で「MAGA派」の勢いが強まる原動力と言えます。

 そして、政権内での「MAGA派」のトップがヴァンス副大統領で、非常に頭脳明晰で野心家といえる人物もともとはトランプさんのことを「米国のヒトラー」と揶揄していましたが、その後「改心」してトランプ支持派に転じました。恐らくは、上院議員選挙に勝つためには、トランプ氏の支持が必要だったためトランプ支持派に転じたのだと思いますが、「急進的な保守」と見られがちな自分が、将来の「大きな選挙=大統領選」に勝つためには、引続きトランプさんの支持が必要であることを痛感している人物であり、極めてクレバーと言えます。

 

 

 その「MAGA派」が政権内部で主導権を取ったことは、今回のトンデモナイ「相互関税導入」により証明されています。なぜならば伝統的「共和党保守派」であれば、こんな乱暴なことは絶対にしませんので。

 そして、この急進的な保守派である「MAGA派」は、ヴァンス副大統領を中心に「トランプ大統領」を神輿に担ぎ急進的な保守施策を強引に推し進めていこうとしていますこの流れは、少なくともこのあと8年間は続く可能性が高い

 

 なお、MAGA派の「錦の御旗」は、「窮地に追い込まれている米国中間層を救う」ということ。全国民8割の連邦所得税をゼロにする政策も併せると、彼らへの国民支持率は今後ともに相応の高さで推移する蓋然性は高い。一方で、我々日本人にとっては、あの忌まわしい相互関税や自動車税から解放される見込みは当面低いということ。

 

 アメリカは、完全に「内向き志向」へ変化してしまい、「世界に頼られる存在から降りる」ことにしたようです。そのことを前提に、日本の政治も経済も、完全自立に向けたロードマップを練り直さないといけないと思います。早急に

 欧州はもう、その作業に入っています。

 

 


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【暴走が止まらない! トランプ政権 ②】 支持者はインフレ嫌気も「所得税ゼロ」でご満悦!

2025-04-10 02:36:25 | 金融マーケット

 昨日は、トランプ政権は4年で終わらないリスクが高いことをお話しました。

 それでも、「相互関税」のせいで、これだけ株価が下落して、しかもインフレ懸念が大きくなると、熱狂的なトランプ支持者たちも愛想を尽かすのではないか?と期待している貴方! それは甘いのであります。

 

 トランプ政権では、「相互関税」および自動車関税などの「個別関税」の増収分を財源にして、「連邦所得税」の大幅減税を予定しているのです。具体的には、年収15万ドル=2250万円以下の人からは連邦所得税を一切徴求しないすなわち連邦所得税をゼロにするという構想です。

 

 これは、納税者からすると大変な朗報となります。

 連邦所得税とは、日本の所得税に当たるもので、最高税率は37%(日本は最高税率45%)。この他に、州に収める州所得税(日本の地方税に当たる)はありますが、多くの州で10%以下のレベルなので大したことはありません。

 年収15万ドル以下のアメリカ人は、全人口の80%程度もおりますから、この大幅減税とセットで導入される「相互関税」等は、基本的には多くのアメリカ人に支持される可能性が高い。したがって、アメリカ以外の各国からは文句タラタラの関税政策ですが、株価下落を除いては、米国市民からは不満が噴出することはまずないと見るべきであります。

 

 したがって、トランプ政権は、簡単には「相互関税」「個別関税」などの撤回はしない(税率を多少下げる可能性は有)ということ。その理由には、アメリカ市民の支持を得るための「連邦所得税ゼロ」施策と一体だから。

 

 やはり、甘い見通しは捨てざるを得ません。

 世界が再び「ブロック経済」に戻ることを前提に、日本もさまざまな国策を練り直さなければなりません

 過度にアメリカに頼らない国防体制はもちろん、食料自給率アップアメリカ以外の国との経済連携構想など、もう一刻の猶予もないと思います。

 

 


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【暴走が止まらない! トランプ政権 ①】 三選目を匂わす・・ あ! その手があるのか⁉

2025-04-09 03:02:58 | 金融マーケット

 

 米国のトランプ政権の暴走が止まらず、世界経済も金融市場も大混乱に陥っております。

 

 トンデモナイ関税率を発動しただけでなく、グリーンランドやパナマ運河だけでなく同盟国カナダの併合まで口にする始末。欧州各国はもちろんのこと、直近まで米国寄りのスタンスを取り続けていたサウジアラビアやUAEなどの中東主要国ですら、「米国がガザ地区を統治する」案などを出されては、もう米国と距離を置くしかない状況。米国は、世界中に居た友好国からの信頼を瞬く間に失いつつあります

 それでも、日本を含む国々は「これもあと4年間の我慢」と、時が過ぎるのを待つスタンスだと思いますが、そこに降って沸いたように出てきたのが、「トランプ三選の可能性」

 

<合衆国憲法 修正第22条>

第1節 何人も、2回を超えて大統領の職に選出されてはならない。他の者が大統領として選出された場合、その任期内に2年以上にわたって大統領の職にあった者又は大統領の職務を行った者は、何人であれ1回を超えて大統領の職に選任されてはならない。 ~後略~

 

 上記の修正第22条が禁じているのは、「3回目の大統領の選出」「10年以上の大統領任期」トランプ大統領は、すでに2回の大統領選で選出されてるので、次回の選挙には出ることはできません

 しかし、「副大統領」ならば就任することが可能です。「副大統領」として指名されたあと、2年後に「大統領が辞任あるいは死去により大統領職を引継ぐこと」は可能であり、10年間までは大統領でいることは可能なのです!

 

 次回の大統領選挙で、ヴァンス氏が大統領として立候補して、副大統領候補にトランプ氏を指名。そして当選したあと2年後にヴァンス大統領が辞任すると、トランプ副大統領が大統領に昇格。そこから2年間、トランプさんは大統領職を担うことが可能なのです。

 実質的には「現トランプ政権が続くだけ」なのですが、形式的には「大統領職と副大統領職を交換するやり方」であって、かつてロシアで「プーチン氏とメドヴェージェフ氏が交替で大統領職と首相職を務めたやり方」に酷似しています。

 

 

 現在のトランプ支持者たちであれば、こんなウルトラCでも熱狂的に支持することになるのでしょう。でも、こんなことがもし実現したら、もうアメリカの民主主義は戻ってこないと思います。

 人類の歴史が、大きな分岐点を迎えている気がいたします。

 

 


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【トランプ流の外交術】 信頼関係より損得勘定へ 19世紀の帝国主義時代へ戻ったよう・・

2025-02-05 03:38:49 | 金融マーケット

 1月末から、トランプ劇場の展開が激しくなっています。

 

 

 大統領就任時には、いったん見送った「関税攻撃」を突然、中国・カナダ・メキシコに突き付けた結果、世界の株式市場はちょっとした混乱状態に。その「勢い?」を利用して、カナダとメキシコからは水面下で何らかの果実を受け取った模様で、とりあえず2月4日からの関税措置は30日間延期されました。

 それにしても、カナダ・メキシコともにアメリカにとっては隣国であり、さまざまな課題が横たわる関係ではあるものの、防衛面やイデオロギー面では盟友関係にある間柄。この隣国2つに対して、いきなりパンチを喰らわせて、有無を言わさずに「譲歩」や「覚悟」を求めて果実を獲得するやり方は、いかにも「トランプ流の外交術」であります。

 当然ながら、両国との信頼関係はズタズタとなりますが、そのかわり、両国ともに「自国の損得勘定」を冷徹に行い、損の少ない対応措置を選択し行動することになります。結果として、何十年も動かなかった懸案がようやく動き始めるといった具合。「信頼関係」から「損得関係」に変化した結果、この損得勘定が成り立つ間は、両国との関係も安定することになります。もちろん、損得勘定が成り立たなくなれば、あっという間に国としての行動も変わる関係になった訳ですから、油断も隙もありませんけど。ただ、とても分かりやすい関係になったことは確かであります。

 

 この状態は何だか、第一次世界大戦前の欧州の帝国列強間の関係に近づいている気がいたします。あの時代、イギリスであれ、フランスであれ、ドイツであれ、ロシアであれ、トルコであれ、欧州列強と呼ばれたどの国も自国の利益のために権謀術数を弄して、損得勘定だけが行動の基本原理でありました。

 その結果として、20世紀初頭に世界大戦が発生。また、その戦後処理で更なる過ち(ドイツへの過大な賠償金)を犯して、もっと悲惨な世界大戦を再び招くことになりました。その反省と教訓を生かして20世紀後半の世界秩序に至ったはずなのですが、結局、21世紀になって20年も過ぎると、19世紀の世界情勢に戻ってしまったようです。

 

 今週末には、そのトランプ大統領と石破茂首相の初会談が行われます。

 石破首相に申し上げておきたいのですが、トランプ大統領は同盟国の日本に対しても「損得関係」を求めてきますので、当然ながら当方としても、クールで冷徹な「損得勘定」が行動原則となります。

 安倍さんに倣って「トランプさんとの信頼関係」など、間違っても期待してはいけません。あの時は、安倍・トランプの奇跡的な相性の良さによる産物でありました。

 そんなもんを追いかけると、下手すると初会談でお尻の毛まで抜かれる」ことになりますよ!

 

 


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【キリスト教福音派】 欧州と米国で、ユダヤ教の位置付けが異なっている! <再掲>

2025-01-29 03:17:55 | 金融マーケット

 

 2025年1月21日の当blogで「トランプさんの真の狙い」について私見を申し上げましたが、その際「キリスト教福音派」の名を挙げて、ウクライナよりもイスラエル、すなわち中東和平の方が優先度が高いと書きました。

 そしたら「キリスト教福音派」って? という問い合わせが幾つかあったので、2024年1月19日の当blogで書いた記事を再掲いたします。少し参考になる内容だと思いますので。

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 前回「欧州の世論は、イスラエルの強硬姿勢への拒絶反応が膨らみつつあるのに対して、米国の世論の多くは、むしろイスラエル強硬姿勢を支持している」状況をお話ししました。そして、そうした国際世論の左右のブレが、ガザ地区の戦乱を収拾させるパワーを削いでいると申し上げました。

 

 今回は、「なぜ同じキリスト教圏である欧州と米国で、そのような世論の違いが生まれているのか?」について、ワタクシの見解を述べてみたいと思います。

 

 この違いの原因は、そもそも「キリスト教にとってのユダヤ教の位置付け」の違いがあるからだとワタクシは考えています。

 ご案内のとおり、キリスト教は、2000年前にユダヤ教から生まれた新興の宗教であります。ユダヤ教徒であったイエスが、十字架に架けられあとに復活を遂げたことから、「イエスは救世主である」と信じたイエスの弟子たちがイエスの教えを布教し始めました。これがキリスト教の起源であります。

 

 問題は、「救世主であるイエスが十字架に架けられた経緯」。ローマ帝国支配化にあった当時のエルサレムにおいて、「イエスを十字架に架けよ」と強く迫ったのは、ユダヤ教保守派のユダヤ人自身でありました。このあたりは、マタイ福音書第27章第25節にあるとおり、イエスの処刑を躊躇するローマの総督に対して、「その血の責任は、我々と我々の子孫の上にかかっても良い」と、ユダヤ教の祭司長と長老たちが群衆を促して処刑を求めさせたとなっています。

 マタイの福音書は新約聖書の一部であります。ローマカトリックでも、宗教改革後のプロテスタントでも、欧州大陸のキリスト教徒たちは、当然ながらキリスト教の聖典を暗唱できるくらいに繰返し繰返し頭に刻み込むことになります。結果として、欧州大陸のキリスト教徒の潜在心理の奥底には「イエスを十字架に架けたのはユダヤ人」という想いが強く刻まれていきます。これが、2000年の間、欧州大陸に蔓延った、陰湿かつ根深い「ユダヤ人差別」の原因と考えられています。

 そして、今の欧州大陸のキリスト教徒の潜在意識には「ユダヤ人は『あの時と同じようにやり過ぎている』のではないか?」という想いが根強くある気がいたします。

 

 一方で、建国から約250年しか経っていない米国。アメリカのキリスト教には、欧州のキリスト教内にあるような古くからの因習や恨みにも似た偏見はなく、それとは無縁の新しい風が吹き込まれており、ユダヤ教は、キリスト教が生まれるための「親」のような存在(=キリスト教福音派)と理解されています。すなわち、お互い同族に近く、双方は繋がっている存在という感覚です。したがって、神が創った国であるイスラエルが苦しんでいる状態、あるいは誰かから傷つけられている状況をキリスト教徒は見過ごすべきではない、という想いがまず先に立ちます。

 この違いが、今回の欧米の世論の違いを生んでいるというのが、ワタクシの見解であります。そう考えると、根が深い問題であるため、なかなか事態収拾に向けた糸口が見つからないのも頷けるというもの。

 

 ちなみに、ユダヤ教にとって「キリスト教」はどう見られているのでしょうか。

 ユダヤ教にとってイエスは救世主ではなく、一人の預言者に過ぎません。したがって、キリスト教のことは「ナザレ派」と呼ばれ、ユダヤ教から派生した一派と看做されています。当然ながら、救世主の誕生を祝うクリスマスという習慣はあり得ません。

 

 最後になりますが、今回のガザ地区の戦乱は、イランとハマスが企図した軍事作戦にイスラエルがまんまと嵌って、中東情勢がもとの混迷時代に戻されてしまったという事象です。

 本来ならば、「過去よりも未来を見据えて新たな時代の幕開け」となるはずだった中東地域。我々日本人は、目の前の惨状をただ嘆いたり、「平和をただ祈る」というだけで思考を止めてしまいがちですが、それだけでは何も解決いたしません。実現直前だった中東地域の新しい未来のために、今の日本に何が出来るのかという視点から、この状況をあらためて考察していくことが重要であります。

 

 


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