金融マーケットと馬に関する説法話

普段は資産運用ビジネスに身を置きながら、週末は競馬に明け暮れる老紳士の説法話であります。

【映画】 PERFECT DAYS (2023年 日独合作作品)

2024-10-23 05:13:04 | 映画

 久しぶりに「映画」を取り上げます。

 先日「WOWOW」で『PERFECT DAYS』が放送され、遅ればせながらジックリ鑑賞することが出来ましたので、ここでご紹介したいと。

 『PERFECT DAYSは、ドイツのヴィム・ヴェンダース監督による日独合作作品であり、第76回カンヌ国際映画祭主演の役所広司さん男優賞を受賞。第47回日本アカデミー賞でも、最優秀監督賞最優秀主演男優賞を受賞。

 

 

<作品内容>

 主人公は、公共トイレの清掃員である中年男性

 この男性が、朝起床してから日々のルーティンを経て仕事場へ向かい、そしてキッチリと仕事をこなしながら、仕事場で出会う様々な人間と真摯な姿勢で接する様子が丹念に描かれる夕方になって仕事が終わると、その足で銭湯に向かったあと、浅草駅地下にある大衆酒場で一杯だけ晩酌、そしてアパートに帰って寝床で文庫本を読みながら就寝する。

 基本的には、この毎日の様子が繰り返し繰り返し描かれる。ネタバレにはなるが、大きな事件は発生しない。でも、日々の営みの中で、ちょっとした変化は起きる。たまの贅沢として通う小料理屋での晩酌の様子お店の女将との会話あるいは、家出をして自分のアパートに転がり込んできた姪っ子とのやりとり、そして久しぶりに再会した妹との会話。その端々に、主人公がこれまで生きてきた半生が薄っすらと浮かび上がってくる

 終始映画で流れる音楽は、60年代フォークや70年代ポップス・ロックで、懐かしく、かつ心地良い響きを醸し出す。全て音源は、主人公が所有しているカセットテープ

 ラストシーンは、この音楽を車内で聴きながら、アパートへ帰るために運転する主人公の表情変化のない自分の仕事を、今日もきっちり全うしながら、明日への希望を胸に生きる人間の顔である。

 

 

 この映画が公開された時には、さまざまな評価が交錯したと言われており、海外の新聞の映画評からは「低廉労働を美化している映画」とのやや戸惑い気味の論評もあったそうですが、自分はそうは感じませんでした。

 むしろ、この映画を観た時に感じたのは「主人公と自分を重ね合わせる感覚」

 日々働きながら、大きな変化は起きない生活の中でも、時折頭によぎる過去の後悔や心の痛み。それでも今を生きながら、前を向いて自分の持ち場を守り責任を果たしていくその暮らしを大切に繰り返していく覚悟。いつか迎えるであろう自らの最期の日まで、それを繰り返していく生き様に誇りを感じながら・・

 

 

 なお「WOWOW」で放送されたということは、そろそろ地上波でも『PERFECT DAYS』が観られると思います。

 一度観ておいて損のない映画ですので、ぜひご堪能あれ!

 

 


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【訃報】 オリビア・ニュートン・ジョンさん死去

2022-08-11 04:13:51 | 映画

 歌手で女優としても活躍した、オリビア・ニュートン・ジョンさんが亡くなりました。73歳でした。乳がんの闘病生活が長く続いていた模様。

 

 

 ワタクシの年代にとっては、何と言っても、『そよ風の誘惑』映画『グリース』

 まだ中学2年だった頃、英語で「現在完了形」を習っていたのですが、『そよ風の誘惑』の歌詞が、まさに現在完了形(経験)のパターンでありまして・・

 

Have you never been mellow?

Have you never tried to find a comfort from inside you?

Have you never been happy just to hear your song?

Have you never let someone else be strong?

 

 これで現在完了形を完全に覚えたのを、よく記憶しております。現在完了形などと言うから判りづらいのですが、要は今でも、自分の経験として残っていることや、ハートの中に残っている時は、過去形を使わないのが英語なのです。特に『愛』とか『悲しみ』『憎しみ』を語るときには、過去形なのか、現在完了形なのか、はたまた過去完了形なのかで、意味が著しく変わるので、そういう表現には拘った言語だということ。

 このあたり、日本語では、『愛』『悲しみ』などの表現では曖昧にして、表面上の違いはなく、表情や仕草で示す文化なのです。このあたりの言語の背景にある文化の違いまで、『そよ風の誘惑』は我々に教えてくれました

 

 そして『グリース』。あのジョン・トラボルタが、サタデー・ナイト・フィーバーで大ブレイクしたあと、当時のスーパーアイドルだったオリビア・ニュートン・ジョンと共演したのが『グリース』。ストーリーは単なるおバカ映画でしたが、音楽とダンスが素晴らしくて、特にオリビア・ニュートン・ジョンが可愛らしくて魅力的でありました。

 可哀そうだったのが、ジョン・トラボルタ。この『グリース』で、むしろ評価を落としてしまい、この後は長い低迷期に入ります。復活するのは、タランティーノ監督の『パルプ・フィクション』まで待たなくてはなりませんでした。


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【映画】 ナヴァロンの要塞  (1961年 米国作品)

2022-08-05 06:31:14 | 映画

 『ナヴァロンの要塞』は、英国作家アリステア・マクリ―ンが描いた戦争冒険小説を映画化したもの。ちなみに、ワタクシが初めて映画館で観た洋画であり、何度観ても、当時の新鮮さが蘇る快作であります。

 

ストーリー

 第二次大戦中、イギリスの将兵2000名がエーゲ海のケロス島に取り残される。それを海路救出するには、その南にあるナヴァロン島に配備されたドイツ軍の2門の巨砲の射程内を潜り抜けていかなければならない。2門の巨砲は、ナヴァロン島の絶壁の岩肌をくり抜いて作られた穴に設置されているため、爆撃による攻撃が通用せず、また穴の位置が高すぎて、艦艇からの艦砲射撃では届かない。難攻不落の要塞であった。

 これを内側から崩壊させるべく、6人による特殊部隊が編成された。まずは、アンソニー・クエイル演じる、作戦の立案者かつリーダーのフランクリン少佐。そして、登山家としてフランクリン少佐の盟友であり、映画の主人公であるグレゴリー・ペック演じるマロリー大尉アンソニー・クイン演じる、ギリシャ軍将校でレジスタンス闘士のスタブロス大佐。そして、デヴィッド・二ーヴン演じる、化学教授にして爆薬作りの天才ミラー伍長。あとは機械の専門家と殺しのプロが1人ずつという編成。

 ナヴァロン島への上陸には、まずは荒れ狂う海を越えてから、高い断崖絶壁を登り切るという最大の難関が待ち受ける。ここで隊長のフランクリンが大怪我を負ったため、主人公のマロリーが替わりに指揮を執ることになる。

 しかし、もともと、職業軍人でもないマロリーが指揮を執ることにメンバーからも不安が募る。特に、爆薬作りの天才ミラーは、元来がインテリ=大学教授であり、また個人的な主義により昇進を拒否し続けたため伍長に過ぎないだけで、マロリーを正式なリーダーとして認めない言動を繰り返す

 部隊は、いざこざを繰り返しながら、また怪我人を抱えながら、島にいる連合国協力者の支援も得て、徐々にナヴァロン島内の要塞基地へ近づいていく。しかし、あと一歩のところで、仲間の裏切りに遭って、ドイツ軍に捕まってしまうが‥

 

 ナヴァロン島に上陸してからは、一瞬たりとも気が抜けないシーンが続きます。戦争映画ではありますが、戦闘シーンは少なく、その多くが緊張感溢れる逃走シーンだったり、侵入シーンだったり、また基地内に爆薬を仕掛けるシーンだったりで、冒険映画という方が相応しいと思います。

 この映画の魅力は、まずは主役のグレゴリー・ペックが格好良い。常に冷静でかつ、ニコリともしない。映画の緊張感を、表情だけで演じている名優であります。

 

 そして、常に主役と対立するミラー伍長を演じるデヴィッド・二ーヴンも素晴らしいラストのカタルシスは、全てデヴィッド・二ーヴン演じるミラー伍長に因るところ大ですので、重要な役回りです。そして、2人の関係が氷解するラストシーン、マロリーとミラーによる煙草のやりとりシーンは素敵な場面であります。

 もちろん、アンソニー・クインが出ているので、ギリシャ軍大佐のスタブロスの存在感も大きい。アンソニー・クインがいるだけで、超大作と呼ばれる映画は、脇が引き締まります。これは、アラビアのロレンスと同じです。

 

 なお、隠れた主役が、ナヴァロン島にある2門の巨砲であります。この巨砲2門が砲門を開いて、イギリス海軍の艦隊に向かって、順番に砲撃を繰り返すシーンは圧巻であります。「息を呑む瞬間」とは、まさにこの時のことを指します。

(ちなみに、この2門の巨砲には、それぞれ『名前』が付けられています。映画の中で、それぞれの名前が確認できますので、そちらも注意してご覧下さい)

 

 ぜひ、大きな画面と音響効果設備が整った会場でご覧下さい。まさに、息を呑むと思いますよ!!


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【映画】 アラビアのロレンス  (1962年 英国作品)

2022-08-04 05:47:25 | 映画

 歴代最高の邦画『砂の器』『七人の侍』であるならば、歴代最高の洋画は何か?

 と問われれば、ワタクシは間違いなく、『アラビアのロレンス』を挙げさせて頂きます。1962年に公開されたコロンビア配給の映画で、ご案内のとおり、巨匠デヴィッド・リーン監督作品です。

 

 なぜ、『アラビアのロレンス』なのか?

 

 大学1年生の時に、この映画を初めて新宿ミラノ座(もちろん、リバイバル上映でした)で観た際、そのスケールの大きさ画像と音楽の美しさ、そして各キャラクターの素晴らしさに圧倒されてしまい、この映画に魅せられてしまいました。その後も、年に1回は必ず、この映画をフルで観ることにしておりまして、もうかれこれ、42年間続いております。

 その間、ワタクシのお気に入りリストには、新たな映画が幾つも出入りしておりますが、結局NO.1の座には、ずっと『アラビアのロレンス』がドンと座っているのであります。

 

 最も好きなキャラクターは、実は主役のロレンスではなく、オマー・シャリフ演じるハリト族の族長であるアリ。ロレンスを信じて、最後の一人になるまで行動を共にするハリト族の真の勇者。アラブの独立運動に身を投じて、時代の波に揉まれる人物を、新人オマー・シャリフが好演。アリ族長冒頭の登場シーンは、ハリウッド映画の歴史の中でも、1位2位を争う名場面です。

 

 次に好きなキャラクターは、アンソニー・クイン演じるハヴァイタット族の族長であるアウダ。アリの正反対の性格で、打算と狡猾さで族を率いる俗物的な人物。しかし、人たらしであり、人間としての魅力に溢れていて、ロレンスのことを評価しながら、同盟関係にある英国のことはもちろん、主君であるファイサル王子ですら、腹の底では信じていない。最も人間臭いアラブ人として描かれています。

 

 そして、忘れてならないのが、アラブを率いてトルコと独立戦争を闘っている、アレック・ギネス演じるファイサル王子近代兵器で武装しているトルコ軍に対して、ラクダと剣で闘う勇者であるとともに、同盟関係にある英国や仏国を、交渉で手玉に取る老獪な政治家でもあります。現在のヨルダンやサウジアラビアの王家の血脈に繋がる歴史的な人物がモデルでありますが、アラブ民族全体を束ねて背負って立つ、その気高い姿勢と、ロレンスをまるで道具のように使い、捨て去る冷酷さも兼ね備えており、その奥に秘める深遠な感情と表情を、あのアレック・ギネスがとても上手く演じています。

 判りやすく言うと、「野心を内に秘めたオビ・ワン・ケノービ」=「ファイサル王子」という感じか。

 

 これぞ、歴代洋画NO.1!

 

 『アラビアのロレンス』は、ぜひ大画面で、また音響設備が万全の映画館でご覧下さい。オープニングやインターバルでの長い音楽演奏も、今の時代では大変新鮮に思えます。ご堪能あれ!!


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【映画】 砂の器  (1974年 松竹作品)

2022-08-03 05:35:35 | 映画

 日本映画の歴代NO.1は?と問われれば、ワタクシは、黒澤明監督の『七人の侍』か、この松竹映画の名作『砂の器』で迷います。国際的には圧倒的に『七人の侍』が評価されていますが、それは『砂の器』を松竹が海外配給をしなかったから。当時の松竹には、英語吹替版を作る余裕がなかったからでありましょう。

 なお、日本映画の中で、最も素晴らしい映画音楽は?と問われれば、ワタクシは間違いなく、この映画のメインテーマである「宿命」を挙げます。いまだに、このメロディーが流れて来るだけで、涙腺が崩壊する日本人は数十万人を下らないと思います。

 

 

ストーリー

 昭和46年7月、国鉄蒲田駅構内で、身元不明の男の轢死体が発見される。顔は石で叩かれ潰されており、手掛かりはポケットにあったスナックのマッチのみ。犯行の数時間前、スナックでは被害者と若い男が向かい合って話をしていた。二人の交わす言葉は「東北弁」、話した言葉は「亀田は?」という2つの手掛かりのみ

 警察の捜査が難航する中、ようやく被害者の身元が分かる。岡山の雑貨商で、隠居の身となったのを機に、かねてから希望していた四国巡礼とお伊勢参りへ。家族も本人が気ままな旅を続けているから‥と、暫くは何もしなかったが、さすがに2か月も音信不通になったため、警察に相談したところ、東京で事件に遭ったことが判明。

 被害者は三木謙一、65歳。元島根県警の亀嵩(かめだか)駐在所の巡査部長。話していた言葉は東北弁ではなく、西日本のズーズー弁と言われる、出雲地方の山合い地域独自の方言であった。三木謙一は正義感が強く、地元では悪く言う人は誰もおらず、恨みを買う人物ではない。むしろ、困っている人を見れば、救いの手を差し出さずにはいられない正義漢。ある時は、盗みを働いて三木自身が捉まえた人間について出所を待ち構えて職の手配をする、またある時は、ライ病を患った父親とその子供が村に流れ着くと、父親は岡山の病院へ入院の手配を、子供については、引き取り手がないので自分の子として育てる決心をするなど、非の打ちどころがない立派な人物

 その三木謙一が、なぜ殺されるような目にあったのか? また、なぜ急遽、東京へ出向くことになったのか? 謎解きの旅は、東北の秋田県亀田から、島根県の亀嵩へ、そして三重県伊勢市へと続く‥。

 

 捜査の過程で浮かび上がる、若き音楽界の天才、和賀英良。その和賀英良が奏でる「宿命」のメロディが素晴らしく、そして悲しい

 松本清張の原作では、ほぼ1行であっさりと書かれていた部分、すなわち、日本海の重く濃い色に染まった海に沿って、石川県の能登半島から島根県の山合いの村まで、親子が彷徨う様子を、映画では約15分間にわたり、「宿命」のメロディに合わせて、辛く厳しい生き様を交えながら観せていく

 ここで、すすり泣かない日本人は皆無だと思います。

 

 なお、なぜ今頃、この映画を取り上げたかというと、それは先日、女優の島田陽子さんが亡くなったことがきっかけ。この映画の主役は、刑事役の丹波哲郎さんと和賀英良役の加藤剛さんなのですが、隠れた主役が、放浪する父親役の加藤嘉さん、三木謙一役の緒形拳さん、そして和賀英良の情婦役の島田陽子さんでした。

 この映画の主たる役者さんは、丹波哲郎演じる刑事の相棒役だった森田健作さんを除いて、みな逝ってしまいました。その淋しさも重なります。

 

 まだご覧になっていない方は、ぜひ、日本映画の金字塔『砂の器』を、出来れば大きな画面と音響設備の良い映画館でご覧下さい。自信を持ってお薦めいたします。


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