前回までは、「インフレ」「金利上昇」「賃上げ」と「株式市場の水準調整」および「その後の復活」のお話をしてきましたが、今回は所謂「地政学リスク」、『台湾有事』がテーマであります。
2022年10月の中国共産党大会で、習近平総書記1強体制がかなり強引な手法で確立いたしました。しかし、その直後に、北京・上海ほか中国全土で、『ゼロコロナ政策への抗議デモ』=『習近平政権を支持しない反対デモ』が発生する事態となっており、これは中国共産党内で、すなわち水面下において、激しい権力闘争=主導権を巡る激しい争いが、起きていることを示唆しております。
習近平政権としては、異例の3期目に突入した今、この5年間で最大のテーマである『台湾統一』に目処を立てる以外、道が無くなったということ。共産党内部の反対勢力からすれば、そのように習近平政権を追い込むリスクシナリオが、あの人事案を見た時から動き始めたということなのでしょう。
このblogでは『台湾有事』について、何度も取り上げていますので、もう耳タコ状態の方が多いとは思いますが、『台湾有事』と『八重山・先島諸島有事』はほぼ同義と覚悟すべきであります。距離の近さはもちろんのこと、台湾を「表側」だけでなく「裏側」から上陸作戦を仕掛ける場合、与那国島や西表島・石垣島なども同時に制圧してしまわないと、ここに米軍の攻撃ヘリが数多く用意されたり、またドローン兵器を用意されれば、中国側の作戦に大きな支障が出てしまうからです。
したがって、与那国島や石垣島に陸上自衛隊が駐屯するようになったのも、中国側の同時制圧を抑止するため、簡単には攻めさせないようにするのが理由でした。
ちなみに、八重山諸島・先島諸島を制圧した場合は、中国は制圧と同時に、この地域の領有権を改めて主張することになります。この根拠は、明治13年の時に締結しかけた、当時の明治政府と清国の沖縄分割協定。沖縄本島は日本、先島諸島は清国という分割案で、一度両国は合意しかけた過去があります。その後、日清戦争が勃発して、台湾事態が日本領になったことから、うやむやになった沖縄領有権問題を、ここで持ち出そうというのが中国側の魂胆であります。
現地の八重山諸島の方々の中には、『陸上自衛隊の駐屯』『先島諸島の防衛システムの高度化』そのものに反対している方も数多くいると聞いています。それがある故にかえって戦争に巻き込まれると考えるから、だそうです。
しかし、ロシアによるウクライナ侵攻を見れば、巻き込まれるとか巻き込まれないとかのレベルではなく、占領されてしまえば、必ず既得権化されて、明治時代の歴史を持ち出して中国側は『領有権を主張』してくるのが必定。そして、次には島民に対して「中国軍に参加するか、あくまで日本人であることを選択して銃殺されるか、どちらかを選べ」と選択を迫られ、結果として、同胞と殺し合いをしないといけない状況に追い込まれていきます。
こうした状況は、『ウクライナ東部で現実に起きた事態』です。日本人は、占領というと米軍にしか占領された経験がないので、「むしろ無抵抗に占領された方が良い」と考える人が多いようです。これこそ、大変な思い違いと言えます。
話が少し脱線してしまいましたが、上記のとおり、習近平政権は、ここからの5年間で『台湾統一』に目処を立てる必要があるところまで追い込まれています。これに対して、米国のバイデン政権がどこまで強気で強硬姿勢を維持できるのか? ウクライナ侵攻を呼び起こしてしまった失敗を、二度と起こせないと考えているとは思いますが、米国自体、アフガン以来の厭戦ムードが根強く残っている中、2024年の大統領選に向けて、どこまで強い姿勢を維持できるか?
対峙する共和党サイドにとっても、ここが一番の攻めるポイントでバイデンの弱点でもあります。『インフレ対応』と『台湾問題』の2つは、米国内でも2024年の大統領選に向けて最大の論点となります。ここのタガが少しでも緩むと、日本にとっても『インフレ』『賃上げ』『株価下落』と並んで、『台湾問題』が最大のリスクに浮上して参ります。
防衛費増税くらいで騒いでいる場合ではありませんぞ。石垣島や宮古島、与那国島を中国に占領されたら、もう取り返すことは不可能です。そういえば、「Dr.コトー先生」は、与那国島に単身赴任しているお医者様だそうな。
コトー先生を見捨てたりしたらいけませんぞ!