先週、香港と深圳が、「デモクラシー基盤の資本主義」と「国家資本主義」の闘いの象徴的存在であると申し上げました。そして、片や「トランプの関税政策」、片や「一帯一路」では、この勝負は、国家資本主義に分があるとも言いました。本日は、その続きです。
今週の日経新聞で報じられていましたが、香港に「レノンウォール」が出現して、ジョン・レノン所縁の壁に、市民が自由に自分の主張を書き立てる場所が出来たとのこと。すぐに香港政府が取り締まってしまうでしょうが、このレノンウォール、そもそもは1980年の冷戦下のチェコのプラハで、暗殺されたジョンレノンを偲んで哀悼のメッセージを壁に描いたのがオリジナルで、当然ながら自由や平和への希望、権力への抗議も含まれる内容だったそうです。
デモクラシーという仕組みは、国民の感性が荒んでしまうと、すぐにポピュリズムというカオスに引き込まれてしまう不安定なシステムではありますが、一方で、個人が自由に何でも叫ぶことができる社会であるため、ジョン・レノンやボブ・デュランといった天才が出現できる仕組みでもあります。
香港の対岸にある深圳では、スティーヴ・ジョブスやビル・ゲイツを生むパワーはあるかもしれませんが、ジョン・レノンやミック・ジャガー、忌野清志郎を生むことは絶対にあり得ません。
前回は、デモクラシー陣営の代表選手としてトランプ大統領の名前を挙げましたが、ここで取り消させて頂きます。やっぱり、ジョンでしょう。ジョンのイマジンを聴いて、深圳の人たちが「共産主義を礼賛する歌だ!」って思うはずはなく、自由や平和の素晴らしさをかみ締めるはず。
結論を言うと、10年後、国家資本主義はアメリカ資本主義を凌駕して、世界経済の中心に座ることになるでしょう。しかし、その時に、中国国民のメンタリティを、中国共産党がしっかりグリップできているとは思えません。むしろ「革命を発生させない仕組みとしてのデモクラシー」が見直されて、それを徐々に取り入れていく新中国の姿が見えてくると期待いたします。そして、そのトリガーとなるのが、ジョン・レノンやデュランなのではないか? 70年代・80年代のアメリカで起きたことが、40~50年後に中国でも起きるという気がしてまいりました。