金融マーケットと馬に関する説法話

普段は資産運用ビジネスに身を置きながら、週末は競馬に明け暮れる老紳士の説法話であります。

【金融】台湾をめぐるリスク 日清戦争以前に遡る

2019-01-31 07:35:35 | 金融マーケット
 昨日は朝鮮半島に関するリスク認識をお話ししました。本日は台湾をめぐるリスクについてです。
 「台湾はもともと中国の一部であり、ここが中国本土と統一されたところで、日本に関する影響は限定的」などと考えていると大きな間違いを起こします。もともと中国の一部というのは正しいですが、「じゃ、沖縄は?」「八重山諸島は?」についてはいかがでしょうか?

 琉球王国はそもそも独立した海洋国家でしたが、中国との関係では明・清とは冊封関係、すなわち臣下の関係であり、また17世紀からは薩摩の直接支配を受けた国でした。つまり主筋が2つある存在であり、明治以降、その領有については日本と清国で長きにわたり協議事項となっていました(実効支配は日本でしたから、今の北方領土問題とは異なりますが‥)。
 明治12年に明治政府が琉球王国を強制併合して沖縄県とした後、それに異を唱える清国との協議が続き、明治13年には日本から清国に対し、八重山諸島・宮古島は清国、沖縄本島は日本、という案を提案してほぼ合意しかけましたが、清国内部や沖縄からの反対もあり調印には至りませんでした。その後、日清戦争が勃発、結局は明治28年の日清講和条約で台湾が日本に割譲されたため、先般の協議内容はうやむやになりました。

 現在、対中国、対台湾の間で領土問題は尖閣諸島だけですが、もし台湾・中国が統一される事態になった場合、中国は日清戦争前の話をぶり返してくるのは必至と考えるべきです。

 いやいや、台湾が中国へ帰属する訳はない、第一、アメリカが許すはずはない、と言う方がたくさんいると思います。確かにそうなんですが、実は2017年の秋あたりは危なかった、という人が何人かいらっしゃいます。評論家の寺島実郎氏は、この時期、トランプと習主席の間で、北朝鮮をめぐってビッグディールが成される可能性がある、と色んなところで講演されていました。習主席が北朝鮮の核開発を終わらせる見返りに、アメリカが台湾から手を引くかもしれない、という意味だったと思います。

 アメリカが考えている優先順位が変わると、東アジアの情勢は一変します。
 一寸先は闇なのです。




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【金融】朝鮮半島情勢を甘く見るべからず

2019-01-30 07:19:03 | 金融マーケット

 日本の金融マーケットに関わる立場として、当然ながら地政学リスクには常に敏感でなければなりません。本日からの2日間は、少し悲観的な見方をお話いたします。最悪の事態を想定することで、それを避ける努力も出てくるものですので。

 アジアの地政学リスクは、少し前までは「北朝鮮リスク」と呼ばれていました。核開発や大陸間弾道ロケット実験をテーマに、北朝鮮対関係5か国という図式で、このリスクへの対応が考えられていました。この時は、とにかく北朝鮮を孤立化させ、経済的に兵糧攻めのような状態に追い込み、彼らが弱り、ヘタるのを待つのが作戦で、5か国の連携も悪くありませんでした。

 しかし、2017年に発生した金正男暗殺事件や核開発の実質的な完了、それから2018年のペンス副大統領演説を契機とした米中対立構造により、状況が一変してきています。

 孤立していた北朝鮮が、今や自らのシナリオ通りに周囲を動かす、まるで演出家のようです。まず、アメリカとは米朝首脳会談を実現するとともに、ロケット実験を中止するという大きなプレゼントをトランプに手渡しました。この結果、米国による爆撃などの脅威は去るとともに、中国・韓国や日本を介せずにアメリカと直接折衝できるルートも作ってしまいました。

 中国は昨年のペンス演説以来、北朝鮮に替わってアメリカの攻撃の第一目標にされてしまいました。以前は北朝鮮問題を解決できる唯一の切り札的存在だったのに、今やアメリカの宿敵という位置づけです。北朝鮮にとって、最も厄介な国はアメリカと中国だった訳ですが、この2国が真っ向からぶつかってくれる事態はまさに願ってもない状況です(ひょっとすると、これも北朝鮮の仕掛けたシナリオなのかもしれません)。結果的にですが、アメリカと距離を縮めた北朝鮮にすり寄るように、あの習主席の平壌訪問が今年は実現しそうな勢いです。

 最も危険な状況が、韓国と日本です。両国の関係悪化は今さらここで論じるつもりはありませんが、この状況を一番喜んでいるのが北朝鮮だと思います。韓国と米国・日本との関係がますます薄くなってきていますが、米朝首脳会談あたりで、核設備閉鎖の代償としてトランプが「在韓米軍の撤退」を決めてしまうというリスクを、どの程度深刻に日韓両国は考えているでしょうか?

 民主主義社会(自由主義社会)の境界線が、38度線から対馬海峡に変化する衝撃はメガトン級ですよ!
 現状は、したたかな北朝鮮の戦術に嵌まって、米国だけでなく日韓中までも、金委員長の笛に合わせて踊らされているように見えてなりません。


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民主主義の賞味期限(3) ノブレス・オブリージュ復活? 帝政への道?

2019-01-29 12:11:48 | 金融マーケット
 民主主義が安定するためには、政治リーダーを輩出する母集団として、ある程度の上層階級の形成が必要であるともに、かれらの存在を国民に是認してもらう前提条件として、ノブレス・オブリージュの精神があると前回述べました。

 実際、19世紀の英国やフランスの貴族の若者たちは、世界各地で発生する紛争に対して、自ら進んで従軍し多数の戦死者を出しています。また、ついこの間まで、アメリカの大統領候補になるためには従軍経験が必須でした。父ブッシュは太平洋戦争でグラマンのパイロットであり、ゼロ戦に撃墜されたにも拘らず、無事生還したエピソードが有名でした。共和党候補になったマケイン上院議員はベトナム戦争時に捕虜になり、長期にわたる拷問を受けたながら、これもまた無事生還した英雄でした。

 しかし、現在の世界各国の政治リーダーや官僚・企業経営者・富裕層はどういう状況でしょうか?
 従軍経験の乏しさはもちろんのこと、資本市場の合理性の帰結として、あまりに行き過ぎた格差拡大を是認するばかりで、「取り残された人々」への配慮に欠ける輩が多数になっています。
 取り残された人々の閉塞感とは、「真面目にコツコツ働き」、「紛争があれば国のために命を懸けて戦い」、「国外で苦労する人々がいれば、積極的に移民として受け入れ」、「それなのに、自分たちは、親よりも子が、子よりも孫が、豊かになっていくことが実感できない」というもの。
 一方で、特権階層ともいえるリーダー層・富裕層には、いざとなったら命を懸けて自分たちを守ろうというノブレス・オブリージュの精神が見えないばかりか、ぜいたくな暮らしをただ満喫しているだけの存在に見える。それなら既存の支配層の言うことなんか信じるものか、ということになっているのだと思います。

 民主主義の賞味期限を延ばしていくためには、時間がかかっても、ノブレス・オブリージュの精神が溢れるリーダー層を育てていくしかありません。それが間に合わなければ、過去の歴史と同様、独裁的な帝政の時代へ向かうことになると思います。
 その時、金融マーケットはいったん「爆死」することになりますので、民主主義の情勢は最大のリスク要因だと認識しておきましょう。

 ちなみに、ポピュリズムにより民主主義が壊れかけている危険地帯は幾つかありますが、我々にとって最も身近な地域が朝鮮半島です。民主主義の最前線が38度線のままか、対馬海峡になるのか、ここは改めてテーマにしたいと思います。


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民主主義の賞味期限(2) ノブレス・オブリージュの衰退

2019-01-28 07:15:04 | 金融マーケット
 第1回で提起した「民主主義の賞味期限」の続編です。
 我々は歴史教育の中で、古代民主主義が理想に溢れていたと習った一方で、その崩壊過程は詳しく教わってはいません。実態は、さまざまな優秀なリーダー達が運営に苦労した挙句、プラトンなどは「こりゃ駄目だ、衆愚政治だ」と断じたように、有力貴族との共同統治手法である共和制、そして独裁的な帝政へと変貌していくことになります。

 私は近代民主主義も同じような変遷を辿っていると考えています。
 民衆の不満が爆発して革命を生んだ直後は、当然ながらガバナンスは安定せず、数多くのリーダー達が短期間で入れ替わっています。そして多くのリーダーはその混乱の中で命を落としています。
 民主主義が安定し始めるのは、財力・知力・権威を兼ね備えている貴族階級/上層階級の一部が、自由と国民主権の考え方に共鳴して、これを支え始めてからになります。彼らは時代によって、「元老院」だったり「貴族院」あるいは「上院」のメンバーとして民主主義を支えていきます。また、一般国民との間には気の遠くなる経済格差を有していながら誹謗中傷の対象にはならず、むしろ民衆の尊敬を集める存在でした。その理由は、いざ国外との戦争となれば、彼らが真っ先に参戦して命を捨てる覚悟・責任を宣言する存在だったからです。この精神こそが「ノブレス・オブリージュ」です。

 民主主義を安定させるためには、ある程度の上層階級の形成が必要(この中から優秀な政治的リーダーを安定供給するため)であり、しかもそうした階層を一般国民に是認させるための前提条件が、この階層のノブレス・オブリージュなのだと自分は理解しています。

 しかし、21世紀の今日、各国をリードする政治家・官僚・企業経営者・富裕層の中に、このノブレス・オブリージュの精神が残っているのでしょうか?
 一般国民から見て、ノブレス・オブリージュの精神が感じられなくなったことが、現在のポピュリズムが蔓延する原因だと私は考えています。




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【競馬】最強世代と呼ばれても、秋になると新3歳世代に負ける理由

2019-01-27 09:25:42 | 競馬
 本日も競馬漬けです。
 ところで、今の4歳世代はアーモンドアイの例を持ち出すまでもなく最強世代と言われています。昨年の夏以降、古馬重賞を勝ちまくっていることがその理由です。
 では、その上の5歳世代はどうだったでしょうか? 実は同じく最強世代では?と言われていました。なぜなら、その上の最初に「最強世代」と呼ばれていたサトノダイヤモンド・マカヒキ等の世代を、やはり3歳の秋から4歳春にかけて破ることが多かったからです。

 もともとサラブレッドのピークは4歳秋から5歳春と言われていました。しかし、直近は牧場での育成技術、さらには厩舎に入ってからの調教技術が格段に進歩してきたため、競走馬としてのピークが前倒しになってきています。その一方で、3歳馬は4歳以上の古馬に比べて、1~3キロ程度のハンデ(牝馬はさらに2キロプラス)が貰えます。
 「育成・調教」と「休養」も含めた競馬サークルの技術の発展が急速に進んでいることで、特にハンデ差を活かせる3歳夏から4歳春まで、新世代が有利な傾向は今後も続くと思います。

 さて、今日の府中は根岸ステークス(GⅢ)。ダート1400mでGⅠのトライアルレースです。東京のダートは特殊なコースで、中山や福島の結果はあてになりません。また本番の1600mよりも1400mの適性が結果に出やすいレースです。ここは府中ダート巧者で1400m得意の2頭、②ユラノトと⑥モーニンから三連単と三連複で。②⑥⇒②⑥⇔⑫⑪①③

 それから京都のシルクロードステークス(GⅢ)。芝1200mの短距離戦です。今の京都は特別に芝が重く、しかも雪の影響も相応に残っていると思います。荒れた馬場の高松宮記念を逃げ切ったショウナンカンプ、その娘であるラブカンプーに期待します。⑩の単勝で勝負です。

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