宛名のない真っ白な封筒を受け取った。
朝、事務所に着くと、玄関を入る前に郵便受けの新聞を取り出す。新聞の後ろからガサッと地に落ちた封筒。拾って裏返すと、見覚えのある字で『つぼみ』と封がされていた。何の変哲もない真っ白な封筒に、宛名もなければ差出人の名もない。ただ、ほんの少し青みがかった黒いインクで『つぼみ』とだけ、ひらがなで封字されていた。女性だけが使うことができる、そのひらがなの優しげな文 . . . 本文を読む
そんな朝がすき
眠れない夜が終り、
今日が始まる朝
雨を降らせた雲は切れ、
朝の陽が覗き始める。
あなたを心配させてしまっただろう、
送信済のメールは、
戻してもらうこともできず、
あなたの目に曝される。
『大丈夫』
短いメールは、追記にもならない。
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どこかの犬が鳴いている
一旦覚めてしまった目は
もう一度闇に戻るのを拒否している
意識と意志とが
混濁し
部屋にかかる青いカーテンが
窓の外の遠吠えを遮った
もたれかかった壁の向かいに
カレンダーの錆びた黄色の絵を眺める
『心映え』
ふと寝る前に読んだ本の
短い言葉が頭をかすめる
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